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再構築りれいしょん③

2011.04.25.16:00



いぐざみねいしょん

(Side:蓮)

あれから彼女と、森に夕日の陽が差し込むまでずっと話しをしていた。

彼女は彼女自身が知る数少ない自分のことを懸命に話してくれた。


半年より以前の記憶がないこと。

気がついた時には病院で、次に東京の、ある施設へと移ったこと。

そこで宝田社長に引き取られ、養子となったこと。

過度のストレスがかかってはいけないこと。

人と居ると強いストレスになってしまうため、それを避けていること。

「じゃあ、なんで毎日俺のところに来たの?」

彼女が腕の中でびくりと震えた。

「あぁ、違う、駄目って言っているんじゃないよ。ただ、俺は君にあんなに辛く当っていたから、随分君に精神的に負荷をかけただろう?」

「敦賀さんは、いやじゃ、なかったから・・・。人が嫌いで、人と居ると、怖くて、近づきたくなくて、でも、寂しくて」

彼女が言葉に詰まりながらも、俺に気持ちを伝えようとする。

この一ヶ月、俺と彼女はなんだかんだで毎日短いお茶会を過ごしたというのに、お互いのことを何一つとして知らなかったのだった。

俺は静かに彼女の言葉を待つ。

自分でも何て現金なことかと思う。

つい先ほどまで、俺は彼女のびくびくとした態度に苛立っていたというのに、何もかも忘れてもなお、俺の贈った石だけは大切にしている。その事実を知った途端に、彼女の不器用な態度にさえ愛おしさを感じてしまうのだ。

「でも、敦賀さんは、怖いけど、嫌いじゃなくて、なんだか、傍にいたいなって、それで、迷惑がられて、るのに・・・・―――――ふっぅ」

彼女が泣き出してしまう。

ああ、俺はあんなに泣かせたくなかった少女を、こんな風に泣かせて。

そのくせ、まるで俺だけが特別であるように言う彼女に喜びを感じて。

まだ純粋さを保っていた頃の俺が、木の向こうから睨んでいる気がした。

「違う、違うんだ、迷惑なんかじゃない。俺が馬鹿で、君とどう接すればいいのか分からなくて、でも、もう大丈夫だから、たくさん、泣いていいから、また、俺の部屋に来て?俺からも、君の元へ行かせて?」


彼女の背を撫で、俺は泣きやんだ彼女が望むまま、彼女の忘れてしまった二人の思い出を語って聞かせた。


俺と君が友達だったこと。

出会い頭に妖精と間違われたこと。

君が目玉焼きの乗ったハンバーグを好きなこと(今でも好きか、明日、屋敷のシェフに教えてもらって、一緒に作ろうと約束した)。

二人で作ったハンバーグ王国のこと。

暑さに倒れた俺を、君が懸命に看病してくれたこと。

俺がバク宙してみせたとき、君が褒めてくれたこと。

そして、俺達はまだ子供で、5年前に離ればなれになったこと。

その時、君に青い石を贈ったこと。


彼女は二人の想い出を覚えていないことを残念がり、そうして俺にまた出会って、想い出を聞かせてもらえたことを嬉しいと言ってくれた。

「敦賀さんが、特別、なのは、お友達だったから、なんだ!!」

そう言って、再開して以来、初めての笑顔を見せてくれた。







(Side:ローリィ)

俺がプライベートルームでナツコと寛いでいると、付き人から蓮の来訪を告げられた。

通すように伝えながらも、蓮の来訪理由を考える。

(恐らく、キョーコに関することだとは思うが・・・)

連日のキョーコによる蓮の元への訪問、そして蓮の冷たい態度は耳に入っている。

ただ、自ら決して人と関わろうとしなかったキョーコが自主的に何かをしようとしているのを静観していた。

蓮に関しても、いくら余裕がないからといって、11歳の少女に行き過ぎた態度はとるまい、と思っていたのだが、どうやら今日の報告を聞く限り、彼はやらかしてしまったらしい。

ただ、そのあとに直ぐ行動を起こしたよだから、現在2人がどうなっているのかは分からない。

(俺の勘では、そうそう悪い事態にはなっていないと思うんだがなぁ?)


正面の扉が開き、蓮が入ってきた。

「社長、お寛ぎのところ申し訳ありませんが、お尋ねしたい事があります。」







(Side:蓮)

彼女を部屋まで送って行った後、俺はその足で社長の元へと向かっていた。

俺にはどうしても腑に落ちないことがあった。

そして、その答えは恐らく社長が知っている。

(キョーコちゃんは、ずっと旅館に預けられていたはずだ。事故による記憶喪失なら、なぜココにいる?旅館では手に負えなくなって施設に預けたとして、なぜ京都ではなく東京なんだ?)

それに、彼女が自分が記憶喪失になった経緯を知らないことにも嫌な感じを受ける。

(事故ではなく、事件に巻き込まれた?犯人が捕まっていないために京都から離された、あるいは事件現場から遠ざけられた?いや、もともと記憶を失う前に東京に来ていた可能性だってある・・・)

何にしろ、彼女の記憶喪失は事故ではない。

そんな、妙な確信があった。

しかし、俺が社長に聞かされた、彼女が記憶を失い、現在にいたるまでの経緯は、その時の俺には想像のしようもないことだった。





(Side:ローリィ)

正面のソファーに座った蓮が、ぽかん、とした顔のあと、驚愕に目を瞠った。

「ストレス、ですか・・・?」

「あぁ、最初に言っただろ。彼女は繊細だって。彼女に過度のストレスは禁物なんだ。何と言っても記憶喪失の原因だからな。」

蓮は何か思い当たる節でもあるのか、考え込んでいる。

「オイ、蓮」

目の前の、キョーコの現状を求めて訪れた青年は、実際には15の少年である。

だからこそ、中途半端な覚悟で彼女の事に首を突っ込んでは欲しくなかった。

彼女の心が繊細であるように、目の前の少年の心もそうなのだから。

「お前、彼女の事情を知って如何しようってんだ?今日、お前がキョーコに随分ひどい態度を取ったのも、それを後悔してキョーコを追っかけたのも聞いている。今日の事でキョーコに同情したとか、償いたいってんならやめとけ。お前がこれからやろうとしている事と、彼女を支えるってことは生半可な思いじゃ両立させられねぇんだよ。」

意識して突き放した声音で言う。

蓮には、こうでも言えば多少なりとも動揺すると思った。

だが予想に反して、目の前の少年はこの前まで死にかけていた者とは思えない目を見せる。

「中途半端な思いで近づく?彼女にそんな思いで近づくようなヤツがいるなら、俺が排除しますよ。」

言葉は静かだったが、そこには、再生を懸けたときと同じく、強い意思が込められていた。


ただ一人、蓮にだけは懐いたキョーコ。

キョーコのために火をともした蓮。


(これは、この二人、一緒に居させてみる価値があるかも知れんぞ?)

ローリィの勘は、蓮に彼女の身の上を聞かせるべきだと判断した。








(Side:蓮)

それは、あの日少女の幸福を祈った蓮にとって、限りなく遣る瀬無い彼女の物語だった。


小学生の彼女は、学校でのいじめと、旅館での仕事、そして実母からの育児放棄を受け、精神的・肉体的に極限まで追い詰められていた。

あるとき実母と久しぶりに会うこととなった彼女は、実母と話しているとき、突然意識を失った。

そのまま病院へと搬送され、彼女が精神的・肉体的に極度の疲労を抱えている事が発覚。

目を覚ました彼女が記憶に障害を抱えている事を受け、彼女の生活環境が調査された。

その結果、幼い少女が生きるにはあまりに劣悪な環境に、彼女は法の手続きの元保護された。

病院での療養の後、彼女は京都にある施設へと託される手筈となっていた。

しかし、彼女を預かっていた旅館からの度重なる面会の求めや、彼女の引き取りの申し出に危惧が抱かれ、彼女の保護先は東京の施設へと変更になった。

記憶を失った彼女は、大人も子供も、男性も女性も、あらゆる人という人を嫌悪し、恐怖するようになっていた。

それでも、彼女本来の性格からか、本能的にしてしまう人への嫌悪を乗り越えようと努力した。

けれど、努力すればするほどに彼女の精神への負荷となり、より一層、彼女を苦しめ、自己防衛のために記憶すら失ったのであろう彼女は、更に壊れようとしていた。

そんな時、彼女は社長に引き取られたのだ。


ローリィが淡々と、彼自身が彼女を引き取るときに聞かされたこれまでの経緯を話す。

話を聞き終えた蓮は、ひとつ、彼女のために自分のできることが見えた気がした。












(Side:キョーコ)

あの日、敦賀さんと私の間の蟠りが解けて以来、彼は私の往来を歓迎してくれるようになった。

それどころか、彼の方から私の元に訪れてくれる。

一度、私が彼の勉強の邪魔をしているのではないかと尋ねると、

「そんなことないよ?君が色々教えてくれるから、勉強が捗るくらいだ。」

そう言って、優しく笑ってくれた。


あの出来事があった次の日、彼は彼の本当の姿と、それに纏わる秘密の話をしてくれた。

そうして私に、私の知る、日本の色んな事を教えてほしいと頼んだ。

私は自分の歴史を何も覚えていないけれど、なぜ?と思うような沢山の色々な知識を持っていて、彼が秘密を話してくれたあとに彼と作ったハンバーグも、シェフの方が驚くくらいの手際と出来だった。

私は自分が敦賀さんの役に立てるかもしれないと嬉しくなった。

けれど、私は貰ってばかりだ。


私は敦賀さんと居ると『普通』になれた。

敦賀さんと一緒にいると、お屋敷の人たちともお話しできたし、お手伝いだって申し出られた。

人と触れ合うのが怖い私に温もりを与えてくれた。

いつも微笑んで、『私』を許してくれた。


私はいつも、返しきれないほどに敦賀さんに与えられるばかりで、申し訳なさでいっぱいで、引け目を感じずにはいられなかった。

そんな時だった、彼が私に『お願い』をしてきたのは。


「お外?」

「そう、何気なく通りを歩く日本人が、一体どんな風に過ごしているのか知りたいんだ。言うなれば・・・日本人ウォッチング?」

「私と?」

「そう、駄目かな?俺一人だと目立ってしまうし・・・分からないことがあったらすぐに君に聞けるだろう?」

そう言って、敦賀さんは『俺を助けてくれないかな?』と、困ったように笑った。


私と彼はそれ以来、度々そうして外を歩いたり、カフェで通りを眺めたり、電車に乗ってみたり、短い『常識旅行』を繰り返した。

そうして彼は少しずつ『日本人』敦賀蓮を完成させていった。

その隣で私も少しずつ『自然な』宝田キョーコを振る舞えるようになっていった。


この頃、私の胸の中にはある小さな想いが芽生え始めていた。

敦賀さんにも秘密のこの想い。

敦賀さんの隣で、彼の努力を肌に感じながら、私の想いは少しずつ、ううん、急速に育っていった。


そうして育った蕾が、今にも花開きそうな、ある日のことだった。

私に、開花の時を迎えさせる出来事が起きたのは。








前髪を全下ろしにした敦賀氏の可愛さは異常。

幼げなのに目は荒んでいて、渡日間もなく、デビュー前の彼にキュンとします。

ちっちゃいキョーコとイチャついちゃえ!
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●また、管理人は考察上、あるいは二次創作文中の設定上、登場人物に対し批判的、否定的な扱いをする場合があります。
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Author:常葉(トキワ)

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