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羽を無くした妖精の物語-Prologue-

2012.11.24.16:41

注意:この物語はクオン少年がリックの事故を契機に役者への道を自ら断ち切った、というパラレル設定です。

 突然頭上から何かが降ってきたとき反応の選択肢は、躱すかあるいは弾き飛ばすかであるはずだった。

 それが何故、俺はつかみ取ってしまったのだろう。

 ほんの少し足を引いてそのまま立ち去れば、あるいはこんな想いに囚われずにすんだのに・・・。


 その日は初めて村雨と昼食を取っていた。彼があまりにも美味しそうに食事をするものだから、俺も釣られて少しばかり食べ過ぎてしまい、腹ごなしに社長室まで階段で移動することにする。

 そうして階段の目の前にまで進んだとき、その碧い碧い輝きは落ちてきた。まるで、俺の手に吸い込まれるように。

「! ・・・この石はっ」

 俺は“それ”の降ってきた頭上を見上げた。

「・・・コーーーーーーーーーーン!!」

 叫び声をあげた少女と目が合う。
 彼女の目が見開かれ、同じ音を繰り返す動きがいやにハッキリと見えた。

「・・・――――コーン?」

「・・・キョーコ、ちゃん?」



 こんな、こんな石さえなければ・・・俺たちは互いに気がつくこともなく、互いの日常へと戻れたかもしれないのに。

 そんな後悔に打ちのめされるのは、まだ先の話ではあるけれど。


0話:羽などいっそ、望まないように


『いい加減、あいつらに会ってやったらどうだ?』

『黙りか・・・。まぁいい。
 それなら息抜きに日本へ来ないか? お前は働き過ぎだ。ああ、安心しろ。休暇に来いとは言わねーよ。お前、働き続けてないと死にそうだしな』

『なに、簡単なバイトだよ』

 俺はしばしの間、通話を終えた携帯電話を見つめた。

 日本・・・何年ぶりだろうか。あの平和で豊かな国は、今の自分とはとんと縁のない場所だ。

 § § §

「そこ、もっと脇を締めて。力みすぎだ。・・・そう、その動作を繰り返し、淀みなく出来るようになるまで繰り返して」
「はい!」

 中々精巧に作られたモデルガンを手に、俺はガン・アクションを指導していた。村雨 泰来と言う勝ち気な顔立ちのこの男は、俺とそう年齢は変わらないにもかかわらず意外にも素直に俺の指導を受け入れている。

 あの人を・・・クー・ヒズリを師と仰ぐ彼に最初は複雑な心境であったが、意欲的な彼に俺の指導にも徐々に熱が入った。

 それから幾ばくか。当然求めれば幾らでも要求はあるが、ひとまず形になったガン・アクションに一つ頷き、水分補給のため休憩を入れることにする。びっしょりとまでは行かないが、村雨のTシャツは4割ほど色が変わっていた。
 今は抜き撃ち動作だけだが、走り回ったり地面を転がりながらのガン・アクションを覚えるには更に時間がかかる。集中力の回復にもちょうど良いだろう。
 撮影のスケジュールを考えると時間的には余裕がある。しかしハリウッドを目指すと豪語する村雨のためを思うなら、ここでみっちりとガン・アクションを仕込んでやった方がいいはずだ。

 それから10分ほど、さてそろそろ再開しようかというとき、一気飲みしそうな勢いでコーラを飲んでいた村雨がボトルから口を離した。

「久遠さん、久遠さんは本物の銃を扱ったことがあるんですか?」

「うん? そりゃあるさ。経験もないのに呼ばれないよ。実戦経験はここ数年しかないけどね」

 実戦経験の言葉に、だろうか。村雨が目を輝かせた。
 それにどう反応すればいいのか・・・俺には分かりかねる。彼がどんな想像を巡らせているのかは知らないが、俺の言う銃の実戦経験など精々犯罪者との小規模な撃ち合いくらいのものだ。彼が想像しているのであろうハリウッド映画に出てくるような爆発だの秘密兵器だのはない。

「じゃ、じゃあ、その傷もその時に!?」

 村雨の言う“その傷”が俺の左顔面・・・額から目尻を通り、頬を抉る痕を指しているのは分かった。今ではもう随分と薄れてしまったが。

「おいおい、銃でこの傷はつかないぞ? 銃創ってのはこういうの」
「うおお!?」

 長袖を捲って見せたのは村雨の反応がいちいち無邪気で面白かったのもある。そして多分俺は、今まさに役者として生きる彼にこの体を・・・二度と舞台に戻ることの出来ないこの体を見せることで、なにがしかの踏ん切りを付けたかったのだ。

「特殊メイク・・・なわけないですよね、すげぇ・・・。
 あれ、てかこれ刺青!? かっけ~~!!」

 肘の付け根あたりにある銃創を見せたから、二の腕に入れた刺青が見えたらしい。日本人の村雨が顔にでかい傷を走らせた俺にびびらなかった理由がその反応からよく分かる。
 どうやら彼はハリウッド映画的な妄想と言うよりも、戦いの世界やマフィア・・・日本で言えばヤクザ者のような世界に憧れがあるらしい。
 刺青は国が変われば特に珍しいものでもないのだが・・・。

「いいなぁ・・・俺この仕事好きだけど、刺青なんて入れられないからなぁ」

 俺は僅かに苦笑した。そうだろう。だから俺は刺青を入れたんだ。役者への道を絶つために。

「あの、他の場所にもあるんですか? 良かったら見せて貰っても・・・?」
「構わないよ」

 役者である彼に、役者への道を絶つための戒めを見せる。
 そんなことが出来る程度には俺も大人になったのかもしれない。

 左右の二の腕とそれを繋げるように刻まれた肩と首裏の刺青を見せるために俺は着ていたシャツを脱いだ。

 村雨が興奮した様子で俺の上半身裸の体を眺め回すのが面白くて俺は久しぶりに大笑いした。



こんな感じで進んでいきます。
幸せになる資格がない・・・と言っていた敦賀君の最終形態って(キョーコに出会うまでは)役者をやめることではあるまいか。という考えから生まれた物語です。
“面倒くさい男”敦賀氏を更に更に面倒くさくしたクオン君の物語。

勧善懲悪、すっきりさっぱりの結末ではありませんが、面倒くさい男がキョーコちゃんと出会い幸せへの道を歩み出すまでの道程をお楽しみいただければ幸いです。
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Author:常葉(トキワ)

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