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再構築りれいしょん④

2011.04.26.23:56


ぷらん



(Side:蓮)

最近キョーコはすっかり人ごみに慣れ、俺がいなくても人とスムーズに話が出来るようになった。

嫌悪や恐怖はあるものの、交流を重ねるうちにそれを薄れさせることが出来るようになったし、なにより心に過負荷がかからなくなったようだ。

だから今日はキョーコと休日の繁華街へと出かけた。

人が多いし、キョーコが特に苦手な『若者』が沢山いるから。

キョーコ本人にあまり自覚はないようだが、彼女の中には特に嫌悪や恐怖の対象となる人物像があって、『集団行動をとる女の子』と『ロック系の服装をした美男子』、それに『キャリアウーマン風の真面目そうな女性』や『和服姿の細身の中年女性』などがそれに当たる。

これはあくまで、俺が彼女を観察して得た推測だから、どこまで正確かは解らない。けれど、彼女の生い立ちとリンクするものがあるから、あながち間違ってはいないと思う。

何にしても、彼女がそういう人種と関わることがあった時に苦労しないよう、俺の勉強も兼ねてこうして外に連れ出した。

通りをキョーコと歩いていれば、視線が集まり、時には俺よりも10近くは年上だろう女性が声をかけてくる。

実年齢よりも僅かに幼く見えるキョーコと、実年齢より大分上に見える俺では、恋人同士には見えないらしい。

年の離れた兄妹にでも見えるのだろう。実際、俺たちの今の関係は友人よりも近い、兄妹のようなもの、あるいは親友だろうか。

何となく、5年前と変わらない30cmの身長差が疎ましかった。


キョーコと腕を組みながら歩く。

キョーコは人込みはやはり心細いのだろう、普段は恥ずかしがってしない行動を無意識に行う。

こういう庇護を求めるような彼女の態度と、それを受容する俺の態度が余計に俺たち『兄妹』に見せるのだろう。

この日もやっぱり、幾度かあった女性からのお誘いを躱しながら、俺たちは洋服店を覗いたり、通りを散策したりして『日本人観察』をする。

俺たちは持ちつ持たれつ、互いを支え合いながら過ごし、数ヶ月前からは想像もつかないほど、日々は穏やかに過ぎていった。


通りに面したカフェで休憩をしていた時、男性が一人近づいてきた。

「すみません、少しお時間よろしいですか?」

そう言って、自己紹介と共に名刺が差し出される。

予想はしていた。ナンパが目的でないなら後は芸能事務所への誘いだ。自分の容姿が秀でているのは自覚がある。自分に流れる血の半分には『生きた宝石』と讃えられる女性と同じものが流れているのだから。

何にしろ、俺は既に来年にはLMEからデビューが決まっているし、そもそも秘密を抱えている以上、LME以外からデビューなど出来ようはずもない。

だが、今日の誘いは俺へのものではなかった。

名刺はキョーコへと向けられていた。

目の前に自分へと向けられた芸能事務所の名前が書かれたカードを、キョーコは信じられないとばかりに見つめた後、それを受け取らずに頭を下げた。

「ごめんなさい」

キョーコが申し訳なさそうに言う。当然と言えば当然か。彼女は業界最大手のLME社長の養子である。(彼が後見人と言う意味では自分も似たようなもではあるが)

彼女のきっぱりとした態度に、性質の悪い相手でもなかったのだろう、相手はすぐに引いてくれた。

去っていくスカウトの男性を見送ってから、キョーコの視線が不意にこちらを向く。

彼女は体も俺に向き直ると、おもむろに口を開いた。





(Side:キョーコ)

「敦賀さんに、聞いてほしいことがあるんです。決心がついたら、敦賀さんに1番に聞いてほしくて。」

ずっと、胸に秘めていた思い。

自分にできるのだろうかと、ソレをするのは特別な人だけなのではないかと、自信がなかった。

でも、今日、恐らく10代の少女で探していたにしても、目の前にこの敦賀さんがいながら、自分が芸能事務所に誘われたこと。それがとうとう最後のひと押しとなった。

私が突然、あまりに真剣な態度をとった所為だろう。敦賀さんが戸惑ったような顔をしている。それでも彼は、すぐに聴く体制になってくれた。

「私、役者になりたいんです」

切っ掛けであるあなたに、1番に伝えたかった。






(Side:ローリィ)

蓮とキョーコ、二人が一緒に過ごすようになって早3ヶ月、二人の情緒は瞬く間に安定していった。

更に、それに留まらず2人は互いに良い影響を与えあっているようだ。

蓮が凄まじい速さで『日本人』を吸収している事も、キョーコが無理なく社交能力を学習している事も、互いがいてこそのものだろう。

これは嬉しい誤算だった。

そして今日、蓮と出かけていたキョーコからの、『父』への初めてのお願いも。



夜、プライベートルームで寛いでいると、キョーコがやってきた。

話があるというので、正面のソファーに座らせる。

「ぱ、・・・ぱ、・・・お父さん!!」

緊張の面持ちのキョーコには悪いが、最近呼んでくれるようになった俺へのその呼びかけに、思わず笑ってしまった。本当は『パパ』と言う呼び名で呼んでほしいのだが、まだ難しいらしい。それでも、『宝田さん』からの進歩を思えば嬉しくなる。

「お願いがあります」

真剣な彼女に、自分も表情を整えて向き合う。

「おう、なんだ?言ってみろ。可愛い娘の願いを叶えられない俺だと思うなよ?」

彼女が、戸惑いと照れくささをない交ぜにした顔をする。しかし、それをまたすぐに引き締めて言った。

「私に、役者になるお勉強をさせてください。」

そう言って、綺麗なお辞儀で頭を下げ続けた。

「おい、顔を上げろ。役者の勉強をしたいってことは、役者になりたいってことでいいんだな?」

「はい」

「それは、蓮の奴と一緒にいたいからか?」

もし、そうであるなら許可できないと思った。

この二人は、今は互いに一緒にいることがプラスになっているが、相手がいなければ生きられない、そんな依存をしてしまっては、互いのお陰で成長したはずのものが無為になってしまう。

だから、キョーコが蓮の傍に居たいがために蓮と同じ世界に行きたいというなら許可は出来なかった。

けれど、キョーコは首を振る。

「違います。敦賀さんが切っ掛けですから、確かに関係はありますが」

「切っ掛け?」

「はい。敦賀さんは、お芝居をするために容姿も名前も何もかも捨てて、今は馴染みのない文化の中で溶け込もうと必死に努力をして。敦賀さんはすごい人です、私は敦賀さんのこと、ぱ、パパと同じくらい尊敬しているんです。その敦賀さんがそこまで情熱をかけるお芝居を、私もやってみたい。敦賀さんと同じ世界を見て、何もかも忘れてしまった分まで、『今』の自分を作りたいんです。」

キョーコがそう言って胸の前で拳をキュッと握り締めた。

ひたと俺に視線を合わせてくる。

「だから、お願いします!!」




(Side:蓮)

今日の俺は機嫌が良かった。

何と言っても本日から久々の『京子』との仕事である。


あの日、キョーコに役者になりたいと、芝居をしたいと告白されたとき、俺は咄嗟に反対しようとした。

けれど、言葉が口を出てしまう前に気づいてしまった。

俺は今、自分のためにキョーコの願いを退けようとしている、と。


キョーコは記憶を失ってしまってもキョーコだった。俺の、俺だけの魔法使いだった。

上手く飛べない俺に、風を送り込み、羽を作るのを手伝ってくれる。

彼女の決意を聞いた時、彼女が居なくなってしまう恐怖に、俺は、優しい魔法をかける彼女に、呪いをかけようとしたのだ。

俺の元から飛び立てなくなる、身勝手な呪いを。


けれど、そんな自分に咄嗟にでも気がついてしまえば、口を開くことなど出来なかった。

彼女から見れば、俺は随分と愕然とした顔で黙りこくっていたに違いない。

そんな俺をキョーコはどう思ったのだろう。

自分が役者を志した切っ掛けを話しだした。


このとき、俺は改めて実感したんだ。あぁ、俺ってなんて、現金なんだろうって。

俺は、俺と同じ世界を見たいと、俺が情熱を傾ける世界で自分を作りたいという彼女に、すっかり絆されてしまった。

宝田社長からの許可をもらい勉強を始めたキョーコに、俺もこの道を志す先輩としてアドバイスをし、同志として切磋琢磨した。

キョーコは素晴らしく優秀な生徒だった。彼女との『勉強会』は楽しくて、俺自身にも実りのあるものだった。


俺が一足先にデビューすると、彼女も追いかけるように子役と、雑誌モデルとしてデビューした。

デビューした後も、俺が社長の屋敷を出た後も、俺たちの勉強会は続いた。(因みにそれには、俺がいまだに続けている『日本人観察』で湧いた疑問の解消も含まれる)

互いを磨き合っているうちに、当時19歳の俺と、15歳の彼女はいつのまにか、LMEの看板若手俳優と呼ばれるようになっっていた。




(Side:キョーコ)

私ももう17歳になって、子役以外の仕事が来るようになった。

今回の仕事である『DARK MOON』は初めて子役以外で出演するドラマとなる。

子役と呼ばれる年齢を抜けてから、映画やCM、あとはモデルの仕事もあったけれど、ドラマとの縁がなかった。

けれど、今回のドラマの監督に、映画での演技を目に留めてもらい、主要人物に抜擢された。

(そして、その記念すべきドラマの主演は敦賀さんなのよ!!)

私の兄みたいな親友、敦賀さん。

初めての女友達で親友のモー子さんとは、お話しすることも、遊ぶことも違うけど、二人とも私の大事な親友。

(親友が2人もいるって素敵だわ!!)

私は事情があって学校に通った記憶がないから、友人が少ないし、そもそも敦賀さんのお陰ですごーーーーくマシになったけれど、私の人間嫌いは未だに健在だったりする。

『そういう病気』だから第一印象の良かった人なんて敦賀さん以外にいないけれど、だからこそ、印象の悪い人に、そう感じていると悟られないすべも身に付いた。

それに大概は別に悪い人ではないのだ。私が『人=嫌なもの』と無意識に認識しているだけで。

自分がそう言う歪んだ視点で人を見ているのは分かっている。だからこそ、私は冷静に人を見ることが出来るようになったと思う。主観的判断が頼りにならないのだから仕方がないけれど。

それでも、やっぱり、途轍もなく印象の悪い人はいるのだ。

(この人なんてそうだな)

ロビーで流れる映像には、私と同い年の、最近デビューした歌手が映し出されていた。

『DARK MOON』のキャストとの顔合わせ、兼、打ち合わせを終えて、私は局のロビーで敦賀さんを待っていた。

お互い、若手の中ではLMEの看板などと呼ばれて、忙しい私たちだけれど、今日のように早めに上がれる日は、私の父でもある社長のお屋敷で『勉強会』をするのだ。

主演の敦賀さんは監督とまだお話しすることがあって、ロビーで待ち合わせとなった。

そのとき、私は声をかけられた。

なんだかすごく、いやな声に。


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Author:常葉(トキワ)

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度々細かな変更はありますが、温かく見守って頂けると幸いです。

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