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7'.君が呼んでいる気がして

2012.07.10.19:32


注意:この記事には、偽りの京都弁が登場します。






(Side:キョーコ)

「こっち向いて~!」
「ショーーーっ!」
「ショーくーーん!」
「ボタンちょうだーい!」

内容は様々だが、一人の男子生徒を囲んで上がる女子の声であるというのは共通だ。更にその少し外の輪では、その男子生徒―――不破 松太郎―――にもう当り前のように会えなくなることを嘆く後輩女子生徒が涙している。

その輪に加わらないもの達は、それぞれに級友との別れを惜しんでいた。

卒業式当日。友人もいなければ、同級生とまともな交友関係も存在しない私には、一人ぼっちの寂しいイベントとなる。

はずだった。1年生の夏までは。

不破の家を出たこと、お母さんが学校側へ働きかけたこと。
詳しくは分からないが、いつの間にか私への執拗なまでだったいじめは勢いを失い、終息していった。と同時に、ショーちゃんに興味がなく――――これ自体私には衝撃的だった。この地域の女の子はみんなショーちゃんが好きだと思っていたから。――――いじめに関与していなかった子たちと少しずつ交流が増えていった。

そしてこれはお母さんと相談して決めたことだったけれど、志望校をアメリカの高校に変えたことで、学校の先生方は随分と気にかけて下さり、その先生方とも仲良くなった。

そしてなにより、卒業式にお母さんが列席してくれた。初めて撮った母との記念写真に、私は泣かないようにするのが精いっぱいで、変な顔になってしまった。


今私は卒業生で溢れかえる玄関前の広場で、色んな人に囲まれて寂しくも楽しいひと時を過ごしていた。その時、女子生徒や友人に囲まれるショーちゃんを遠巻きに見守る女将さんを見つけた。

ご挨拶するために母と連れ立って向かう。

「女将さん、ご無沙汰しております。その節は大変お世話になりました」
「お久しぶりです、女将さん。長らく顔もお見せせずに申し訳ありません」

頭を下げると女将さんは手を振って言った。

「あらあらあら!冴菜さんにキョーコちゃん、気にすることあらへんよ?」

そのまま少し雑談に花を咲かせた。
ただ、冗談でも私を女将にするとか、ショーちゃんの嫁にしたいとか言うのは止めて欲しい。とは言え、女将さんの大事な一人息子を願い下げ、などと言うことは出来ないので、冗談はよして下さいと笑って言うにとどめたけれど。

ふと女将さんがまじまじと言った。

「それにしても・・・・・・すっかり親子二人、元通りになって。キョーコちゃんがこーんな小さい頃思い出すわ。よかったなぁ、ほんまに」
「ええ、本当に」

感慨深そうに頷く女将さんに、お母さんが苦笑いで返す。

「冴菜さん、キョーコちゃんが中学上がる時にもう少し待って欲しい言うたやろ?最初は心配しとったんやわ、キョーコちゃんも冴菜さんと会ってはる様子もしいひんし。でも夏ごろから随分頻繁に会っとたやんか?それで秋口に一緒に住む言うて、一安心したわ」
「え?」

私はそれがすぐに、クオンに会っていた時のことだと気付いた。私が旅館の手伝いもせずに出掛けるのを、むしろ推奨しているようですらあった女将さんの謎が解けた。

私がその事を言おうとした時、ショーちゃんを囲んでいたのとは違う、もっと大きなざわめきが辺りを支配した。


「え、え?」
「なに?撮影?」
「一般人・・・なわけないよね?」

感嘆のため息と、小さなささやき声。

「ちょっと、アンタ声掛けてきなさいよ」
「え!むり!!」

神々しい程の輝きと存在感を放つその人は、徒人が近づくことなど出来はしない。
溢れかえっていた筈の人波をかき分ける必要もなく悠然と進む“彼”は、まるで最初から見えていたように、

「迎えに来たよ、キョーコちゃん」

私の前に現れた。

「クオン!!」

礼儀も何もかも忘れて、彼のもとへ駆けだす。それはもはや条件反射のように。

「「会いたかった!!」」

当り前のようにその腕に迎え入れてくれるのが堪らなく嬉しい。
クオンに抱きあげられて、そのままくるくる回る。

何度も互いの名を呼びあっていた時、ピタリと回転を止めたクオンが私を降ろした。そしてそのまま片膝をつく。そんな僅かな動作すらため息が出るほど洗練されている。そして言った。

「最上キョーコさん、俺に貴女をキョーコと呼ぶ権利をください。俺と結婚を前提に付き合ってくれませんか?」

予感は、していた。最後の手紙をもらったときから。そして今日、目があった瞬間から。でも、こんな・・・・・。

「私で、本当にいいの?」
「君じゃないと、ダメなんだ」

そう言って私を見上げるその人は、今この瞬間も人を虜にしていて、日本ではまだ有名ではないけど、アメリカでは若手の実力派俳優として知られていて、それで、それで、

「だめ…―――――――私も、クオンじゃないと、だめだよぅ」

私の大好きな妖精の王子様だ。

「泣かないで」
「ないて、ないっ」

クオンが私に指輪をはめた。左手薬指にはまった指輪は不思議なほどぴったりで、やっぱりクオンは魔法が使えるんだって思った。


ずっとシンデレラに憧れていた。苦労が報われることを約束されたお姫様に。
でも今は、シンデレラになりたいとは思わない。

「くおん」
「うん?」

私は私のままがいい。

『私をクオンのお嫁さんにして下さい』
「!!」

呼べばクオンが応えてくれる、私のままで。

『大歓迎だ!!キョーコっ!!』

クオンがずっと呼んでいてくれた私のままで!


≪終≫

戻る 目次

 あとがき
みなさま、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
妖精の森で無邪気に遊ぶ二人をこよなく愛するため、ここを舞台にした話が好きです。

ところでこのお話のプロットにこんなことが書いてありました。

突然現れた男に、女将教育をしていた娘を取られる不破母ザマァm9(^Д^)

クオンの存在を知らないキョーコ以外の人々にとって、彼の存在は“突然現れた第3者”なんですよね。

プロットって、どうも後半になればなるほど適当になるので、このメモ部分は入れられなかったのですが、折角なので最後に不破母に登場して頂きました。


ところで途中で既に投稿していた話を改稿したりもしました。その節は失礼いたしました。
が、これからもちょくちょく別のお話で修正が入ると思います。申し訳ありません。

と言いつつ申し開きをしますと、風呂敷を広げすぎると展開が冗長になったり自分自身で把握しきれずに行き詰ったりするので(もともと中編~長編ばかりなので)そこをキュキュッとつめなおして、お話をまとめるために修正しております。(話の展開上の矛盾を解決するための場合もありますが)

今回の場合は、クオン君の『人間の記憶を徐々に取り戻す間の心の葛藤』『時間軸の細かすぎた設定』などをがっつり削り、展開上必要な部分に焦点を絞り(故にとても短い話がある)話をサクサクすすめた感じです。

それがよい事か悪いことかの判断は人によりけりだと思いますが、私は自分がちゃんと完結できるように書かなければいけないと思い、このような形で落ち着きました。

えー、長々と語りましたが、今回はこの辺で。
最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。

あなかしこ
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