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羽を無くした妖精の物語-1-

2012.12.01.09:32

注意:この物語はクオン少年がリックの事故を契機に役者への道を自ら断ち切った、というパラレル設定です。


1話:羽化する前の君を見守る


「そう、それじゃあCMのオーディション二人とも合格したんだ」
「うん!」

 ニコニコと笑う彼女――・・・キョーコちゃんに、俺は祝辞を述べた。


 日本へ来て7日目の昼下がり、久しく使っていなかった日本語にも慣れてきた頃、俺はキョーコちゃんと再会した。

 彼女が芸能界に入った動機はすでに聞いている。まず始めに感じたのは怒り、しかしそれは直ぐに共感へと変わった。

 俺と同じだと思った。
 世界が壊れて、生きる術を失って、だから無理矢理生きる理由をでっち上げる。

 復讐なんてふざけた動機だが、贖罪のために慈善事業チームを立ち上げた自分も大概だ。ただ純粋に“それそのもの”のために生きている人間の方が少ないのだろう。

 金のため、生きるため、復讐のため・・・贖罪のため。結構じゃないか。

「養成所での勉強もまだまだ途中だけど・・・私精一杯お仕事してくる!」

 そう、自分を納得させたのに。偶然にも二度目の再開を果たした今日、にこやかに笑う君が俺を苛立たせる。

「ご機嫌だね。まぁ、それもそうか・・・今回のデビューでまた一歩目的に近づいたわけだし」
「え?」
「復讐・・・そのための芸能活動だろう?」

 諦めにも似た心地で俺は告げた。

「えええぇぇ~~~~!!???」

 ところが彼女は「違います違います」と激しい調子で否定した。
 復讐のために入った芸能界。けれどそこで自分自身を作っているのだと、誰かの喜ぶことではなく自分のしたいことをしているのだと。キョーコちゃんが懸命に弁解する。

 彼女の芸能界入りの動機を知って以来、胸にわだかまっていたタールのように黒いヘドロ。それがスゥッと消えていくのが分かった。

 俺と同じだと思っていたのに。

 置いて行かれたような喪失感の中、それでも久しぶりに心から穏やかな感覚が俺を満たす。その後はいつも以上に話が弾んだ。

「撮影で高校生の制服を着られるのよ! とっても楽しみだわぁ~」

 夢見るように彼女が言った。俺はかけるべき言葉を見つけられない。チームのメンバーに言われて大学には在籍しているけど、俺もハイスクールには通わなかったし。

「きっと似合うと思うよ」

 俺は当たり障りのない言葉で彼女を見守るに留めた。



 俺とキョーコちゃんはそれからも度々顔を合わせた。再会も二度目の遭遇も偶然だったが、その後は待ち合わせをしていた。
 新米タレントの彼女とボスの依頼のままアクション指導に赴く俺である。偶然がいつまでも続くとは思えず、お互いの連絡先を交換したのは自然な流れだった。

 俺たちは付かず離れずの関係で、やはりあの夏の頃のようにはいかない。そもそも自分自身それを望んでいなかった。

 メールで待ち合わせ場所と日時を決めて、一緒に食事をして彼女の仕事や学校での話を聞く。
 彼女も熱心に俺の話を聞こうとしてくれたが、あまり話せることは多くなかった。結局俺は現在ボスの下で行っている仕事の話をした。


 そんな日々を“日常”と呼んでも違和感がなくなった頃。

「制服、本当に似合ってるよ」

“本物”の高校の制服姿でキョーコちゃんは俺の前にいた。

「コーンのおかげよ。ありがとう!」
「俺はなにもしてないよ?」

 本当に、何のことだか分からず首をかしげる。
 キュララのCM撮影後、ボスから高校の話を持ちかけられたのは聞いた。そして高校編入試験のために彼女が猛勉強したのも知っている。・・・やっぱり俺はなにもしていない。

「ううん。コーン、言ったよね。私を見ているとまるで全教科100点を取らないといけないみたいだって。
そう言われて気付いたの。自分のために勉強しているはずが、いつの間にあの人に縛られていたって・・・」

 あの時のことかと合点がいった。あまりにも必死で勉強する彼女に幼い日のキョーコちゃんを――そしてがむしゃらに演技に打ち込んでいた頃の自分を――思いだし、思わず言ってしまったのだっけ。

「役に立てたなら良かったよ」

 俺は彼女の華やいだ笑みを直視できないままだった。



 7月も半ばにさしかかったある日。俺はチームのメンバーと裏で結託していたボスによって本職の休業を更に伸ばされていた。

 どうにもボスに依頼された仕事を熱心にこなしすぎたようだ。
 骨休めになっていないと判断されたらしい。本業も書類仕事をそれなりの量仕上げていたからボスと結託しているメンバーたちにもバレバレだった訳だ。

 “大学の課題もやっているんだろう? デスクワークはせめて今の半分にしろ”インターネット回線を通じて厳重に心配(おかしな表現だが間違ってはいない)されては言うことを聞かないわけにはいかない。チーム最年長でもある彼とは実の親以上に年が離れているし、チームを立ち上げてから今の今まで世話になりっぱなしなのだ。

 ここは諦めてバカンスを楽しむスタンスを見せた方がいいのかも知れない。そうして十分に休んだことをアピールするか。
 そこまで考えて現実的ではないと首を振った。ボスを欺ける自信はあまりないしチームメンバーも含めて騙すような真似はしたくない。そもそもバカンスを形だけでも楽しむ自分が想像できない。

 結局俺はボスの“バイト”と大学の課題、そして制限されたぎりぎりの書類仕事をして過ごしていた。余暇は本職復帰後を想定した企画書作り、支援先や事業の情報整理や調査をしてやり過ごした。


 そんな頃、変化は一本の電話から始まった。

『あ! あの、コーン・・・?』
「キョーコちゃん? どうしたの?」

 俺はスタジオを出ると人気のない場所を探しながら、切らずに通話を続けた。
 キョーコちゃんからの電話は初めてのことだ。彼女は携帯電話が事務所支給のものであることを気にしており、待ち合わせ場所を決めるのはいつもメールで会話は対面が基本だったからだ。

『え、えっと・・・実は、相談したいことがあって・・・』
「うん、時間はあるから大丈夫だよ」

 今俺はテレビ局にいる。仕事ではなく、熱心な教え子である村雨にお願いされて彼の撮影を見学にきていたのだが、キョーコちゃんからきた電話に急を要するものだと判断を下してさっさと帰ることにした。
問題のアクションシーンは既に終わっており村雨は監督の予想を超えたレベルのガン・アクションを披露したのだろう。べた褒めにされている。
 それだけ見届ければ十分なはずだ。帰り際、親指を立ててやると子供のような笑顔で立て返され、なぜか懐かしい気持ちになった。

『あの、あのね・・・私』

 電話口でスゥっと息をのむ気配を感じた。俺は足早に歩き、あたりに人気がないのを確認しつつ携帯電話を耳から離した。

『今不破尚のプロモに出てて悪魔を憎んでる天使の役なんだけどムカつくアイツの前でどうしても天使になれないのーーーーーっ!! 助けてコーーン!!』

 少しの間をおいて、彼女が小さく呟くのが聞こえた。

『・・・っあ! え、えっと・・・・・・それで、思わず電話しちゃったの・・・』

 我に返ったようだ。しょんぼりした様子が見なくても分かる声に俺は思案する。自分にも覚えがあった。制御できない感情と、それに振り回され思い通りにならない自分に対する不安・苛立ち・焦燥・自責の念。
 今、彼女がそんな状況下にいるというのなら・・・助けたい。そう思う。たとえスタッフの視点ではなく――・・・役者として生きたことのある者として再び、その世界に触れることになるのだとしても・・・。

 俺は一呼吸おいてから声を発した。

「キョーコちゃん、思い出して? 君は俺にお芝居が楽しいと言っていたね」

『うん・・・お芝居を通して、自分を作っていけるって、思ったの・・・』

 思ったのに・・・
 泣きそうな彼女の声が心を揺さぶるのを俺は黙殺した。

「それなら想像できるはずだ。そしてその想像で心を満たせるはずだ。
 想像してみて・・・?
 天使は君で、悪魔は俺。二人は相容れない関係だから友達ではいられないんだ」

『そんなのやだ!!』

 間髪入れずに悲鳴のような声を・・・いや、まさしく悲鳴を上げてキョーコちゃんが訴えた。

「君の親友・・・悪魔に恋をした彼女もそうして悲鳴をあげていたんじゃないかな。“君”と“彼女”の仲なら、君はそんな彼女の思いも知っているはずだね?
 君はそれでも・・・そんな親友の望みを退けてでも、彼女を守りたいんだ」

 電話越しに頷く気配がしたのを確認し、続ける。

「それでも君は彼女を守りたい・・・。そのためにはどうすればいい?」
『・・・アイツを、殺す・・・』
「でもそうすると“彼女”は君をどう思うんだろうね?」

 電話の向こうから悲哀の声が響き渡る。“モー子さ~~ん!!”と、よく聞くキョーコの友人の名前が出てきたことで俺は肩の力を抜いた。

『モー子さんに、・・・グスッ・・・きら、嫌われるのは、いや!! でも、死んじゃうのはもっとやだあぁぁああああ!!! でも嫌われたくないぃぃいい!!!』

 嘆く彼女に対し強く切り出す。

「役の尻尾は・・・掴んだね?
 君が演技を出来なかったのは不破のせいじゃない。君が役を掴んでいなかったからだ。
 だから、もう大丈夫。行っておいで・・・」

 半分本当で、半分嘘の言葉。けれどこう言い切った方がいいだろうと考えた。彼女の思い込みの強さは弱点であると同時に、周囲が気にかけてやれば武器にもなる。

 キョーコちゃんが息をのみ、そして勢いよく返事をするのが聞こえた。感謝の言葉と共に通話が切られようとしたところで、俺はふと思いつき待ったをかける。

「ねぇ、キョーコちゃん今どこで撮影しているの?」

 “不破松太郎”――その男の顔を見てみたいと思った。



出会いが違えば構築される人間関係も変わるものですよね。
村雨君とクオン君は仲良くやれているようです。

そして面倒くさい内面が少しずつ見えてきたクオン君。
次回はキョーコ視点を予定しております。

楽しんでいただければ幸いです。
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Author:常葉(トキワ)

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