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完璧な人生の歩み方~夢を見て夢見たこと(4)~

2011.04.21.05:53

(改)
注意:この記事には、不破家、及び旅館従業員、キョーコ母(冴菜)に対する否定的な内容が含まれます。





日本のお祭りや縁日についてはそれほど詳しくはない。前世に日本人の基礎知識として勉強したり、射的の銃について調べた時に覚えとどめていた程度だ。

キョーコちゃんもあまりこういった催しに参加したことは無いようで、遠く響いてくる笛の音や音楽に耳を傾けることすら共に楽しめた。キョーコは、あれは祭囃子というのだと教えてくれた。

「いつも旅館の中で聞いていたから、一度こうして縁日を巡りながら聞いてみたかったの」

そうか。彼女は小学校に入学する直前まで不破家に預けられていたんだ。彼女を縁日に連れて来てくれる大人はいなかったのだろう。

「こうしてふわふわの綿あめを食べるのも夢だったの。旅館のお客さんがね、お土産にって持ってきて下さったことがあるんだけど、綿あめって時間が経つとしぼんでしまうでしょう? 嬉しかったけど、少し残念だったから」

本当に嬉しそうに綿あめを食む彼女に俺も嬉しくなる。
それだけでなく、デートとしても縁日というのはとても素晴らしいシチュエーションだ。

人込みを歩くからはぐれないように堂々と手を繋げるし、射的でいいところを見せることもできる。更には食べ物を買う度に半分こしたり――

「キョーコちゃん、ほっぺたに雲の欠片が付いてるよ?」

などと言いつつ彼女の頬をペロペロひと舐めすることもできる。

「く、クオンっ」
「なあに?」

チュウじゃないからセーフでしょ?

「クオンの破廉恥…」

ふーん。そう。またそんなこと言うんだ。そんな可愛い顔で言っちゃうんだ?

「じゃあ、本当に破廉恥なこと――「おい、キョーコ!!」

俺の声は突然現れた“ヤツ”の声にかき消された。イラッとしながら声の方に目を向ける。
そこにはちょっと目鼻立ちの整った子供がいた。

黒髪でまだ幼いが俺には分かる。
子供ながらにこの傲慢で高圧的な態度。

そいつは前世で幾度となく煮え湯を飲まされた相手、不破 尚…いや、不破 松太郎だった。

前世の子供時代、不破はキョーコちゃんの王子様だった。大人になっても彼女の心には常にヤツがいて、俺の存在が取るに足らないものなのだと突きつけられた。
彼女を傷つけたくせに、彼女を裏切ったくせに、彼女を慰めることすら出来ないくせにっ…!

俺が前世の恨みをふつふつと募らせていた時だ。
不破がこちらに向けてキッと睨んできた。
だが子供の眼力など俺に効くはずもない。俺は10歳の心が望むまま、ストレートに敵意を込めて睨み返す。

「う、ぁ」

不破は素早く顔を背けた。まるで危機を察知した野生動物のようだ。
若干青ざめながらもヤツはその場を動こうとはしなかった。
逃げないのは男のプライドか、それともキョーコがいるからか。

相手が6歳児だろうと関係ない。“男”としてキョーコの関心を買う者、買おうとする者。誰であろうと俺の敵だ!!

不破が――俺と視線を合わさないようにだろう――慎重に背けた顔を戻しキョーコを睨んだ。
俺には怯えたくせに、やはりと言うか何と言うか、キョーコに対しては何の根拠があるのか偉そうだ。
減るから見るな。そう俺が声を発するより早くヤツは言った。

「何やってんだよキョーコのくせに! 誰だよそいつ!? 何で外人なんかと歩いてんだっ! 俺が誘ってやったの拒否ったクセになんで他の奴と来んだよ!!?」

偉そうに言った言葉は懇願の裏返しなのだろう。不破がこっちに来いとでも言うように手を差し出す。俺がキョーコちゃんの隣にいるからビビって近づけないのだ。
その態度は前世の成長した不破よりも不愉快だった。

ヤツを牽制しながらも、ずっと横目に見ていたキョーコちゃんの視線がアイツへと向かった。

嫌だ、やめてくれっ……!

勝手に拳は握られ震えている。不破がこちらに近づかないなら、彼女が俺の隣から離れるのは、彼女の意志なのだ。
そんなことになったら自分が何を仕出かすかわからない。そう思考した時、全てを壊す言葉が聞こえた。

一言。

「ウザぁ」

俺は思わず、勢いよく隣のキョーコを返り見る。
そこには、興味なさげに既にヤツから視線を外し、袋に入ったぬいぐるみの位置を直しているキョーコがいて。

その様子に、余りにも彼女に似つかわしくなかった今の言葉が彼女のもので、それはヤツに向けられたものだと知った。

俺の視線に気がついたキョーコの意識はすぐに俺へと戻ってきた。
視界の端でヤツは変わらずキャンキャン吠えている。しかし不破のツレらしき子供が数人こちらに近づくと、格好悪いところを見られたくないのだろう。俺に気合の一睨みを残して引いた。

外野が居なくなったところで、俺はこちらを向いて、口をパクパクさせながら、言いたい事が言葉にならないような、そんな状態の彼女に声をかけた。

「もう、帰ろうか。他に食べたいもの、ない?」

もう、夕暮れ時が迫っている。

「りんご飴」

ぽつりと零した彼女が俺をチラ、と見上げた。
その瞳の色が、雄弁に彼女の気持ちを語る。

『嫌いにならないで』

俺は笑って手を引いた。



りんご飴も半分こで食べながら、縁日からの帰り道、彼女の話を聞いた。

「あの子なの、前に話したモテる子って。不破松太郎君って言って、私が小学校に入るまでお世話になってた旅館の子なの。私が構わないでって言っても、しつこくて…」

彼女が何に不安になっているのか分かった。彼女が不破に向けた一言に俺が思わず勢いよく振り返ってしまったからだ。

「だからね、誰にでも、あんな態度を取っている訳じゃないのよ? クオン、私のことイヤな子だと、思う…?」

不安に揺れる瞳が、俺のことを好きだと言っていて、彼女と俺の『好き』の違いに切なくなった。

「思わないよ」

でも、今はそんな自分よりも、泣きそうな彼女だ。大丈夫、と言うように彼女の頭を撫でてやる。

「君が優しいのも、頑張り屋なのも、我慢強いのも、俺は知ってる。だから、キョーコがさっきみたいな態度を取っても、それは相手がそうされるに十分すぎることをしたのだと俺は思うよ。だから、大丈夫」

キョーコは森の中の話で、自分のことを構ってくるいじめの原因となっている少年の名を一度も出さなかった。
それは彼を庇っているからではないのか、と一縷の不安があったのだがそれも漸く払拭された。
“今”のキョーコにとって、不破は名前を呼ぶにも値しない相手だったのだ。

家に着けばキョーコと一緒に花火を見て、また一緒の布団で眠るのだろう。
一つの飴を二人で分け合い、手をつないで帰る道。

まさか、既に夢がかなっていたなんて。

俺は縁日で遭遇した傲慢な子供を思い出し、内心でひとりごつ。

そして。本日叶っていたことが発覚した夢は、隣を歩く可愛いキョーコには一生言えないものの一つだなぁ、と思った。



俺の夢、それが――

きゃんきゃん吠える不破に、興味の一欠けらも示さないキョーコを見ることだったなんて。

京都にいけない憂さ晴らしに、『奴の存在を取るに足らないものとして扱うキョーコ、自分の存在を取るに足らないものとして扱われる不破』を何度も何度も何度も何度も何度も…脳内再生してきたけれど――

「やっぱり現実のキョーコが一番だね!!」

爽やかに笑ったはずなのに、何故かキョーコが怯えた。






まだまだまだまだ、たくさんある。

夢を見て夢見た夢が。夢に見るほど夢見た夢が。

白い夢も、黒い夢も、君と一緒なら何だって叶う気がするんだ。

だから早く俺を好きになってね?

でないと、折角の和装なのに、いつまでたっても言えないじゃないか。

お代官様ごっこをさせてなんて。




夢を見て夢見たこと/終


目次

当然のようにもっと真っ黒な夢もありますが、クオンは多分根が良い子なのでそこまでえぐくないと思われます。
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Author:常葉(トキワ)

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度々細かな変更はありますが、温かく見守って頂けると幸いです。

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