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再構築りれいしょん①

2011.04.23.17:59


2013年8月28日 大幅加筆。あと三人称よりに統一。

 その日、LMEプロダクション社長であるローリィ宝田はある施設に足を運んでいた。敷地内ではそこかしこから子供の声が聞こえ、宝田が足を止めた一階の渡り廊下からは前庭で走り回る10歳前後と思しき少年少女の姿も見える。小学校ではない。ここは児童養護施設。――宝田はこの施設に支援を行っていた。

 ローリィ宝田と言えば、彼を知るものの間では『ラブ・モンスター』、『世界中に配り歩けるほどの愛の持ち主』などと揶揄される人間だ。とは言え彼も全てに手を伸ばせるほど超人ではない。ゆえに宝田がこの施設を支援していたことも、そして今日この日に視察に足を運んだことも、全ては小さな偶然の積み重ねの結果であった。

 ――そしてこの日、彼女がその時間その場所に座っていたことも、全ては運命のいたずらだったのだ。

 同行していた施設の職員は急に足を止めた宝田に首を傾げた。

「宝田さん、どうかしましたか?」
「ん? いやなに、あの子のことがどうにも気になってな」

 宝田の視線の先には1人の少女がいた。痩せぎすではないが小さくほっそりとした体は今にも折れてしまいそうで、木を背もたれに木陰で本を読む姿が酷く儚い。

「彼女はここに来てどれくらいかね?」
「今月で半年になります」

 職員の返答に宝田は眉をひそめた。
この施設は特に複雑な事情を持つ子供達の受け入れ先であった。その分スタッフや子供達の心のケアは充実しているがそれでも不安定な状態が長く続く、ということも少なくない。しかし――・・・

(なぁんでだろうなあ?)

 宝田はガシガシと頭をかく。
 派手なもの、面白いもの、楽しいものは興味を引く。そして傷ついたもの、迷うもの、身動きの取れないものには手を貸したくなる。宝田はそういう人間だった。

 木陰の少女はこの施設に半年いてもなおああも儚く、そして宝田の勘は自分の元でならば少女の足を地に着かせることが出来ると主張する。
 宝田は迷わなかった。後ろに控えていた職員を振り返る。

「あの子と話がしたい。うちの子にならないか話し合う」

決断力もまた彼の特徴の一つであった。

――それでも、だ

「宝田さん、本気ですか!?」

 そうであるからこそ、宝田の人となりを知る施設職員――養護施設の園長は驚きを持った。今まで宝田がそのような申し出をしたことなど一度としてなかったからだ。

 ビクリッ

 少女が園長の驚き声に反応し、本から顔を上げ大人二人を見ていた。一瞬視界に入れ、すぐに視線を逸らした少女に宝田はニヤリと笑う。

 一瞬見えたのは生気の無い少女の顔。にもかかわらず宝田は確信したのだ。彼女はいずれ輝くような笑顔の花を咲かせると。


§ § §


 可愛らしいクッションが山と積まれた天蓋付きの大きなベッド、機能的でいながら芸術的なアンティーク調の勉強机、衣替えの必要などなさそうな巨大な洋服箪笥、沢山の絵本に児童書に小物にと並ぶ本棚、そしてそれらが一つの空間に収まっても全く狭くならない大きな部屋。
 大きな部屋に相応しい大きな窓からは小さな川の流れる森を模した庭が見えた。

 自室で通信教育の課題を進めていたキョーコはふと手を止めると窓の外を見た。川面に光が反射して妖精がダンスを舞っているようだ。

(妖精さん、か)

キョーコは義父、宝田と出会ってからこれまでのことを思い返した。



 ローリィ宝田に引き取られて二ヶ月。精神状態は何とか安定しつつある、とキョーコは自分で自分を分析する。

(なんと言っても宝田さんの格好のおかげよね)

 あの日、今では義父となった宝田と初めて会った初夏の午後。本を読んでいるところを宝田に話しかけられて、そしてそれが隣にいる園長にも『見えて、聞こえて』いることに酷く驚いた。

 キョーコは宝田を幻か幻覚だと思っていた。なんと言っても宝田はあの日、あの時、キョーコが読んでいた本『妖精の森』の妖精王様の挿絵と全く同じ格好をしていたのだから。

 オールバックにした黒髪も同じ。ダンディーなちょび髭も同じ。大きな背も同じ。優しそうな目元も同じ。
キョーコはすっかり宝田を妖精王様だと信じ込んだ。だから宝田にうちの子にならないか? と訊ねられたときキョーコは一も二もなく頷いた。彼に付いていけば人間のいない世界にいけると思ったのだ。――人間のいない世界に。

 キョーコは人が恐かった。恐くて、恐ろしくて、気持ち悪くて、近くに寄られるのも辛かった。

(でも――・・・)

キョーコは思う。宝田の家は、義父の家は、嫌いじゃないと。

 実際のところ宝田は人間で、宝田の連れてきてくれた家も妖精王様のお城のように豪勢ではあったが人間が沢山いる場所だった。

しかしお屋敷のメイドや執事達は極力キョーコをそっとしておいてくれたし、一方でキョーコが困っているとすっと、手を差し伸べて助けてくれた。

そして宝田は宝田で、人を恐れるキョーコが少しでも安心出来るようにいつも夢のある格好をしてくれるのだ。義父の様々な衣装を思い出してキョーコは自然と笑みを零し、次にため息を吐く。

(きっとあの日も施設の子供達を喜ばせるために妖精王様の服を着てたのよね)

 いい年の大人である宝田があのような装いをすることなど滅多なことではあるまいに、あの日以来かれは常に煌びやかな仮装姿だ。それはキョーコのために普段着にまで気を遣わせてしまっている、ということ。その事実がキョーコの胸に重くのし掛かった。

 屋敷のもの達は皆、宝田は以前からああだと言うがまさかそんなはずはない。きっとキョーコに負担をかけまいとそういうことにしてくれているのだ。

 うううぅぅ、とキョーコは唸った。

「やくに、たちたい、な」

 子供の自分が出来る事なんてたかが知れているかもしれない。それでもキョーコがそういう気持ちを持っていることを知って貰いたかった。

 けれど、お手伝いを申し出るために相手に話しかけることさえキョーコはできない。

 引き取られたばかりの頃など、メイドの1人に話しかけようとして緊張のあまり過呼吸を起こして逆に迷惑をかける始末だった。

 それでもここで過ごす内に、少しずつではあるけれど、進歩もしていた。

 お礼を目を見て言えること。

 相手の顔を見ながら話を聞けること。

 自分から挨拶をすること。

 未だ人との接触の際は心臓がどくどくと脈打ち、冷や汗がどっと流れてくる。それでも少しずつ、少しずつ慣れてきていた。


 そんな時、1人の男性がこの屋敷にやってきた。


§ § §


 クオン・ヒズリはその日、彼がボスと呼ぶ男――ローリィ宝田に日本へと誘われ、パスポートだけを手に家を出た。
 日本へ向かう道中、プライベート・ジェットの中クオンは宝田と様々な話をした。これからのことを、諦めていた、望んではいけないと思っていた未来のことを。

「お前は日本に着いたらまず、何をしたい?」

 ニヤリとした笑みを浮かべ訊ねた宝田にクオンはぼそりと呟いた。

「俺を、消したいです」
「ああ?」

 宝田は眉をひそめ、先を促す。

「早く俺ではない自分に、日本人の敦賀蓮に、成りたいです」

 そう言ったクオンは既に日本語で話しをしていた。



 クオンの望みは叶えられた。日本についてまず始めにしたのは宝田の知り合いだという女性に姿を変えて貰うことだった。
 そこにいるのは既にアメリカ人、クオン・ヒズリではなく日本人、敦賀蓮。

「宝田社長、ミス ジェリー・ウッズ、改めて自己紹介させて下さい。
 ――敦賀、蓮です。これから宜しくお願いします」

 黒髪の青年は深々と頭を下げる。
大人二人は青年から伝った雫には見て見ぬふりをしてくれた。

 ミス ジェリー・ウッズの店を出て屋敷へと向かう車中、蓮は窓から見える人と景色をずっと見ていた。それは泣いてしまった照れ隠しばかりではなく、これから自分が生きていく場所を見つめるためであった。

 その時、宝田が思い出したように言った。

「おお! そうだ言い忘れていたがな、蓮」
「なんですか? 社長」

 蓮は振り返り首を傾げる。一通りのことは話し終えたと思ったのだが他に何かあっただろうか。

「娘が出来た。当然家には彼女も住んでいるからな!」
「それはコウキさんの奥さんのこと、ですよね?」

 何を今更、と考えた蓮をよそに宝田がフフンと笑った。
 聞いてみれば娘というのは2ヶ月前に養子になった11歳の少女だという。名前はキョーコ。

(キョーコちゃん、か)

 胸に沸き上がったのはつい先ほど捨ててきたはずの過去の記憶。敦賀蓮ではない者の想い出だった。

(今の俺には関係ない・・・・・・そうだろ?)

 思考とは裏腹に、振り払えない子供時代の影に蓮は早く自分を立て直さなければと意識を集中した。

 そんな蓮の心情など構うことなく車はあっという間に屋敷に着く。荷物など持たない蓮は『挨拶に行くぞ!』と言う宝田に連れられるまま屋敷の奥へと足を進めた。

 正直なところ気が進まなかったが後から来たのは蓮の方だ。挨拶をするのは当然である。ただ敦賀蓮に生まれ変わりいくらか取り繕えているとは言え蓮の心に余裕など欠片ほどもない。
 自分のことで手一杯の今、その少女がどんな子かは分からないが妙に懐かれたりはしたくない――・・・それが蓮の偽ざる本音だった。

(これからここで居候の身になる俺がとやかく言えた義理ではないだろうに)

 そんな自身に内心ため息を吐く。そもそも心の余裕がどうこうと言い訳するのは、蓮の設定した敦賀蓮の役柄とは合致しない。
 沈黙する蓮に宝田が挑発するように笑った。

「なんだぁ? さっそく正体ばれる心配か?」
「そんなんじゃ、ないですよ」

 宝田がバンッと蓮の背中を叩いた。

「なーに安心しろ。万が一あの子にお前が日本人ではないことがバレても、彼女は誰にも言わねーさ。いや、それ以前に言うことが出来ない、か」
「どういう意味ですか?」

 蓮には宝田のいう『言うことが出来ない』と言う意味がよくわからなかった。言わないというのはその少女を信用してのことだとして、言えないとは? どこか憂い顔で会えば分かる、という宝田に蓮はますます首を傾げた。

 暫く廊下を歩いた先、屋敷の中でも特に自然豊かな庭に面する奥まった一角へとたどり着いた。ここが少女に与えられている居室らしい。蓮は廊下をぐるりと見渡した。

(随分、人の気配の薄い場所だな)

 扉の前まで来ると宝田は蓮へと振り返った。

「蓮、先に言っておく。彼女はとても繊細な子だ。嫌われたからって怒るなよ?」
「わかりました。それに怒ったりしませんよ。下手に懐かれるより、勉強がはかどりますから」
「ま、とにかく先住者に挨拶しとけ」

 宝田は僅かに呆れた表情を乗せたまま扉を軽く叩いた。

「は、はい!」

 扉の前に立つ宝田の後ろ、蓮は一瞬だけ目を見張る。 一瞬、本気で宝田の養女が『あの』キョーコちゃんかと思い蓮は動揺したのだ。

(この、声・・・・・・気のせいだよな?)

 役者たる者いついかなる時も周囲を観察し、瞬時に再現出来るようにあれ。役者を志した日から蓮はその父からの教えを忘れたことはなかった。とは言え5年も前に一時を過ごしただけの少女の声など、まさか覚えているはずもない。

(キョーコって言う名前のせいだろう?)

 ぐっと眉間にしわの寄った蓮だったが、宝田の発した今までに聞いたことのない穏やかな声に意識を今へと取り戻した。

「俺だ、先週話した、新しい住人が来たからな、紹介しに来た」
「は、はい! どうぞ!」

 宝田がゆっくりと扉を開く。が、そこには誰もいなかった。蓮はざっと部屋を見回し首を傾げる。やはり、人影はない。
 ――そのときだ。

「あ、あの、初めまして。きょ、キョーコです」

 がちがちに緊張した声の方に視線を向けると、そこには天蓋付きベットの影から隠れるように少女の顔が覗いていた。

(あの子だ!!)

 蓮は叫びそうになった自分を咄嗟に抑える。
 そこにいたのは間違いなく5年分成長した『あの夏のキョーコちゃん』だった。

 蓮はじいっとキョーコを見つめた。驚きの次にやって来たのは困惑だった。何故ここに?それに初めましてって、俺がわからないのか? そう思考して気づく、自分は今、髪も目の色も違うのだと。
 分からなくて当然だ。蓮は呼吸を落ち着けた。

「初めまして、キョーコちゃん。敦賀蓮です・・・・・・よろしく」

 そうとは分かっていても、髪と目の色が変わっただけで『俺』が分からないのかと見当違いの不満が沸いた。自分でも気がつかないうちに声に刺々しさが含まれる。

「あ、の・・・・・・え、と」

 それを敏感に察したのだろう。キョーコはきょときょとと視線を彷徨わせ、

「ご、ごめんなさいっ」

 消え入りそうな声を上げると再びベッドの死角へと姿を隠した。

「あ」

 咄嗟にキョーコの側へ行こうとしたがそうはいかなかった。蓮は扉を抜ける前に宝田に腕を取られ室外へと引っ張り出される。

 宝田はキョーコに部屋を出る旨を伝えると、しばらく無言で廊下を進んだ。蓮の腕を引きながらだ。そして突然立ち止まるとドスの利いた声を発した。

「蓮・・・・・・お前、部屋に入る前に言った俺の話し聞いてなかったのか?」
「すみません」

 蓮は小さくなって謝った。自分でもどうかしていると思う。なぜあんな風に接してしまったのかと後悔ばかりだった。
 宝田はうなだれる蓮の背をとんとんと叩くと、お前もまだまだ情緒不安定みてぇだなあ、そう言って苦笑いした。

「にしてもよぉ・・・・・・彼女、もう二度とお前には心を開かんぞ」

 蓮は態度にこそ出さなかったがぎくりとした。捨てられない過去の想い出が胸を刺す。

 しかし蓮はつとめて何でも無い風に応えた。

「それならそれで構いませんよ」

 蓮にはもう、キョーコがなぜここにいるのか聞くことはとてもできはしなかった。




≪幸せの探し方≫と≪完璧な人生の歩み方≫の予定分があらかた書き終わりましたので、新連載なぞ。

同ネタで他にも書くことと思いますが、

「お前のそんなちっぽけな感傷は比較にならん」byレイノ は本当か?

※石をもっていた10歳の久遠はまだ「人殺し」になっていないし、荒れているというほどでもなさそうにもかかわらず、このセリフ。

では何故か?色々パターンは考えられますよね。
大別すると3つでしょうか。

①レイノの言葉はそもそも嘘
②レイノの言うとおり
③キョーコの闇の方が重い

①は意図的に嘘を吐いたというパターン。
③は何らかの要因で、見誤ったというパターン。

この物語はある意味この③の話。
心の闇が深すぎて、それを封じたために読みとれなかったなら、という発想からできた『If』の物語です。

レイノは今のところ出てくる予定0だけれどね。レイノだけに!!


あなかしこ



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Author:常葉(トキワ)

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