スポンサーサイト

--.--.--.--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手 by FC2

完璧な人生の歩み方~敢えて言うなら火の粉を払っただけ(3)~

2012.10.16.06:00

注意:この記事には顔文字が含まれます。
注意:この記事には名前持ちの脇役が複数出てきます。
注意:このサイトのお話は設定や国の文化、職業背景そのほか諸々を含めてフィクションです。
注意:ちょっとお下品。




「おはよーラース!」

 だっこをねだるようにクオンは両腕を広げラースに駆け寄ろうとして、途中でその足を止めた。ラースが悲鳴を上げて走り去ったからだ。

「ティラー、ラースはお腹でも痛くなったのかな?」

 後ろを振り返り無垢な顔のまま、こてんと頭を傾けるクオンにティラーは顔を引きつらせた。

「ああ、ラースは腹を痛めているんだ。
 きっと我慢できなかったんだ。そうに違いないさ。うん、間違いない」

「そっかぁ~じゃあ、後でお見舞いに行かないとね」

 そう言って微笑む完璧に美しい顔が、彼の一面でしかないことをティラーは既に知っている。その天使のような顔から微妙に視線を外し、ティラーはラースの去って行った方角を見つめた。

(今度はラース、何をされたんだろう・・・・・・クオンに)




 撮影が始まって少したった頃、クオンはラースを含む年上の少年たちに囲まれていた。それを偶然見かけたティラーはすぐに割って入ろうとしたが、ラースたちが発したあまりにも酷い言葉に思わず足が止まった。

 血筋を罵ることに始まり、悪魔に魂を売ってその容姿を得たとか、その容姿を利用して子供ながらに“枕”をしているとか、下品すぎるその言葉が育ちの良いクオンに通じるのかは分からないが、そこには突き刺さるような敵意があった。

 流石に主要キャストであるクオンを暴行するはずはないと信じたいが、ティラーはそれも危ういと再び割って入ろうとした。

 しかし――・・・次の瞬間には、クオンはラースたちの包囲を抜けていた。高い、高い、跳躍によって。少年の一人が体勢を崩しているのはクオンの踏み台にされたためだ。

 音もなく着地したクオンが唖然としている少年たちを振り向いた。ティラーからは横顔しか見えなかったが、思い出すだけで全身の毛穴が開く。

 ――・・・悪魔と取引をした? そんなものじゃない。あれは悪魔そのものだ。

 走馬燈のようにクオンの天使のような笑みを思い出す。白昼夢のような視線の先で、クオンの影が一瞬揺らめいたように見えた。

「俺は悪魔と取引したそうですね」

 クオンがそう呟き小さく嗤った。
 ブワッと嫌な汗が全身から吹き出す。得体の知れない不吉な予感。

 焦燥に駆られたように少年の一人が叫びながらクオンに躍りかかった。
 クオンに触れるか触れないかのその一瞬、彼は突然倒れ込んだ。見えない力にでも押し潰されたかのように。何が起きたのかも分からず引きつった数多の顔がクオンへと向けられる。

 クオンは彼らを汚物でも見るような目で一瞥すると、何も言わず去って行った。その沈黙が何よりも恐ろしかった。




 ティラーは知っている。

 ラースがメグに振られたことも、ピーターが監督にクビを切られたことも、サムが機材事故に巻き込まれたことも、ジョエルが大御所俳優から不興を買ったことも、ロブの父の会社が買収されたことも、他にも全て、全て、クオンが裏で糸を引いているらしいのだ。

 証拠が出たことはない。しかしその時々のクオンの様子を見るに、絶対にクオンが関わっているとしか思えないのだ。

 それこそクオンは神か悪魔に守られているとしか思えない。
 リンチに遭いそうなときは必ず助けが入り、彼に何か嫌がらせをすれば必ず不幸が起きる。


 ラースたちはとうとうクオンを見ると逃げ出すほどになった。中には頭を下げて舎弟にして欲しいという奴らまでいた。

 6歳の子供相手に逃げるのと舎弟志願するのとどちらが情けないのか? ティラーはどちらも情けないとは思わない。
 あのクオン相手では仕方のないことだと思うのだ。

 ティラーはクオンと早々に和解した過去の自分を褒め称えた。クオンは友人としては本当にいいやつなのである。
 クオンは、本気で反省して謝ってくる人間は許した。舎弟志願してきたクオンに嫌がらせをしていた連中をクオンは許し、舎弟には出来ないけど友達になって欲しいと言ったのだ。

 結果、クオンに徹底的に呪いじみた恐怖を植え付けられた彼らは“敵”の立場からめでたく“OTOMODACHI☆”に昇格した。6歳児相手に異様に腰が低いのはご愛敬だろう。



 § § §



(流石に言えないよねぇ・・・向こうじゃ他の子役や若手俳優から避けられていて仕事がし辛いなんて・・・。いや、でも監督には認めてもらえなかったのも本当だし・・・嘘は言ってないよね)


 舞台を中心にしつつも“天使の存在証明”を皮切りに映像関係の仕事が入ってくるようになった。その度に五月蠅いのを適当に追い払っていたら、ちょっかいをかけられない代わりに避けられるようになった、と言うのがクオンの所感だ。

(敦賀蓮で鍛えた社交能力で、今度はもっと同年代の友人を作ろうと思ってたのに・・・大御所の方々と仲良くしていたのがいけなかったのかなぁ?)

 頭角を現せば表すほどにクオンへの反発は大きくなっていった。

 この世界に長くいて権力も力のうちと割り切っている大人や、既に地位を確立して他人の才を素直に認め賞賛できる大御所は良かった。
 彼らは才気にあふれ素直で礼儀正しく少しヤンチャなところのあるクオンを我が子や孫のように可愛がってくれた。

 しかしクオンにどんなに才能があってもクオンを認めない人間もまた多かった。

 嫌がらせはクオンが活躍し華々しく評価される分だけ、規模という点で前世よりも凄まじいものになった。特定のグループと言うよりも、出会う役者の大半がクオンの仮想敵であると言えばその物量に想像がつくだろうか。

 誰にも地位を脅かされることのない偉大な俳優というのは本当に一握りのものなのだ。
 若い役者、売れない役者、嫉妬心の強い役者、自尊心の強い役者、そもそも金持ちが嫌いな人間。
 クオンを気に入らない人間はいくらでもいた。才能を認めない人間も、才能を認めた上で潰そうとする人間も腐るほどだ。

(本当、なんでみんな俺を避けるんだろう・・・)

 しかしクオンは彼らをいちいち相手にしていてはキリがなくなるので当然放置している。
つまり彼らにどんな不幸が起きようとクオンには正真正銘関係がない。

(そりゃあ初めての映画撮影の時にはいくらか余裕があったし? いたずらレベルの仕返しはしたけどさ・・・)

 クオンがしたことと言えば、自分に具体的に嫌がらせをしてきた連中に不運が起きたとき、ちょっとばかり(そう、クオンにとっては“ちょっとばかり”)意味深な態度を取るくらいのものだった。

 ―――・・・それこそ、クオンが陰で不幸を運ぶ金の黒猫と呼ばれ、避けられ、OTOMODACHIと言う名の舎弟を量産した原因なのだが・・・前世と変わらず変なところで鈍いクオンがそのことに気がつくことはなかった。


「ま、いいか」
「クオン?」

 キョーコが突然明るい声を出したクオンを不思議そうに見た。

「キョーコちゃんがいてくれれば百人力だからね!
 考えても分からないことに悩むより、ここはキョーコちゃんと有意義に過ごそうと思って」

 先ほどまでの憂いを払ったクオンに、キョーコも微笑んだ。

「それじゃあ、ご飯の前にお風呂に入りましょう」
「え」
「うふふふふふ・・・次のお泊まりの時には確かめさせてくれるって言ったものね?」
「う、うん」

 下半身に宿る息子が反応しないように全力を傾けるクオンは、あっという間にキョーコに風呂場へ連れ込まれた。

 今日も二人は通常運行である。



 § § §



 ハリウッドで大スターとなることを夢見る若き青少年たち。彼らが真に恐怖のどん底に叩き落とされ、クオンが黒猫から大魔王に昇進する事件が起きるのはまだ先の話である。

 しかし、既にある意味恐怖のどん底に叩き落とされた人物は存在している。

 4年前、当時クオンが6歳であったときうっかりサタンの片鱗を知ってしまった名監督、オリバー・ワイダはこう語った。

「あいつはホラ、親がすげーから6歳児のあいつもあんななだけで、うん、大丈夫。常識の範囲内だ。流石クーとジュリエナの息子だ。そうだよな? あいつらの子供だから“ああ”なだけだよな!?」

 彼が年取ってからできた一人息子も当時クオンと同い年だったゆえか。誰しも自分の子の中身まで“そう”だとは思いたくないはずだ。

 彼がマスメディアの取材でやたらとクーの息子を強調してしまったのも仕方のないことだろう。



 “天使の存在証明(Arguments for the Existence of Angel)”

 それはハリウッドの歴史に永遠に名を刻み込んだ伝説の映画。

 この映画を語るとき、一人の天才子役の存在を欠くことはできない。

 その子役が数年後、修業の旅に出ると言ってハリウッドから消えたとき、多くの青少年が知らず知らずのうちに安堵の涙を零し、彼の役者についてこう語った。

「クオン・ヒズリ、まじ怖・・・
 いえ、彼は素晴らしい役者です!!」(;´Д`)ゞビシッ

 ―――・・・と。

 しかしさらに数年後、ハリウッドデビューした敦賀蓮の正体に阿鼻叫喚、恐怖のるつぼに再びたたき込まれるのだが・・・それはまだ先の話である。


 敦賀蓮の芸名を名乗るクオン・ヒズリは相変わらず首をかしげる。

「なんでみんなこんなに怖がるんだろう?」




敢えて言うなら火の粉を払っただけ(終)


戻る 目次

おまけ ハリウッド帰還編

「敦賀連? ふーん、調子に乗らないように挨拶しておくか」

――間――

「クオン・ヒズリ、だと・・・?」
「に、逃げろーー!! 全員退避ーーーーー!!!」


大魔王の恐怖は若人たちに消えない傷を残したようです。


●怖がられているけど、ボス的扱いだけど、クオン君には仲のいい友達もいるよ!
●彼を守る不思議現象は純粋な体術(護身術の域を遥かに超えた暗殺術)だよ!
●クオン君は悪魔じゃなくて神様に守られているんだよ! 神の寵児だからね!
●邪悪な演技が板につきすぎてるだけで、本当に何もしてないよ?

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

どっとはらい
関連記事
web拍手 by FC2

comment

Secret

※サイト案内※
●当サイトにはスキビの考察および二次創作文が展示されています。それに伴い、展示物には性描写・暴力表現を含まれるものがあります。
●取り扱いカップリングは蓮×キョーコ、傾向は「両片想い」「ハッピーエンド」です。
●また、管理人は考察上、あるいは二次創作文中の設定上、登場人物に対し批判的、否定的な扱いをする場合があります。
●作中のあらゆる事項はフィクションであり、現実に即さないものが多く含まれます。
※性描写・暴力表現を含む作品は年齢制限を設けていますので、高校生含む18歳未満の方は閲覧しないでください。
最新記事
カテゴリ
絵 (1)
最新コメント
検索フォーム
カウンター
管理人
Author:常葉(トキワ)

どうぞごゆるりとお楽しみ下さいませ。
度々細かな変更はありますが、温かく見守って頂けると幸いです。

バナーとか作ってみたり。
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。