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幸せの探し方⑥

2011.04.23.13:57

6話(R)迷子青年到着


 車中に漂うのは会話ではなく沈黙だ。

 (俺は何をやっているんだ。自分の身勝手な幸福追求のために、嫌がる彼女を連れだしてしまった・・・・)

 そのうえ、連れ出して『しまった』などと、後悔風の語尾で言うのは、こうして彼女を確保して、逃げ道をふさいでようやく得られるなけなしの余裕で思えるものでしかない。

 (結局はこれが俺と言う人間の本性なんだ。)

 獲物に逃げられると狩猟本能全開になる獣のように、理性をどこかへやってしまう生き物であり、誰よりも彼女にとって危険な男。それが己の本性なのだ。

 同じ意識を飛ばすのでも、傍らの少女の平和的なメルヘン思考とは違いすぎている。
 
 なぜなら必ず実害が生じるからだ。それは誰にか。

 (君に、なんだよ? ・・・・最上さん。)

 信号待ちの僅かな間にも彼女を見つめ、その少女が外を向いているのをいいことに無遠慮な視線を送った。

 彼女の体はどこか強張っているように見えた。

 (こんなに、大切にしたいと思っているのに、なぜ怯えさせてしまうんだろうね。)

 いつだって、包み込んで守ってあげたい、そんな風に感じる自分は虚像ではないはずなのに。

 車中、暫くたっても怯えた様子の彼女から無理やり意識をひきはがし、車が流れ出すのに合わせ、また自省の森へと分け入って行く。

 運転と思考に集中したおかげか、逃げ回られたことへの怒りも落ち着いてきた。

 しかしその一方で、マンションの駐車場に着いてもなお落ち着かない自身の中にあるもう一つの感覚に気付く。

 逃げる彼女を追いかけて、追い詰めて、捕まえることへの――――…醒めない興奮。

 (俺は変質者かっ!!)

 そう思うのに、本能的で、ゆえに制御できない興奮に『雄』の自分が顔を出している。いや、或いはもっとずっと以前からそれは顔をのぞかせてはいやしなかっただろうか。

 にも拘らず、彼女を車という簡易の檻に押し込め、次は更に逃げられない完全なる自身のテリトリーに連れ込もうとしている。

 「降りて」

 出てきてすぐ、彼女の腕を取る。逃げられないようにガッチリと握りこむ。

 それは本能に操られたような無意識の行動。

 (流石に、不味いだろ・・・・。)

 思考と行動が上手く重なりきらずにいる自分に焦りを覚える。

 (この深い物思いによる自省を忘れたとき、自分は一体どうするんだ? 何をしてしまうんだ? 代わりなどきく筈のないこの娘に・・・・。)

 今すぐ車に戻り、彼女を返すべきだと思う。

 そのくせそれに対する反駁は、彼女を返せと言う前から自身の中に出来上がっていた。

 (こんな夜遅くには、タクシーでだって彼女を返せない。それなら俺が送っていくしかないじゃないか。でも・・・・・俺が車の中で自制を失い彼女を襲ってしまったら? それなら彼女だって車内より室内で襲われた方がましに決まってる。)

 滅茶苦茶な論法を嘲笑している自分がいるのに、それでもそんな身勝手極まりないロジックが己の中で覆せない法則として成り立っていた。

 (結局のところ、最上さんを家に返せなんていう声は、俺のちっぽけな良心のご機嫌をとる為の飾りでしかないわけだ・・・。)

 今だってこの手は、彼女に逃げられまいと掴んだ腕を放す気など微塵もないのだ。

 これが愛しい女性にする仕打ちかと思う。

 (あるいは、それでもこの腕を離せない弱さこそが、・・・・俺の罪か。)

 エレベーターは地下で止まっていた。

 その機械仕掛けの箱に近づけば近づくほどに、お飾りでしかなかった良心の声も遠のいていくような気がした。

 彼女の腕を掴んだまま乗り込み、そこでまた、やってしまった、と思った。



 3日前のあの日からこんなことばかりだ。

 (天啓を受けたように悟ってなお、この3日間うだうだと悩んださ。)

 (自分には幸せになる資格などないと考えたこの脳みそを使って、彼女を望んでしまったがために。)

 自身にとってこの世の幸福の塊のような存在である彼女を、だ。

 どれだけ己を恥じただろう。

 それでも尽きない彼女への渇望に、とうとう認めざるを得なかった。

 荒れだしてからは祈ることもなくなった神に懺悔した。

 (俺は彼女を恋うたときには、既に自分を許し始めていたんだ・・・・。)

 どんなに自身を責めつくした気になって、それでもまだ足りないと苦しんでも、それすら自身を許す儀式にすぎなかったのだ。

 (俺の本性というのは・・・・そういう卑怯で弱い心。)

 その上プライドが高いためにそんな自分を認めることもできない。

 いいや、正直なところ彼女を求めた今だって認めたくはない。

 一生そんな物思いに捕らわれたまま、答えを出したくはなかった。

 (だが、俺にそんな時間はないのもまた事実・・・・・。)

 一瞬で決断を下すべき時に3日3晩悩んだ。いつ、これから先にありうる幸福全てを失うことになるとも知れないこの状況下において。


 そう、だから、しまった、と思った。

 3日3晩自分の不甲斐なさを恥じながら、同時に彼女へ傾ける自らの思いが如何につもり積って重なり堆積していたのかを自覚してしまっていたから。

 想いの一つも伝えていない10代の少女相手に随分と理不尽な嫉妬をしてきた。

 自身の思いを自覚して、制御不能の嫉妬や欲望、逆に、それらを凌駕してしまうほどの制御や献身の源がわかり、納得もした。

 だからこそ、彼女の体に触れたまま、運転中のように四肢が塞がれているわけでもなく、こんな狭い空間で過ごそうなど、・・・自分が馬鹿だとしか思えなかった。

 無理やり連れ出している今だって、焦りと本能に振り回されているだけで決して彼女を傷つける気なんてないのに。

 (絶対に、理性を手放すな。舌を噛み切ろうと・・・・・絶対に彼女を傷つけるなっ!!)

 そう、覚悟とともに閉じるエレベーターのドアを見ていたはずなのに、いや、その覚悟ゆえに、拘束のためだけに掴んだ細い腕を通じて少女の存在が急激に意識された。

 (彼女は今、どんな顔をしているんだ?)

 一度気になりだせばこの緊張状態で我慢など出来るはずもなく。様子を、そう、様子を少し見るだけ。そう思い、チラリと隣に佇む少女を盗み見る――――だけのはずだった。


 ばちっ!!


 音がするかと思った。

 それくらいガッチリと自分と彼女の視線は絡み合った。

 彼女がよく分からない悲鳴を上げる。その瞳には自分と同じく動揺が浮かんだはずであるのに、気づけば少女はそのまま俺の顔をまっすぐにじっと見つめていた。

 今までにない少女の反応に戸惑うのも束の間。

 瞬時・・・彼女の顔が赤く染まった。

 ハッとした。

 慌てて空いている方の手で、自身の顔を覆う。

 自分が欲に濡れた、男の顔をしている自覚があったから。

 怯えられる、そう、思った。

 思ったのに、彼女は。

(ああ、なんて可愛い顔をするんだ・・・・。)

 赤く染まった顔は嫌悪や恐怖に歪まなかった。

 その表情は、むしろ・・・―――――

 (やめてくれ! 頭がおかしくなりそうだ・・・・っ!!)

 膨らむ期待がためにそう思うのとは逆。体は先ほどまでの興奮が落ち着いていく。

 それは、穏やかな幸福感。

 マネージャーの彼が言うところの些細な幸せ。

 (でも、俺にとっては、世界中から集めてきたような幸せの塊なんだ。)

 学習はどうしたと頭の中で声がする。

 分かっている。これは自分が自分に見せるまやかしのようなもの。

 期待した分だけ、あるいはそれ以上に落胆するのだ。

 (それでも、今はこの幸福に浸りたい。)

 彼女の目に、自分が男として、それも、『その他大勢』とは違う風に映っているのかもしれないと。

 急激に育っていく。自覚していく。なぜ、彼女を連れだしてしまったのかを。

 (そうだ、俺はただ、伝えたかったんだ。溢れだしてしまった、この想いを。)



 伝えても、いいのだろうか。

 もはや、深い自己嫌悪の底に沈むこともなく、乞うてもいいのだろうか。

 世界は、それを許さないと、そう考えていた。

 許していなかったのは俺だった。許しを請うていたのも俺だった。許したのも俺だった。

 けれど、そんな俺を認めさせたのは・・・・・・君だった。


 だから、俺に挑戦者となる権利を与えてほしい。

 今の君は、きっと、俺の言葉を嘘だなんて言わないだろう?

 君を『女』にしたのが誰であろうと、そう、例え、不破であろうと。

 俺は必ず、君を振り向かせるから。



 エレベーターが

 ちん

 と軽やかな音を立て、目的階への到着を知らせる。



 腕は放した。

 君は、来てくれるだろうか、俺のテリトリーへ。

 君は、聞いてくれるだろうか、俺の話を。


 やっと、長くて永い迷路から、君が出てもいいのだと教えてくれた。



 だから、伝えさせて欲しい。

 自分でも驚くほどに降り積もった、君への想いを。






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2012/1/8  リメイク


≪あんけーと≫
  
というわけで、お二人が自覚したところで終~~了。
エピローグでは

1.その日の告白の模様
2.くっついてからの模様
3.『幸せの探し方』関連のショートショート(お説教や追いかけっこの模様など)

どれがいいでしょうか?

答えは、・・・・皆さんのコメントにかかっています!
サーセン(^p^)
プロットの段階ですでに、この物語は告白まで行かないor告白の返事まで行かない事が決まっておりまして。そのうえ、エピローグ部分には鬱鬱しいことしか書かれておらず、鬱じゃない部分と言えば、
『告白合戦、なんかソレっぽいイイこと書いておわり☆』
とメモしてあるのみ。フザケテいるのか自分よ。

プロットにはよくその時点の自分を殴ってやりたくなるようなことが書かれていますが。
そういう訳ですのでエピローグを大募集中です。

目次に姿があって本当に真っ白なのはコイツだけなんだぜ。
なにがしかの要望が集まり次第エピローグという名のおまけが書かれることになると思います。

幸せの探し方を最後まで読んで下さり(まだ最後じゃないけども)ありがとうございました!!

アンケートへのご協力、ありがとうございました!!


どっとはらい


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Author:常葉(トキワ)

どうぞごゆるりとお楽しみ下さいませ。
度々細かな変更はありますが、温かく見守って頂けると幸いです。

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