スポンサーサイト

--.--.--.--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手 by FC2

完璧な人生の歩み方~嫌いなのには理由がある~

2011.04.27.19:50

(改)



(Side:社)

「歌手、ですか?」

蓮はいましがた受け取った映画の資料を手に呟いた。
ここは事務所に併設されたカフェの一角。蓮と社はオファーが来た仕事の検討中である。

「そ! 恋愛はメインじゃないから絡みも少ないけど相手役はキョーコちゃんだし、歌手の役とは言っても歌のシーンはアカトキの期待の新人が歌うんだと。『不破尚』って言ったかな? 作詞作曲も彼がやるはずだから」

だから、特別ボイストレーニングなどを受ける必要はない、そんな意味を込めて社は言った。

「この役って、資料から察するに自分で作詞作曲もする設定ですよね」
「ん? そうだけど」

その通りなので社は頷く。

「社さん、この仕事、受けてください。でも、条件があります」
「え、条件!?」

蓮がこのようなことを言うのは初めてではない。プロ意識が高いうえ、完璧主義の彼はときに危険なアクションなどもすべて自分でこなすことを条件としたりする。
しかし、今回の仕事には特にスタントを必要とするようなシーンはない。社は半ば条件が何なのかを察しながらも、蓮に尋ねた。

「蓮君…条件って、何?」
「作詞作曲、歌、全て俺にやらせて下さい」

うっそりとドス黒いオーラを立ち上らせ、蓮は口元だけで笑った。

(やっぱり!!! でも何なんだ、その真っ黒のオーラは!? 絶対にプロ意識だけが理由じゃないだろ!!)

社は懸命にも心の声を呑みこんだ。



(Side:尚)

「はぁ!? 立ち消えになったってどういうことだよ!!」

オレは思わず祥子さんに怒鳴る。

「落ち着いて、ショー。あのね、貴方が歌うはずだった映画の主題歌や主人公が歌うシーンは、全部その役の本人がやることになったのよ」
「何だよそれ、ソイツ歌手崩れの役者なわけ?」

祥子さんの説明を聞いてもイライラは収まらない。それどころか続いた説明に、より一層怒りがわいた。

「いいえ。役者以外にモデルもしているけれど、今までの経歴に音楽関係の仕事はない筈よ」
「ん、だよソレ!? 役者なら役者の仕事だけしてろよ!!」

訳が分からない。親の目を盗みながらのバンド活動が実を結び、やっとプロデビューが決まったというのに。

契約を結んだアカトキは、オレの実力を大いに買ってくれた。
だからこそ、ビジュアルによるファン獲得の前に、オレの歌と曲そのものの実力を印象付ける戦略も練ってくれていた。
それが今回予定していた、映画の主人公の歌部分のアテレコによるデビューだ。
普段の話声と、声帯を楽器として使った時の声とでは全く違うなんてよくある話だから、制作サイドも納得して既にGoサインは出ていたのに。
映画で歌の実力を印象付け、そのうえで俺のビジュアルを披露すること。それによってオレは一気に芸能界のトップへと駆け上がるはずだった。

それが!!

「音楽のプロでもなクセにっ」

忌々しい。

「だいたい、作詞や作曲はどうすんだよ?」

こればかりはどうにもならないはずだ。そうだろう!? そんな一縷の望みもあっさり砕かれる。

「それが、その役者さんが自分で作詞作曲して歌声を披露した上で直談判したみたいで」
「な! それで、ソレが通ったってのかよ!!?」

祥子さんがしまった、と言うように口を押さえる。
祥子さんの言ったことが本当なら、それは、つまり。

(オレが、音楽の素人に負けたってのかよ!!!!??)

「祥子さん、それ、誰」
「え?」
「その役者、誰」
「つ、敦賀蓮よ。有名だもの、名前くらい聞いたことあるでしょう?芸能界のランキングでも色々と1位を取っているし」

(敦賀、蓮・・・・)

「そいつ、ぜってぇに、ぶっ潰す」

こんなにも他人を憎々しく思ったのは『ヤツ』以来だ。
『ヤツ』――オレの幼馴染を横から掻っ攫っていった外人野郎。『敦賀蓮』からはヤツと同じ匂いがしやがるぜ!!



(Side:蓮)

その日俺は、普段アフレコくらいでしか訪れることの無い音楽スタジオに来ていた。
アフレコ時には見かけることの無い音楽機材に囲まれ、俺はマイクの前に立つ。目的は例の映画の監督たちに、台本を読んだ上で作詞作曲した歌を披露すること。この映画で俺がアテレコなしで演技を出来るかどうかがかかっている重要な勝負だ。

ヘッドフォンから聞きなれた音楽が聞こえ始める。気負うことはない。主人公シンヤの人生を、感性を、その心のままに伝えればいい。

一曲歌い終わった俺に、社さんから声がかかる。

「お前の中にはどれだけ引き出しがあるんだよ」

感嘆とも呆れともつかない吐息と共に、そんな事を呟いた。周りの監督やスタッフたちも似たような感じだ。

「いやぁ、まさかココまでとは思わなかったよ!」
「きっと歌手としてデビューしていても成功していたんでしょうねぇ」
「そうだね、今すぐトップアーティストの仲間入りできるレベルだよ」
「『敦賀蓮』本人の歌声に作詞作曲なんて話題沸騰間違いなしじゃないか!!」

そんな風に称賛するスタッフに、俺は困ったように笑う。

「そんな…台本を読んでシンヤの気持ちを掴めたからこそのものですよ。素の俺じゃあ、こうはいきません」
「それにしたって作曲なんていつ覚えたの? 学生時代はバンドやっていたとか?」

俺は苦笑いして誤魔化した。

「こんな役をすることもあるだろうと思って、勉強しておいただけですよ」

そう言う俺に、周りはさらに称賛の声を上げるけれど、実際はちょっと違っていた。動機はもっと不純だ。
切っ掛け事態は、前世で演じたドラマ『DARK MOON』だった。
楽譜が読めないがために、講師の指の動きを丸暗記した過去。しかし今生、もしも音楽がメインとなるストーリーを演じることになり、本物志向を目指すならば丸暗記ではとても間に合いそうにない。

だから子供のうちに勉強しておこう。そう考えた時、嫌な顔がよぎった。
そう、不破尚だ。
前世ではヤツの――延いてはヤツの音楽のファンであった彼女。

苛っとした。
彼女の中で俺がヤツに負けている所など、何一つとしてあって欲しくはなかった。

最初は楽譜の読み方とバンドでメインに使われる楽器の基礎だけやるつもりでいた。
それが、気がつけば足りないまだ足りないとのめり込み、一時期は父さんに将来の夢が変わってしまったのかと泣かれたほどだ。
もはや俺の音楽技術レベルは素人のそれでない。
あとはこれに『役』の感性を付ければ、十二分に視聴者の鑑賞に耐えうるレベルのものとなる。

つまりこの音楽関係の技術は、ヤツを貶めつつ彼女の関心を少しでも引きたいがために身に付けたものなのだ。まあ、理由は何であれ演技に活かせているのだから万々歳だろう。うん。

なんにしろ、ヤツのデビューは先延ばし。せいぜいビジュアルで売れればいいさ。

ニコニコしながら周囲に対応する『敦賀蓮』が、このようなコトを考えているなどと気がつく者などいないのだろう。
些かの腹黒さに自覚のある身としては、面の皮の厚に磨きをかけた、前世の記憶に感謝したい。

目次 おまけへ進む


不破君て、どうしてアンチ敦賀さんなんでしょうね?
『オレ・1番』じゃなければ気が済まない、と言うだけなのでしょうか。
今はキョーコちゃんを挟んだ対立で分かりやすいですが。

そんな訳で、完璧な人生(?) を爆進中の敦賀氏。
不破君への嫌がらせは欠かしません。
もちろん、役者としての完璧主義ゆえのことでもありますが。

あなかしこ
関連記事
web拍手 by FC2

comment

Secret

承認待ちコメント

2011.09.14.20:14

このコメントは管理者の承認待ちです
※サイト案内※
●当サイトにはスキビの考察および二次創作文が展示されています。それに伴い、展示物には性描写・暴力表現を含まれるものがあります。
●取り扱いカップリングは蓮×キョーコ、傾向は「両片想い」「ハッピーエンド」です。
●また、管理人は考察上、あるいは二次創作文中の設定上、登場人物に対し批判的、否定的な扱いをする場合があります。
●作中のあらゆる事項はフィクションであり、現実に即さないものが多く含まれます。
※性描写・暴力表現を含む作品は年齢制限を設けていますので、高校生含む18歳未満の方は閲覧しないでください。
最新記事
カテゴリ
絵 (1)
最新コメント
検索フォーム
カウンター
管理人
Author:常葉(トキワ)

どうぞごゆるりとお楽しみ下さいませ。
度々細かな変更はありますが、温かく見守って頂けると幸いです。

バナーとか作ってみたり。
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。