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再構築りれいしょん⑤-前

2011.04.29.06:00


ろけいしょん<前>


(Side:尚)

「おまえ、キョーコか?」

疑問符を付けたが、確信があった。

はたして、振り向いたその顔は間違いなく幼馴染、『最上キョーコ』のものだった。

「なんでお前がこんな所にいんだよ」

声が不機嫌になったのは仕方のないことだ。

こいつは俺のもののくせに、ある日突然に姿を消したのだから。



今からだいたい6年前、俺の幼馴染は突然姿を消した。

最初、俺はそれに気がつかなかった。

あいつが旅館の手伝いをしている間は俺は外で遊んでるんだから、ちょっと見かけなくてもすれ違っているんだろうと思っていた。

それでも、いつも付きまとってくるキョーコがあまりにも姿を現さないから、実家にでも帰っているのかと両親に聞こうと思ったら、何やらバタバタと慌ただしかったり、宿泊客とは違うらしい客人の対応に追われていて、聞くに聞けなかった。

そんな慌ただしさが落ち着いた後も、キョーコは姿を見せなかった。その頃には俺も尋ねるタイミングを逸してしまって、学校にもウチにも、そしてアイツの実家にも居ないらしいキョーコに、漸くもうココには居ないのだと理解した。

理解したら腹が立った。キョーコのくせに、アイツは俺に何の断りもなく消えたのだ。



キョーコが居なくなった後も、俺はよくキョーコのことを思い出した。

最初は宿題が面倒な時、キョーコにさせようとして、いないことに気づいた。

次はバンド活動の時。資金繰りに悩んでいて、こんな時にアイツがいれば、喜んで小遣いでも何でも差し出すのに、と。

デビュー前後もそうだ。俺は大人しく高校に通っているふりをしながら、歌の録音テープを芸能事務所に送り続けた。それが評価されても、波に乗って世間の認知度が上がるまでは、事務所からの生活面でのバックアップは最低限のもので、高校には通えたけど、旅館育ちの俺にとって既製品の食事や家事はまさに地獄だった。こんな時に何でキョーコの奴がいないんだと何度も腹を立てた。



だから、局のロビーでその姿を見たとき、一発でキョーコだとわかった。







(Side:キョーコ)

声をかけられ、その声に、すごく嫌な印象を受けた。

だから、振り向いてすごく後悔した。

声を聞いた時の比ではない。途轍もない嫌悪感に吐き気がする。

目の前の男が何か言っているが、ノイズが交じり認識することが出来なかった。

(こんなの、久々。吐きそう・・・ここ、局のロビーなのに)

目の前が滲んで、相手の輪郭がぼやけるも、この男が、先ほどまでテレビに映っていた『不破尚』であることは何とか理解した。


とにかく離れたくて、ふら付きながらも立ち上がる。

一歩足を引き、二歩目を下がろうとした時、

ガッ

「キャッ―――むぐ」

掴まれた腕に悲鳴を上げそうになった時、後ろから口をふさがれた。

優しい腕が私を包み、その腕は素早く私を後ろへと下がらせる。

目の前には、大きな背中。

「つ、敦賀さ、」

私の手を包む、後ろ手にしたままの左手が只管に温かかった。





(Side:蓮)

監督との話を終え、彼女の待つロビーへ進んでいたとき、遠目に彼女に近づく男が見え、俺は社さん言うところの『優雅な瞬間移動』でそこへと向かった。

彼女に近づく男には覚えがあった。

先日社長に見せられた要注意人物―――――不破 尚・・・・嘗ての彼女の『王子様』、不破 松太郎だ。





その日俺は、緊急で社長室に呼び出されていた。

隣に社さんを伴ったまま、社長から1枚の写真付きの用紙を渡される。

タイトルにはでかでかと

「要注意人物、ですか?」

「ああ、彼女よりもむしろお前のかもな?」

にやん、とする社長が俺に言う『彼女』など、決まっている。

「キョーコに関係があると?」

タイトルと共にさっと目を通した内容には、彼が最近デビューしたアカトキの歌手であることと簡単なプロフィールしか載っていない。

社長はその問いには答えず、社さんの方を向いた。

「社、出来る範囲で構わん。その男をキョーコに近づけるな」

そう言って、社さんに目で退出を命じる。

俺にはソファーを顎でしゃくった。

社さんを退室させるということは、彼女の過去がらみなのだろう。

俺は社さんに『よろしく頼む』と意味を込めて頭を下げ、ソファーに座った。

社さんは俺とキョーコの兄のような存在だけれど、だからと言ってキョーコすら知らないキョーコの過去を話すわけにはいかなかった。

俺はキョーコの過去をもともと多少なりとも知っていて、さらにキョーコが懐いた為の例外だったのだろう。キョーコが社会復帰するに当たっての導き手として、ナイトとして。

互いに席に着いた時、社長が先ほどの俺への質問への応答をした。

「その男は、例の旅館の息子でキョーコの幼馴染だった者だ。最近アカトキから歌手としてデビューした。」

そこで社長が葉巻をふかした。吐き出す息が重い。

「例の旅館が彼女を引き取りたいと言っていたからな。一応、常に動向を探らせていたんだ。彼女がデビューしてからは特にな。」

「それで、どうだったんです?」

「キョーコは化けるからな。デビューしてから素のビジュアルを晒すような機会も避けてきたし」

そう言うローリィに、内心やっぱり、と思った。京子は露出が少ないと思っていたが、意図的であったらしい。

「デビューしても彼女に気づいている様子はなかったが、息子がデビューしてきたからな。直接会うなり、素の彼女に会えば気付かんとも限らん。彼と会わせることで、心にいらん波風を立てることもあるまい?」

その言葉に、ローリィの屋敷を出て少したった日のことを思い出した。

キョーコは蓮が宝田の屋敷を出てから、不眠に陥ることが度々あって、普段は薬で眠るものの、あまりに長く続く時は、屋敷を出た蓮が泊りに来て、キョーコと一緒に眠った。

蓮が屋敷に来る前もあったことらしく、蓮と言う精神を安定させる存在が出来、なりを潜めていたのが、蓮がそばを離れたことで再発したらしい。

蓮が屋敷にいれば収まるかと思われたが、一度離れてしまったことで、本当に『傍』にいなければ眠れなくなってしまった。ゆえの同衾である。

そうして蓮に迷惑をかけることをキョーコは相当気にしていたけれど、このことは蓮の中の何がしかの満足感を甚く満たしてくれた。

けれど、売れてくるにつれ地方ロケや海外での仕事も多くなる。

だから、少しずつ、キョーコが一人でも、蓮や薬に頼らずに眠れるように慣らしていき、約1年、13歳を少し過ぎた頃には一人で眠ることが出来るようになったのだった。



ロビーでなど待たせるべきではなかった。

キョーコを後ろ手に庇いながら、目の前の男と対峙する。

「ンだよお前?オレ、そいつに用があるんだけど」

「悪いが彼女とは俺が先約なんだ。彼女に用があるなら事務所を通してくれないか?」

「プライベートに事務所なんざ関係ねーだろ。オイ、キョーコ。ソイツとの約束なんて次でいいだろ。」

そのあまりの言いように思わず苦言を呈する。

「君は、自分が優先されるのは当たり前だとでも思っているのか」

「キョーコが俺を優先するのが当たり前なんだよ」

人目に付くこんな場所、ましてや芸能人である自分が暴力など揮えはしない。それがこんなにももどかしく感じたのは初めてだ。

「君は、何か勘違いしているんじゃないか?」

「あ?」

握っている彼女の手から、徐々に震えが収まっていくのを確認し、彼女に声をかける。

「キョーコ、彼と会った事は?」

彼女が何度も横に首を振る。

俺は目の前の男が不愉快気に口を開こうとしたのを、遮るように言った。

「どうやらキョーコ違いのようだね?それとも君は彼女に対する妄想を抱くファンだったのかな?」

「フザケンな!!テメェの所有物見間違えるほど耄碌してねぇんだよ!!」

こいつは、どこまで!!

思わず、荒んでいた頃の自分が出そうになったその時、不破の怒声にびくりとした彼女に、いつまでもココにいる訳にはいかないと思いとどまる。

囲んでこそいないものの、遠巻きに此方をチラチラと意識する視線を感じた。

張りめぐらせた意識は、写真など撮られていないことを知らせてくれたが、明日には噂くらいになっているかもしれないし、このままで居ればいつカメラを向けられてもおかしくはない。

「ふぅ、本当に居るんだね?君みたいな危ない妄想癖の人間って。悪いけど、彼女が怯えている。俺たちはもう行くよ。君も芸能人なら、もう少し周囲の目を気にすることだね?心を病んでいると思われるよ?」

その時、彼のマネージャーらしき女性が来た所で、俺はキョーコを伴ってその場を去った。

ヤツはマネージャーに宥められながらも、キョーコの所有を主張し続ける。

俺は彼女に気がつかれないよう苛立ちを、噛みしめた奥歯に隠した。








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Author:常葉(トキワ)

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