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幸せの探し方⑤

2011.04.21.17:35

5話(K)無意識少女誘拐


 (最上キョーコ17歳。現在尊敬してやまない先輩に誘拐されています。)

 思わず浮かんでしまった脳内アナウンスに、私は思わず違う違うと突っ込んだ。

 この言い方では誤解を招きすぎてしまうだろう。

 そして誰にともなくいい訳をする。

 (なんだか今日の敦賀様は大変ご機嫌麗しくないようでいらしたのよ!! 絶っっっっっ対に関わり合いになりたくなかったから、ご挨拶と共に全力で逃走したところを捕獲されて、拘束されて、無理やり車に乗せられてしまったのよ!! だから思わず誘拐などと言ってしまっただけなのよ・・・・っ!! 決して若手俳優No.1とまで言われる敦賀様が誘拐などと言う犯罪を働くはずが・・・・・・)

 とは考えてみたものの、思い返せば返す程に誘拐じみてはいないだろうか?

 特に今現在彼女の隣で車を走らせている男、所属事務所の先輩俳優から漂う不穏な空気がその思いに拍車をかけるのだ。

 (うぅ~~~・・・・一体なんなの? 大魔王か夜の帝王かはっきりして下さいよ敦賀さん!!)

 そう、今日の彼はとんでもなくディープな怒り状態・・・・いわゆる大魔王でありながら、夜の帝王の影が見え隠れしているのである。

 なんとか見定めようとチラ、運転席に座する件の青年を窺い見るも・・・・

 (こわっ!!)

 その美貌に感嘆するよりも早く窓側へと目を背けた。

 (今日の敦賀さんはやっぱり夜の気配だわ! 怨キョが喜んでいるのに飛びついて行かないのがいい証拠よ!!)

 大魔王も怖いけれど、自分の中の触れられたくない部分へと今しも踏み込んできそうな夜の帝王はもっと怖い。

 怒りなら謝ればいい。けれど夜の彼には一体何をどうすればいいのか分からないのだ。

 我ながらビビりすぎだとは思うものの、外を見るふりをしながら動向を窺うように、窓に映る先輩俳優を見ていた。

 負のオーラの中に漂う色気のせいで、夜の帝王は以前よりも更に艶めかしい。

 運転中のその横顔を見つめていたとき、その顔がこちらを向いた。その視線には気付かないふりをして窓を見続けていた。
 それでも自分の後ろ姿を見つめる蓮の視線に気づかないままではいられなかった。

 ・・・・・その目の色に。

 (え? ・・・うそ、なんで・・・・)
 
 それは最近になって気付くようになった『雄』の目。
 熱されすぎて、ときに近づくのも恐ろしくなる――――他の男の人たちが『女』を見ているときと同じ目だ。

 訳が分からず戸惑う。なぜ彼がそんな目をしているのか、誰に向けてそんな目をしているのか。

 そうだ、以前に夜の帝王を見た時もこの目をしていた。その時、真っ直ぐに視線を注がれたのは・・・・・そして今もその視線の先にいるのは・・・・・。

(・・・・・私・・・・?)

 この尊敬してやまない青年に、自分はそういう目で見られているというのだろうか。

 当然の帰結であるがごとく浮かんだその考えを振り払うように首を振った。

 (何を考えているの!? ・・・私ったらなんて自意識過剰になったのかしら。敦賀さんにお、お、女として見られているような気がするなんて・・・・)

 キョーコのおバカと己を罵るも、男の瞳は窓越しでありながら火傷しそうな程で、どうするのが正解なのか分からない。

 けれど、その件の青年を見、答えを見つける。

 (ん? ・・・あっ!! そうよ!!! 自意識過剰でもいいのよ!!!)

 自己防衛は過剰なくらいで丁度いい。そう言っていたのは彼ではないか。

 (って! ・・・・・それが、なんで敦賀さんの車に乗せられてるのよーーー!! 男性の車に同乗しないのなんて基本じゃない!)

 大魔王的意味ではあるけれど、危険を感じていたのなら尚更だというのに。

 (こ、こんなんじゃ敦賀さんに心配かけちゃう!! 呆れられちゃう!!)

 迂闊にも先輩俳優に捕まり車に乗せられてしまった自分を恥じた。彼が自己防衛の指導をしてくれたのはたった13日前のこと。まだ2週間もたっていないというのに。

 それが危険な男の車にあれよあれよと言う間に乗せられる、このていたらく。

 (でもでも、これは不可効力なんです! 力ずくで無理やり乗せられたんです!! ・・・・・・・・って、乗せたの敦賀さんじゃないのよ!!)

 自己防衛するように言ったのもこの男なら、その防衛を突破して自分を連れ去ったのもこの男である。

 (はっ、もしやこれはテストなんじゃないの!? ちゃんとこの前の敦賀さんの言いつけを守っているかっていう!?)

 自分で自分にツッコミを入れるうちにたどり着いた真実に、なんだそうかと一息つき、慌てふためいてしまった自分自身を笑った。

 それなら大丈夫だ。この青年は心から謝罪すれば許してくれると言うとっても大人な相手なのだから。

 ちゃんと言えば分かってもらえるはずだ。
 貴方の言いつけを守って自衛に努めていると、お陰で身の安全を守ることを覚えたと。

 今は呆れられているとしても、この先輩俳優ならば誠心誠意伝えれば分ってくれるはずなのだ。

 (きっと私のことを見捨てたりしないわ・・・・!)

 そう、今の自分は天下の敦賀蓮に後輩一かわいがられている(と自惚れることが出来るくらい可愛がって頂いている)ミラクルキョーコなのだから。

 思わず逃走したことを謝り、その上でしっかりと先頃の指導への感謝を伝えたならいけるはずだ。

 (話しかけるのも憚られるくらい怖いけど・・・・・・お声をかけるのよっ!!)

「最上さん、降りて」

 気合を入れるに入れ、今まさに声を発っそう、と言うところで思いきり出鼻をくじかれた。

 気付けば車は既にエンジンも切られており、窓の外は運転席の青年の住むマンション、その地下駐車場だった。

 タイミングを逸し、促されるまま車を降りたところで腕を掴まれた。

 掴んだのは先ほどまで確かに運転席にいた彼だ。

 腕を掴んだまま歩き出す男に、自分も引きずられぬように慌てて足を動かす。

 右腕を掴むその手は、事務所で逃げ出して捕獲されたときに受けた痛いまでの拘束ほどではなかった。
 しかし振り払うことも、解くこともできない強さだった。

 (あれ?)

 腕を引かれながら歩き、先輩俳優を見上げたとき、違和感に気づいた。

 ついさっきまで自分は、負の感情に反応する怨キョが反応するため、彼は怒っているのだと思いこんでいた。

 いたのだけれど、少なくとも今は、

 (何か、違う?)

 今まで見てきた、大魔王と称するこの人とは何か違う。

 この人の車に乗り込んだ時には、確かに大魔王だと思ったのだが、今の彼はまるで局の片隅でブラックホールを作りだしていた時のようだ。

 あるいは、軽井沢で目をそむけられた時のようでもあった。

 二つの場面で見た表情に共通する感情が、・・・・・ある。

 これは、自責の表情だ。

 しかし、それだけではない。

 答えを求めて男の顔を見つめた。

 (なんでだろう、すごく知りたい。敦賀さんが今、何を思っているのか)

 今なら届くのではないだろうか。何を考えているのか分からない、意地悪で優しいこの人の心に。

 そのとき、エレベーターに乗り込んだ青年が前触れもなくこちらを見た。

「ふぎゃっ!!」

(ば、バレたわ!! 敦賀様のご尊顔をガン見していたことが・・・・!!)

火花が散る勢いで目が合い、変な声が出てしまった。

 しかしこの際仕方がない。気付かれてしまったのなら堂々と見てやる!! と気持ちを切り替える。

 先輩俳優の瞳の奥。どうしても知りたくなったその感情を探るために。

 そこにはいくら見つめても紐解くことのできない複雑な感情の中に、やはり夜の帝王らしき気配を感じた。
 しかしそれは何度か目にしたことのある、あからさまに色気を全開にしたものではない。もっと男くさくて、生々しい。そのくせ直接的じゃないのは、それが彼自身の中で燻るものだから。

 言葉もなく、何故こんなにも伝わってくるのだろうか。まるで、溜め込むだけ溜め込んで、抑えつけるだけ抑えつけて、それでも溢れだしてしまったかのように。

 溢れだしているものは色気なんかじゃなかった。

 それは欲望そのもの・・・・。

 そしてそれの意味するところはやはり、自身の自意識過剰を、さらに、さらに加速させるもので。


 ボッ


 一気に顔が火照るのが分かった。

 額や手が湿りだす。

 掴まれているのが腕でよかった、そんな風に意識したとたん、色気もなく拘束されているだけの腕まで居心地が悪くなる。

 先ほどまで不躾にじろじろと拝顔していたというのに、もはや顔をあげていることもしたくない。

 いや、できなかった。出来る筈がない。

 (あぁもう!! なんで今、私はこんな狭い箱の中にいるのよ!!)

 そむけた顔に青年からの視線が突き刺さっているのは絶対に自意識過剰ではないだろう。

 それだけであるのに、何故こんなに居たたまれず、恥ずかしい思いをしなくてはいけないのだろうか。

 エレベーターにいる時間をこんなにも長く感じたことはない。

 忙しなく視線を動かしていると、そこに数字の輝きを見つけた。

 (よ、よかった、エレベーターが最上階に付く。ようやくこの空間から脱出でき・・・・。って、駄目じゃない! このままじゃこの危ない匂いの漂う(いえ、敦賀さんは相変わらず芳しい香りだけれども!!)男性の部屋に直行よ!?)

 そんなことになれば、先輩俳優から自分への危機意識テスト不合格は確実である。

 青年のあまりに『雄』くさい空気に忘れかけていたが、これはテストなのである。自分の危機管理能力が試されているのだ。

 だからダメなのだと自身に言い聞かせる。気がつけば自分の心はこのまま彼の部屋へと行くことを望んでいた。
 けれどテストが不合格になってこの人を呆れさせたり、危なっかしい後輩への心労を増やしていい筈がない。

 どんなに部屋にお邪魔したくても、今日は帰らねばならなかった。

 (ちゃんと自衛していますって言って、今日もそれを実行しますって言って、エレベーターに乗って帰るのよ。それが正解なのよ・・・・・。)

 『キョーコちゃん』

 (え?)

 『キョーコちゃんは本当にそれでいいの? そんなことしたら、敦賀さん、二度とお部屋呼んでくれなくなるかもしれないわ!』

 耳の横。・・・・否、頭の中で真っ白い羽根の悪魔が囁く声がした。


 ちん


 とエレベーターが到着の音を立てる。

 そのとき、自分の頭の中でも『ちん』と音が鳴った。

 クイズ番組の解答席に座るピュアキョが、解答ボタンを押している。

 彼女が純真無垢な笑顔でにこやかに答えた。

 『分かりました! どうにかされてもいい相手の部屋にならお邪魔しても問題ないと思います!!』

 ぽぽぽぽぽんと音を立て、観客席の怨キョたちがピュアキョに変わり、歓声を上げる。

 (ピュアな子がそんなこと言っちゃイケません!!!)

 あの子たちに心の中でそう叱りながらも、私の中から『帰る』なんていう選択肢は綺麗に消え去っていた。




 人は誠意!!

 女は度胸よ!!


 怨キョの勢力とピュアキョの勢力。

 それが逆転した時、私の中で何かが変わった。






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2012/1/8  リメイク
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Author:常葉(トキワ)

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