スポンサーサイト

--.--.--.--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手 by FC2

6.君が呼んでいる気がして

2012.02.13.06:00

(改)



 (Side:キョーコ)

 「ごめんね、ショーちゃん!」

 今日は朝から雨が降っていた。だから急いできた。ショーちゃんに掃除当番を頼まれたけど、初めて断って。

 森の中に入ると雨脚は弱まったけれど、前へと進むたびに葉についた露が制服から着替えたワンピースへとはねた。傘が邪魔で閉じてしまったから、ますます服は濡れていく。

 でもそんなのは気にならなかった。


 あの日、クオンと再会した日から私は、毎日クオンに会いに行くようになった。
 またいつクオンがいなくなってしまうのかと思うと不安で仕方がなかったから。

 服は洗えばいい、でも、いなくなった妖精を探しに行く羽を私は持っていない。だからこそ私はあの6歳の夏以来、ますます妖精に憧れるようになったのだから。

 クオンは優しくてカッコいい素敵な王子様に成長していたから、きっと妖精界ではショーちゃんと同じくらいモテモテに違いない。もしかしたらショーちゃんよりもかな?


 そのとき雨のカーテンの向こうに、金に輝く光を見つけた。

 「クオ――――「キョーコちゃんっ!」

 遮るように名を呼ばれ、気付けばクオンの腕の中にいた。
 でも、私はそんな事よりもただただ茫然としていた。
 その、あまりにも神秘的な光景に。

 雨がクオンをすり抜けていた。まるで、クオンを避けるように。
 土砂降りの雨の中で、そこだけが麗らかな日差しの中にあるようだ。太陽は黄金に輝く彼自身で――――――

 「・・・ちゃん!キョーコちゃんっ!」
 「え、あ、なぁに?クオン」

 濡れていないのにひんやり冷たいクオンの手に揺さぶられて、私は幻想の世界から目を覚ました。今は雨に打たれて濡れた自身の体温と同化して、境目が分からないけれど。

 「どうして、こんな日に来たの?ああ、そんな事よりもこっちに来て」

 クオンは私の手をひいてずんずん歩きだした。河のある側を陣取るクオンに、やっぱり王子様だなって思った。

 そのとき前方に見えた巨大な存在に、、クオンが向かっている先が“お化けの木”だと気付く。

 お化けの木は、大きな大きな木で、その大きさに相応しい大きな口がついている。クオンは面白がって中に入っていたけれど、当時の私はそのまま飲み込まれて出て来られなくなりそうで入れなかった。
 中に入ったクオンが出口を見失わないように、そして自分が置いて行かれないように、彼が中に入っていってしまうたびに入口のところでずっと話しかけていた。

 今見てもすごく大きい。百年なんてものじゃなくて、千年も万年も生きていそうな大きな木だ。

 「今も怖い?」

 クオンは木の洞を前に、足を竦ませた私に気づいて言った。

 「大丈夫だよ。ここに悪い妖精はいないから」
 「うん」

 クオンがそう言うならそうなのだと思えた。

 中は驚くほど広かった。背の高いクオンが背を伸ばしたまま歩けるし、広さは旅館で私にあてがわれている部屋ほどある。

 「秘密基地みたい」
 「そうだよ」

 入口のあたりは水浸しになっていたが、全体は湿り気を感じる程度で、温かかった。
 クオンは奥の方に進んで行く。そこには40cm四方の箱があった。

 「良かった、綺麗なままだ」

 クオンが箱から取り出したのはタオルとレジャーシートだ。どちらもビニール袋に密閉されていた。

 「キョーコちゃん、これで拭いて。さすがに着替えはないけど、このままじゃ風邪をひいてしまうよ」
 「あ、ありがとう!」

 タオルを受け取りながらも、目はレジャーシートに向いてしまった。それには見覚えがあった。

 昔、クオンが花畑を見つけてそこに連れていってくれたことがあった。私はどうしてもお礼をしたくて、次の日お弁当―――といっても、6歳児に出来たのはおにぎりを握るくらいだったが―――を作って持って行った。ピクニックをしようと考えたのだ。
 でも前日の夜の内に雨が降っていて、向かった花畑は見る分には綺麗であったが、座れるような状態ではなかった。
 その時、クオンが少しだけ待っていて、と言った。5分もかからず戻って来た彼の手にはこのレジャーシートが握られていたのだ。

 そう言えば、この木と花畑は近い。

 「キョーコちゃん、雨が小ぶりになるまでまだかかると思うから、座ってよう」
 「うん、ありがとう・・・・クオン」

 言われるまま、クオンの隣に腰を下ろした。子供の頃には大きく感じたのそシートは、今は二人の肩が触 れ合う程に小さなものだったと気付く。

 ふと殆ど薄闇だった空間に仄かな明かりがともった。

「こっちも大丈夫みたいだ」
「わぁ!これってランタンよね?私、見るの初めて!」
「形はね。中は残念ながら電池式だよ。手動でも蓄電出来るから、今も使えたけど」

 柔らかな光の中、聞こえるのは雨と川の音。触れ合った体温は相変わらず境界線を失ったままで、まるで―――――――

 「世界に二人だけ、みたいだ・・・・」
 「・・・うん」

 クオンも、私と同じことを感じていたらしい。


 どれほどそうして座っていただろう。気づけば言葉はこぼれおちていた。

 「あのね、」

 だから、だろうか。100点が取れなかったとか、お母さんにおこられるとか、そう言うことじゃなくて、もっと根本的な不安がするりと口をついて出たのは。

 最近母が会いに来てくれないこと。100点をとりそこねても、もう、怒りもしないこと。

 「わたし、捨てられ・・・ちゃっ・・・たの、かなぁ・・・・?」
 「・・・・キョーコちゃん、俺がいるよ。俺が、付いてる」

 お母さんと手を繋いでいる子が羨ましかった。
 お母さんに頭を撫でてもらえる子が羨ましかった。
 目を見て話を聞いてもらえる子が、一緒に暮らせる子が、みんなみんな羨ましかった。

 クオンは初めての友達だけど、それだけじゃなかった。

 手を繋いでくれた、頭を撫でてくれた、目を見て話を聞いてくれた、短い時間だけど一緒に過ごしてくれた。

「俺はキョーコちゃんに呼ばれたから来たんだよ。駆けつけてきたんだ。君が呼んでいるって思ったから。キョーコちゃんが俺の特別な子だから。・・・・君が呼んでくれるなら、俺はずっと傍にいるよ」

 クオンは泣きやめない私を責めなかった。ギュッと私を抱きしめてくれた。そしてずっと優しく撫でてくれた。
 自分の髪の毛から水滴がこぼれ、頬を伝った。その冷たさに、そこでようやく、クオンまで濡れちゃうとか、わたし汗臭くないかな、とかもろもろの事に意識が向いた。

 そして慌てて離れようとしたのに、クオンはますますぎゅ~ってした。してくれた。

 クオンの腕の中はいい匂いがして、私はだんだん抵抗も忘れて眠ってしまっていた。恥ずかしい。

 妖精の腕はひんやりしていて気持ちいい。それなのに、ギュッとされると胸の真ん中らへんがあったかくなった。





戻る 目次 進む


文明の利器を使う妖精。突っ込みが入らない事こそが魔法です。
関連記事
web拍手 by FC2
※サイト案内※
●当サイトにはスキビの考察および二次創作文が展示されています。それに伴い、展示物には性描写・暴力表現を含まれるものがあります。
●取り扱いカップリングは蓮×キョーコ、傾向は「両片想い」「ハッピーエンド」です。
●また、管理人は考察上、あるいは二次創作文中の設定上、登場人物に対し批判的、否定的な扱いをする場合があります。
●作中のあらゆる事項はフィクションであり、現実に即さないものが多く含まれます。
※性描写・暴力表現を含む作品は年齢制限を設けていますので、高校生含む18歳未満の方は閲覧しないでください。
最新記事
カテゴリ
絵 (1)
最新コメント
検索フォーム
カウンター
管理人
Author:常葉(トキワ)

どうぞごゆるりとお楽しみ下さいませ。
度々細かな変更はありますが、温かく見守って頂けると幸いです。

バナーとか作ってみたり。
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。