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フィアンセ以上、恋人未満③

2011.12.03.06:00


1万ヒット記念フリー小説☆第1段






 フィアンセ以上、恋人未満③


 新婦の憂鬱(Side:キョーコ)

 この結婚のメリットは、互いの事情と共に社長の説明ですぐにわかった。

 私の方は(今の今まで知らなかったけれど)日本では有数と言ってよい程の規模を誇る最上家から、結婚させられる前にしてしまうことで、望まぬ婚姻の強要を逃れられる。何ならアメリカ国籍にもなれる。

 その上、『雪花』が誰か知れた場合にも、ダメージを極力抑えることが出来る。

 つまり、世間へ向けての設定はこうだ。

【3年前の時点で二人(敦賀蓮と雪花役の人物=京子)は既に婚約していた。そこで敦賀蓮がシークレット俳優『カイン・ヒール』として映画に出演するにあたって、公私ともに信用できる婚約者の京子がサポートに入った。結婚は時期を見て、と考えていた二人だったが、今回の発覚をいい切っ掛けとして今回結婚に踏み切った。】

 こうすることで、未成年者に責任を持たず手を出した(と思われているだろう)蓮のイメージダウンの回避と、政略結婚にキョーコを使おうとしている最上の家からのガードを同時に行える。



 だがしかし、しかし、である。この結婚のメリットを十分に分かっていても、キョーコはセンチメンタルにならざるを得ない。

 キョーコはあの日の事を思い出し、本日なん度目かのため息をついた。

 結婚なんて、そんな!!

 と、動揺する二人に社長は、互いの状況を懇々と説明した末に言ったのだ。

「よく考えてみろ。蓮の『同棲相手』は最上君なんだ。全くのウソで塗り固めてもばれるのがオチだろうが。蓮も最上君も芸能界に入ってから特定の人間はいない。あえて最も親しい異性を上げるならお互い。最上君はラブミー部の仕事で度々蓮の家に出入りしている。はたから見りゃ十分『付き合っている男女』だ」

「・・・・それとも、他の替え玉でも探すか?」

 その言葉に、気付けば咄嗟に答えていた。

「いやです!!」

 と。敦賀さん以外の男性と結婚するなんて絶対に嫌だった。

 そもそも『自身の恋心が実る』などと言う事態を想定しておらず、結婚について考えることもなかったが、それでもするなら“敦賀さんがいいと”その時、思ったのだ。

 そこで我に返った。そう、これはあくまで互いの芸能生活を続けていくための話し合いなのだ。彼以外と結婚する気がない以上、敦賀さんに自分の気持ちを悟られる訳にはいかない。だから、慌てる内心とは裏腹に努めて冷静に演技で先を続けた。

「結婚となったら一緒に暮らしたりするんですよね?男の人と一緒に暮らすなんて無理です!破廉恥です!・・・その点、敦賀さんならヒール兄妹の時にご一緒したことがありますし、間違いなんて起こりようがありませんもの!・・・・って、あ・・・・つ、敦賀さんは嫌ですよね!!私と結婚だなんて・・・。」

「そんなことないよ。現場の関係者は『雪花』を知っている訳だし、結婚するなら相手は君しかいない。君こそ本当にいいの?君には相手を選ぶ権利があるんだよ?『雪花』の正体がばれる可能性はかなり低いから」

 その言葉に、悲しい喜びが心に満ちる。
 彼は私を選ぶのではなく、私しか選べないのだと。

「先ほども言いましたが、私、敦賀さんがいいです。敦賀さんが信用できる方なのは分かっていますし、それにお食事のサポートもできますしね!!」

 だから、努めて明るく言った。彼に一喜一憂させられるのなんて今更のことだから。







 今の自分の内心は、世間一般の『新妻』とは程遠く、鬱屈としたものだ。

 あの時、敦賀さんには結婚相手に私を選ぶ以外の選択肢がなかった。そう、思っていた。でもよくよく考えてみれば、そんなことはないのだ。いや、“結婚相手を選ぶのならば”確かに自分しかいなかっただろう。

 しかし、敦賀さんに必要なのは3年前に婚約していた『過去』・・・。私さえ正体がばれた時に口裏を合わせれば、結婚までする必要などなかったのだ。敦賀さんにとってのスキャンダルは、“責任のない行い”つまり、結婚する気のない未成年相手に不埒な行為をした、という疑惑なのだから。

 冷静なあの人が、この事実に気が付いていない筈がない。

 彼は内心どんな気持ちでこの結婚に承諾したのだろうか。
 哀れな後輩を慮って?それとも・・・私を信用できなかった?

 互いに結婚を納得しあった時、あの人に言われたことがある。

『これから俺たちは結婚するわけだし、俺は君のことを『キョーコ』って呼ぶから、君も公の場では俺を名前で呼ぶようにして?』

 あ、釘を刺された。と思った。

 自分たちが夫婦でいるのはあくまで『人の目のある所』での事だと。勘違いをするなと。

 その証拠に二人で暮らすこの家の中で、彼は『敦賀さん』で、私は『最上さん』のまま。

 
 それを考えるとキョーコの内心はますますどんよりとした。
 


 最初の内はそれでも、せめて先輩と後輩として少しでも楽しい生活になるように努力していたつもりだ。

 けれどきっと、もしかしたら自分を好きになってくれるかもしれない、自分に情が湧いてくるのではないか、そんな考えを捨てることのできない自分の、下心を含んだ行動に彼は気が付いていたのだろう。



 最近は一緒に食事をしていても、笑って話している筈なのに空気が固まって動かない。

 彼の淹れてくれたコーヒーを飲んだり、互いの出演するドラマを見たり、穏やかに過ごしていたリビングのソファーに、今は誰かが座ることさえない。



 私は浮かれていた。表面上は申し訳ないなどと考えながら、本当は彼を公的に縛れる立場に優越感さえ持っていた。だから、ゆっくりと崩れていく穏やかな時間を目の当たりにするまで、その事実は頭の片隅に追いやられていた。

 結婚の確定がイコール、失恋の確定である、と。

 見ないふりをしていただけで、忘れていなかった。自分の夫となった人には、片思いの相手がいるということを。
 記者会見の時だって、彼は自分に『想い人』を重ねて受け答えしているのが見て取れた。

 社長の「蓮に芸能界に入ってから特定の人間はいない」という言葉が本当なら、敦賀さんは片思いのその子と付き合うことはなかったということになる。

 それは即ち、彼は今も『大切な人は作れない』と思っているということ。
 だって、そうでなければあの敦賀さんが好きな子をものにできていない筈がない。

 誰にも言えない秘密だけれど、私は大それた妄想をしていた。敦賀さんの『好きな子』の条件に自分も当てはまること。それに気づいて、ほんの少しだけ、ときどき夢を見せてもらっていた。
 でも、敦賀さんが私と結婚すると言うことはつまり、私が『好きな子』ではないと言うことの何よりの証明だった。
 
 だってもしも私が敦賀さんの『好きな子』だったなら、大切な人は作れないと言っていた敦賀さんが結婚してくれる筈がないんだから。

 結婚して夫婦になっても、私が敦賀さんの中でそういう意味で『大切な人』になることはない。だから結婚してくれたのだ。


 部屋に自分ひとりであるのをいいことに、大きく息を吐いた。

 だめだ、やっぱり、だめ。

 敦賀さんは他に好きな人がいるんだもの。1度、母の実家の人と話をしてみよう。それで、私のことは何とか諦めて貰って、・・・・敦賀さんとお別れしよう。

 だって、私と結婚していたら、敦賀さんは誤解される。あんなに好きで好きで仕方がないって、演技をしていたその子に。
 付き合う気がないからって、どうして想いの在り処を誤解されて傷つかないでいられると言うのだろうか。


 そこまで考え、首を振った。なにをイイ子のふりをしているのだろうか。

 ・・・違う、敦賀さんの為じゃなくて、『私』が耐えられないんだ。

 ブワッと涙があふれ出てきた。家の中の・・・・敦賀さんと私の間の空気がおかしくなりだしてからずっと我慢していたものだ。
 何を被害者ぶっているのか。無責任に流れる涙に、声を押し殺す口が笑った。

 想いを告げて振ってもらうことすら出来なかったくせに、結婚するだけして、敦賀さんの経歴に傷を付けて。

 最低だ。最上キョーコ、人生最大最悪の優柔不断。

 でも、何とかこれだけは・・・・スピード破局とか言われても、敦賀さんが御迷惑にならないように方法を考えなくては。

 私、芸能界から干されちゃうかな。何だか更に笑えてきた。
 笑い事じゃないけど、笑うしかない。

 でも、・・・それでもいいかな、とも思うのよ。敦賀さんと短い間だけでも結婚できたのって、すごい奇跡ですものね。いくら代価を払っても足りないくらいよ。

 思考はどんどん支離滅裂になってゆき、横道にそれてまっすぐには進んでくれない。


 ただ1つハッキリとしているのは、私はこれ以上敦賀さんとの結婚ごっこを続けられない、と言うこと。

 だから、今日を最後の晩餐にしよう。久しぶりに早く上がれると言っていた彼の為に、うんと美味しいものを作ろう。最後の夜くらい楽しく過ごそう。



 ふと、最後にこの家で笑いあったのはいつだっけ・・・と思った。





2011/12/3 常葉
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