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夢のあと

2012.07.22.21:53


更新出来ないよ、と言いつつ更新します。テスト前に漫画を読んでしまうあのパターンです。

『完璧な人生の歩み方』と被るので1話完結にしてみました。
そちらと違って特にコメディー調ではありませんが、記憶とか夢とかSF(少し不思議)なお話です。

そして医療や記憶障害の描写がありますこととこの物語がフィクションであることをここに明記します。




「蓮!!」
「…!?」

目覚めた途端に社さんのドアップときては、俺も流石に言葉を失くした。
混乱する様子に気づいてくれた社さんが、ナースコールを押しながら教えてくれた。俺は事故にあってまる一日と少し眠っていたらしい。

事故、と言われても記憶が無い。TRAGIC MARKERの撮影も佳境に入り、俺は最上さんに告白することを決めた。全てが終わってからではなく、今伝えようと思い…。

そうだ!! 撮影…いや、最上さんは!? 事故にあったなら最上さんが近くにいた可能性が高い。

「社さん、あの…彼女は、最上さんは事故に巻き込まれていませんかっ?」
「え――」

コンコン

「敦賀さん、入りますよ」

俺の疑問はやってきた医者によって有耶無耶になったが、よくよく考えてみればわかることじゃないか。彼女に何かあったなら社さんは真っ先に俺に告げているはずだ。
医者からの簡単な問診に応え、検査を終える頃には少しずつ冷静さを取り戻していた。

そしてふと気が付いた。社さんの顔が何やら強張っている。

「もう一度確認しますね。自分のお名前はわかりますか?」
「敦賀蓮です」
「ではお年は?」
「21です」
「今年は何年ですか?」
「20XX年です」

医師はカルテを確認するように視線を下に向けた。

「敦賀さん、順を追って説明いたしますのでどうぞ冷静に聞いて下さいね」

此方に視線を戻した医師に、胸が騒いだ。

「今年は20△△年です。そしてあなたの年齢は身分証明書等で確認した限り18歳です」
「は…?」
「どうぞ、携帯電話、テレビ何でも構いません。ご自身で信用のおけると思うもので確認してみて下さい」

俺はすぐに両方で確認した。

「社さん…・…これは、社長の悪戯ではないんですよ、ね?」
「違う」

社さんは短く、しかしはっきりと否定し、首を振った。

「でも、そんな…こんなことって、あるんですか? 目を覚ましたら3年後だったならともかく、3年前って…」
「混乱されるのも無理はありません。しかしこれは十分に起こりえることなんです。ですからその前に敦賀さんの方から詳しいお話を聞かせて下さい。マネージャーの方も、お尋ねしたい事がありますのでどうぞご同席下さい」

そこからは医師からの質疑に俺が答え、社さんに確認するという形で話は進んでいく。
そうして医師が下した結論はこうだ。

俺はどうやら記憶障害を起こしているらしい。
18歳の事故にあう直前までの記憶は少なくとも社さんの知る限りは共通している。しかし、それ以降のことは時系列から考えても出来事から考えても偽の記憶――捏造記憶だという。

記憶は失うだけのものではなく、捏造されることが多々ある。代表的なもので言えば被害妄想だろうか。しかし稀に、論理的に作り上げられた捏造記憶と言うものがある。

つまり辻褄の合わない妄想ではなく、過去の出来事から未来を予測するように辻褄の合った記憶だ。ただし全く矛盾が無いわけではない。全体を通して本人の都合のよいように作られているのは被害妄想と共通であるし、なにより未来の記憶と言う時間的な矛盾だけは避けられない。

多くの予測型捏造妄想を抱いた人は、それを本物の未来の記憶だと思い込むようになるが、それはとても危険なことなのだと医師は繰り返し説いた。

俺の記憶が――最上さんの存在が捏造されたもの…。
理性では納得しても、感情が追い付いてくれない。
俺は一秒でも早く確認したくて“よい患者”を演じた。

「敦賀さんにとって『最上さん』と『不破尚』という存在がキーなのでしょう。カウンセリングで原因を解決していきましょう」
「いえ、そこまでしなくても大丈夫ですよ。体の方に異常が無いのならすぐにでも復帰したいですし。何と言っても想像の中でまで仕事をしていたんですから」

医師や社さんには記憶の全てを話してはいない。最上さんと不破は頻繁に出てきた俺が出会ったことの無いはずの人間であるために“キー”と言われているだけだ。

「日付で記憶が明確に区別できますから混乱もありませんよ」

俺は笑って医師と社さんを煙に巻いた。







京都で泊まりがけのロケがある。俺の荷物が入った鞄はいつもより少しだけ大きなものだった。
目ざとく気付いた社さんが不思議そうな顔をする。

「蓮、いつものやつじゃないのか。なにか荷物の多くなるようなことあったけ?」
「以前使っていたものをうっかり汚してしまっただけですよ」
「お前にもうっかりなんてあるんだな~」

そう言って笑う社さん。俺は誰にも言う訳にはいかなかった。この鞄の中にはこの世に存在しない男“カイン・ヒール”の衣装が入っている。ウィッグは変装用にと言ってMiss JELLY WOODSに作ってもらった。


ロケは初日から生憎の雨だった。
撮れる分だけ撮ると既に夕方と言うこともあり、撮影クルーはホテルへと戻ることになった。
俺は役者仲間やスッタフからの誘いを断り自分の部屋に引き返す。

「社さん、少し散歩に出ますね」
「いくら雨が降ってるからって気づかれるぞ?」
「簡単な変装道具くらい持ってきてますよ」

俺は念のため誰もいないトイレの個室でカイン・ヒールになった。カインの設定上、傘をさすというのも違和感がある。小雨であるし、俺はそのまま身一つで外に出た。調べれば実在した旅館、“松の園”に向けて。

夢や記憶障害と言うのは不思議なもので、とことんつじつまが合わないこともあれば、反対にとことんつじつまは合うこともある。無意識下に眠る記憶まで掬いあげて導き出されたものだからだ。

俺の捏造された記憶が何かとつじつまが合うのも恐らくそういうことなのだろう。10歳の頃の記憶は自分自身がどんなに鮮明に覚えているつもりでも、一言一句の全てを記憶出来ている訳ではない。
作られた記憶はそういった思い出せなくなった情報まで含めて作られているに違いなかった。

両者に共通することは、どんなにありえないことでも心がそれを認められないことだろう。
俺もそうだ。矛盾があることを認めながら、彼女の存在を諦められない。予知夢を見たのだと信じたい。彼女と出会うための不思議な導きだったのだと思いたい。あり得ないという理性の声に耳を傾けながらも止まれなかった。

そういうどうしようもない妄執に駆られて、俺は京都の街を歩いていたから。

ときおり傘をさした人とすれ違うが、一度こちらに視線を投げかけるとそそくさと足早に去っていく。
俺は今、カイン・ヒールだ。それなのに、隣にはセツカがいない。彼女が隣にいたならカインは傘をさしていたのだろう。妹と身を寄せ合いながら歩いていたのだろう。

まただ、理性の諭す声など忘れて妄想にふける。なるほど、これは病気かもしれない。
そのときだ。

「風邪をひいてしまいますよ?」

まだ幼さの残る声と共に影が出来、雨が遮られた。

「私は折り畳み傘がありますので、これ、使って下さい」

俺は緩慢な動作で振り返る。少女が目を見開いた。




『にいさん』




少女の口がそう動いたことを、俺は見逃さない。

これは夢か現か…俺の妄想でしかないのか――…

それすらもう、俺自身にも分からない。

「最上さん」

ただ…

「見つけた」

彼女のいる場所が、俺の現実だ。


(終)

目次

と言うわけで、初の正真正銘の短編でした。
結局キョーコサイド書いて前後編になったりして…。そんな馬鹿な。

夏なのでSF(少し不思議)仕様です。ここは果たして夢か現か敦賀氏の妄想か。皆様にはどう見えたでしょうか。

SF系の話は『迷い家』ネタでストックがあるので、感想なぞいただければ参考にしたく思います。(オチをどうするかについて)
少し不思議な話は一歩間違えるとすぐに夢オチにしたくなるので(笑)

それでは、ここまで読んで下さりありがとうございました!

どっとはらい


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Author:常葉(トキワ)

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度々細かな変更はありますが、温かく見守って頂けると幸いです。

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