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完璧な人生の歩み方~敢えて言うなら火の粉を払っただけ(2)~

2012.10.15.18:40

注意:この記事には名前持ちの脇役が複数出てきます。
注意:このサイトのお話は設定や国の文化、職業背景そのほか諸々を含めてフィクションです。




「お前、親の名前で役とって恥ずかしくねーのかよ」

 12~13歳だろうか、撮影所の片隅で赤毛の少年・・・ティラーがクオンを睨み付け言った。

 クオンは挨拶への返答に返された言葉に、ニコッと笑う。まるで言葉が通じていないかのように。

「あんたは6歳のガキに突っかかって恥ずかしくないのかよ」

 ティラーはギョッとした。まるっきり穏やかな調子で放たれたのが、作り物のような美少年からの暴言だったからだ。

 ティラーはカッと頬を染めたが、背を向け立ち去るクオンに何か言うことはなかった。赤くなった頬の原因は怒りではなく羞恥であったようだ。

 クオンは今日現場に来ている他の共演者に声をかけながら、彼とならもしかしたら仲良くなれるかもしれないな、と思った。




「メグ、おはよー!」

 無邪気な笑顔でクオンは若い女性に駆け寄った。撮影スタッフの一人である彼女はお姉さん肌で、子役の多いこの現場で未成年者たちの面倒をよく見てくれている。

「あら、おはようクオン。今日も元気ね」

 笑顔で挨拶を返してくれたメグにクオンはそのままハグしようと近づき、途中でビクリと体を揺らすと歩みを止めた。メグのすぐ近くにラースがいたからだ。
 ラースを避けるようにクオンはぐるりと回ってメグの後ろに隠れた。ラースはこの現場でクオンを快く思わない連中の筆頭である。

「クオン?」

 メグはクオンを見、ラースを見た。明らかにラースを怖がっているクオンに、ラースを見るメグの表情は険しくなっていく。

「ラース、あなたクオンに何をしたの」

 ラースは今年二十歳になったばかりの青年で、上背が高く小柄なメグより頭一つ分は大きい。しかし下から責めるような目でメグに睨まれ、ひどく狼狽していた。

「あっいや、ほら! あれだよ! あれ! 俺、背が高いから威圧感があるんだな、うん」
「クオンのお父さんの方がもっと高いのよ?」
「いや、違うんだって!!」

 自尊心の塊のようなラースも、年上の恋人メグが相手では途端に弱腰になるのである。



 そんな彼らの様子をティラーは顔色を悪くしながら少し離れた場所で見ていた。

(良かった・・・!! クオンと友達になっておいて本当に良かった!!)

 ティラーの位置からは、クオンがこちらに向かってウィンクするのがよく見えた。その様はいたずらっ子の表情そのもので、ティラーの隣にいる初老の大御所俳優はそんなクオンを愉快そうに見ている。

 しかしティラーは間違ってもそのような反応は出来なかった。体が震えないようにするので精一杯だ。自分のせいで隣にいる偉大な役者がクオンの正体に気がついたら、自分はクオンにどんな報復をされるか分からない。

 ティラーは知っている。クオンの火の粉の払い方は、彼らお歴々がいない場所ではもっとえげつないということを。




 あの日、クオンが天使役として初めて現場に現れた日。ティラーはクオンに初っぱなから喧嘩を売った。

 ティラーは演技が好きだった。自分に才能がないことは分かっていたが、コネも権力もないティラーはそれでも大好きな演技を続けたくて誰よりも努力してきたと自負している。

 だからこそ親の名前やコネで役を貰うような人間が大嫌いだった。あのときクオンに突っかかったのは、お前のコネや権力には媚びないという自分自身への宣誓のようなものだ。

 そうであるからこそ、クオンに言い返されて恥ずかしくなった。自分自身に誓うのに6歳の子供を巻き込む必要など全くないからだ。
 ティラーは自分が媚びないと誓った恵まれた立場という点でクオンを羨み妬んでいることを自覚した。

 しかしすぐに謝ることはプライドが邪魔をしてどうしても出来ないまま、天使役を交えた撮影は始まった。

 転機はすぐに訪れる。ティラーはクオンの演技を・・・いや、“Angel”そのもののクオンを見たとき、すぐさま謝りに行くことを決めたのだった。

 幽玄たる才覚と深淵の研磨、誰よりも努力してきたというティラーの自負を容易く打ち砕く、クオンが見せた“Angel”。それは今のティラーには決して手の届かない高みにあった。

 ティラーは演技が好きだ。だから演技にひたむきな人間を嫌えるはずもなかった。自分を優に超す努力の結晶を示したクオンを尊敬せずにいられる理由はなかった。

 正直なところ、ティラーには下心もあった。クオンと親しくなり彼の側でその技術を盗むことが出来れば、才能に欠ける自分でもこの世界でのし上がれるのではないか? そういった打算があったのも確かだ。

 しかしそれもすぐに霧散する。話してみればクオンはとてもいいやつだった。ティラーの謝罪を快く受け入れ、自身も生意気な口をきいたと謝ってきた。
 優しくて、穏やかで、時々いたずら坊主。役者の仕事が大好きなところには好感が持てたし、素直で聞き上手なクオンと一緒にいると偉大な先輩方からためになる色々な話を聞かせてもらえた。

 ティラーはただ友人としてクオンを好ましく思うようになった。



 しかし、撮影が始まって10日もした頃。クオンの周囲は目に見えて不穏な空気に包まれていくことになる。
 ラースを中心とした20才以下の少年ら。彼らのクオンに対する悪感情がとうとう吹き出そうとしていたのだ。

 両親はハリウッドでも有名なアクションスターと、生きた宝石と讃えられるスーパーモデル。金持ちで苦労もなく育ち、幼いながらに人間離れした美しさを誇る。そのうえ演技は文句の付けようもなく、ハリウッドで確固たる地位を築く共演者たちに上手いこと取り入ってすらいる。自分たちにはいつも罵倒を浴びせるばかりの監督オリバーにも叱咤されることすらない。

 恵まれすぎた環境、圧倒的なまでの才能。

 ハリウッドで現状“換えのきく役者”でしかない若者たちが、隔絶した存在として将来立ちふさがるだろうクオンを排除しようとするのはある意味では仕方のないこととも言えた。

 ティラーはその気配に気がつきながらもどうすれば良いのか分からずやきもきとしていた。ただ、たとえ何があっても自分はクオンの友達をやめたりしない。そう決めていた・・・―――のだが・・・。



 § § §



「きっとこれは俺のわがままなんだ。
 血は争えない、流石はクーの子供、才能は遺伝する・・・――何を言われても無視すれば良かったのかもしれない。
 でも俺はその枠に填められることが嫌だった。俺は俺だって、俺は俺の演技をするし、出来るんだって示したかった。
 父さんも母さんも関係のないただの“俺”であっても・・・親の名前なんかなくても、ゼロから這い上がれるんだって・・・」

 物憂い様子のクオンをキョーコは心配げに見つめていた。

 が、クオンがこのように言うのは当然ながら建前だ。クオン少年はこのようなことで落ち込む柔な精神など(キョーコ関連を除いては)持ち合わせていないのである。

 キョーコに建前を話すのも、それで心配をかけさせるのも本意ではないが、クオンにだってどうしても隠したいことがあるのだ。
 勇気づけるように「クオンなら絶対出来る」そう言って抱きしめてくれるキョーコへ、果たして真実など言えるだろうか。いいや、断じて言えはしない。

(流石に、こればっかりは、ね・・・)

 キョーコを抱きしめ返しながらクオンは日の沈む赤い空を見上げた。





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彼は純真無垢な美少年・・・デスヨ?
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