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再構築りれいしょん⑥-前

2011.05.01.06:00




でぃべろぷめんと<前>



(Side:キョーコ)

キョーコは悩んでいた。それはそれは大いに。

原因は最近彼女の近辺に神出鬼没で現れる『不破尚』、ではなく。

(いえ、原因はもとはと言えば彼なのだけど)

敦賀蓮、その人である。

不破尚との邂逅以来不眠に陥っていたキョーコ、そこで、数年前と同じ特効薬が投与された。

キョーコは現在、数年前までは、同衾しても安らぎだけを与えてくれていた彼の存在に脅かされていた。

それは何も、蓮が一緒に眠るキョーコに警察を呼ばれるような悪戯をするだとか、そういうことではない。

(そもそも、コッチが落ち着いたと思った頃にまた現れる不破さんが悪いのよね。ええ、ええ、敦賀さんが悪い訳ではないわ)

キョーコはソファーの上に転がった。

(むしろ、悪いのは私よね)

小さくため息をつく。


今キョーコが居るのは、宝田の屋敷の自室である。

時間は夜10時を回った所。

最近は心に付きまとう妙な不安感も収まり、そろそろ一人でも眠れるだろうか、と思われた所で、また今日不破尚が現れ、元の木阿弥となったのである。

(でも、初めて会った時より随分ましよね?)

最初、見るだけで吐き気を催していた顔も、蓮や社を伴っていたことも相まって、表面上は普通に接することが出来るようになった。

しかし、接触の度毎に訪れる不眠を考えれば、実際の精神的な負担は推して知るべし、と言ったところである。


キョーコは寝間着に着替え、クッションを抱きしめながら蓮を待っていた。

自分がまだ12,13歳だった頃には当たり前だった、『一緒のベッドで寝るために蓮を待つ』と言う行為が、今はどうしようもなく恥ずかしく、キョーコは手元のクッションに顔をうずめる。

キョーコにとって、蓮は最も親しい友人の一人であり、兄のような、家族にも似た存在だった。

それが実は、友人だとか兄だとか言う前に、一人の『男』であったと気がついてしまい、キョーコは混乱していた。

この動揺が落ち着くまで、とにかく蓮と距離をとりたかった。

にも拘らず、完全に自分側の責任でそれもままならない。不眠を耐えて仕事に影響を出すなどしたくはなかった。

そしてそれを防ぐには、蓮の協力が不可欠なのだ。薬に頼っても、心の安息は得られないのだから。そうして、蓮に迷惑をかけている。

しかし、キョーコは蓮が笑って許容してくれるのをいいことに甘えている現状も自覚していた。

だからこそ、そんな我儘を通す自分が、自ら蓮と距離を取るようなまねもできはしない。何となく、二人の今までの関係上存在しなかったこの感情を持ちだすのはタブーのような気がした。

それでも芽生えた意識が、布団の隙間を僅かに開けさせてしまう。しかし、蓮は何も聞いては来なかった。


コンコン


ドアをノックする音に、キョーコはため息を飲み込む。

唯一心の底から安心できる彼との関係を壊す要素なんて、知りたくはなかった。ずっと、妹のままでいたい。

かつて、彼がそうしたように、今晩もキョーコは、自らの手で彼を自室に招き入れた。




(Side:社)

「あ、」

キョーコちゃんが小さく声を上げた。

俺の後ろにサッと隠れるキョーコちゃん。進行方向には最近『DARK MOON』の現場近くに度々出没する、要注意人物『不破尚』の姿があった。



今俺は、蓮から離れキョーコちゃんに付いている。

と言っても、蓮もキョーコちゃんも、もともと俺がスケジュール管理をしている担当芸能人であり、俺が初期からマネージメントしていた二人が二人、LMEの若手看板俳優になるんだから俺も鼻が高い。

とは言え、最近子役から抜けたばかり、かつ露出の少ないキョーコちゃんより、抱かれたい男No.1などの称号を取る蓮の方がファンに囲まれやすい訳で、普段俺が現場について回るのは蓮の方。

けれど、最近キョーコちゃんに例の『要注意人物』が付きまとっていて、俺がガードに付くことになった。

更にこれは普段からしていたことだけど、二人の早く上がれる日を合わせたりといったことに加え、少しでもキョーコちゃんが蓮の傍にいられるように、仕事の時間と現場を調整しまくった。

キョーコちゃんは不破が現れる毎に酷い顔色になっていたけれど、最近はそれも落ち着いている。でも、それは表面上のことであるのは判っていた。蓮が相変わらずキョーコちゃんと寝てる、いや、眠ってるみたいだから。(正直、この話を初めて聞いた時は思わず『犯罪!?』とか思ったよ。)

俺が不破を見ていてなんとなく思ったのは、キョーコちゃんにはもともと苦手なタイプの人間が居て、不破はまさにそのど真ん中だけれど、どうにも彼女の憔悴の仕方が普通じゃないってこと。俺はもしかして、キョーコちゃんは、不破が苦手なタイプに属するのではなくて、不破タイプの人間を苦手としているのではないかと疑っている。

蓮や社長は何か知っているみたいだけれど、俺には知らされていないから、かなりナイーブな問題なんだろうと、嫌でも察しがついた。

不破を知らないキョーコちゃんと、キョーコちゃんにイヤに馴れ馴れしい不破の関係は分からない。俺の中では、不破がキョーコちゃんに対する妄想を抱くストーカーって線が一番有力。で、付け回す不破をはっきり姿を見ないまま感じ取っていたキョーコちゃんは彼みたいなタイプが苦手になったんじゃないかとか、ハッキリしないだけにかなり気になる。

なんにしろ、予測が当たっていようがいまいが不破の奴をキョーコちゃんに近づける気はないけどね。不破のヤツがキョーコちゃんでどんな妄想をしているのかは知らないが、とにかく彼の態度は酷過ぎる。


(本当、彼にもいい加減にしてほしいよ)

もともとキョーコちゃんを探すなり待ち伏せするなりしていたのだろう。こちらに気がついた不破が俺たちの方に向かってくる。楽屋には不破とすれ違わなければどうやったって入ることはできない。

「おい、キョーコ」

「あら、こんにちは。不破さん」

予想通り、声をかけてきた不破に、俺を間に挟みながらも、キョーコちゃんが挨拶する。こんなあからさまに高圧的な不破にまで、きちんと挨拶をするんだからキョーコちゃんは本当にいい子だよ。

「私、急ぎますので」

俺はすれ違いざま、不破が動けないようにブリザードを発動した。

キョーコちゃんは彼と言葉を交わすくらいなら出来るようになったけれど、触れられれば未だに表面を取り繕うこともできない位のダメージを受けることになると思う。

以前、すれ違いざまに肩を掴まれた時は本当に大変だったから。そういう事情もあって、問答無用で相手を固まらせることのできる俺がついたのだけれど。

が、動けない体の代わりに、いい加減俺のブリザードにも慣れてきた不破が口を動かし続ける。

「急ぎますので、じゃねーよ!何なんだよお前、無視の次は他人行儀かよ?あいっかわらず色気も胸もねー女だな」

(これだから!!)

この男はキョーコに付きまとっては、要求するか、文句を言うか、悪しざまに言うかしかしない。

これでは、不破がキョーコちゃんとどんな関係であろうと二人の接触を邪魔せざるを得ないというものだ。

不破も芸能人だから、局を出禁になんて出来ないし、そのうえ他事務所だから動向を完璧に把握するなんて難しい。把握した所で、こちらにも動かせる予定と動かせない予定があるのだ。さらに言えば、ストーカーよろしく不破もこちら側のスケジュールを少しばかり調べているとしか思えない頻度で、予定を被らせたりしてくる。

向こうも売り出し中で忙しいだろうに、なぜわざわざこのような子供の嫌がらせじみたことをするのか、俺にはまるで解らなかった。




(Side:キョーコ)

不破は『DARK MOON』の撮影現場近くを筆頭に、ジャンル違いにもかかわらずキョーコの前に度々現れた。だんだん彼にも慣れてきたキョーコは、そうすると少しずつ頭が冷静に働くようになってきて、思い至ることがいろいろとあった。

(不破さんは多分、記憶を失う前の私を知っているんだうな)

数年前、記憶を失う以前の自分について父は、『とても辛いことがあって、それまでのことを忘れてしまったんだ』とキョーコに話した。

キョーコが自分の失われた時間に、一体何があったのか聞きたいと思ったのは、蓮と出会い、蓮との想い出まで忘れてしまった自分に、他にも大切な思い出を失くしてしまっているのではないか、そう思ったからだった。

そんなキョーコにローリィは、『過去を受け止められるくらい、心が強くなったらな』と笑った。その頃のキョーコは蓮がいなければ眠れなかったから、それ以上聞くことはできなかった。

(不破さんと、話がしてみたい)

不破に対する抵抗力のようなものが出来るとともに、彼の言葉も聞き取れるようになったキョーコであるが、彼の言動は余りにも不愉快で、正直なところ、彼と話して楽しいはずもないのことは分かり切っていた。

しかし、彼に対して余りにも強い嫌悪感を感じる自身を自覚しているだけに、キョーコの中には、もしかしたら歪んだ主観で彼を捉えているのかもしれない、という疑念があった。

そしてまた、キョーコにとっての失われた記憶の象徴とは『蓮』だったこともあって、自身の記憶喪失について、辛いことがあったという事よりも、楽しかったことも忘れているのかもしれない、という印象が先立っていた。

そのためキョーコは、不破と話すことで、そんな思い出のかけらを見つけられるかもしれない、と思うと、彼と話してみようという気になれた。

(話をして、もし、昔の話が聞けなくても、もう必要以上に構わないでって言おう。)

不破の迷惑行為に対し、はっきりやめるように言わなかった自分にももしかしたら非があるのかもしれない。キョーコは1度考えだすと、何だかその考えは当を得ている気がしてきた。何と言っても自分の主観は頼りにならないのだから、と。

(そうね。不破さんは、もしかしたら言葉にしなければ相手の心の機微が分からないタイプの人なのかもしれないし)

自身の人の印象に対する歪んだ感覚を重く受け止めているキョーコは、不破尚と言う人物をそう解釈してしまった。







(Side:不破)

『ショーちゃん、カッコいい!!』

『ショーちゃん大好き!』

『ショーちゃんは私の王子様なの』

小さなキョーコは笑いながら俺にそう言っていた。



『キョーコ、彼と会ったことは?』

成長したキョーコが、蒼白な顔で首を振る。何度も何度も。


ドゴッ

楽屋の備品である机が僅かに凹む。

祥子さんがびくりとして、こっちを振り向いた。

「しょ、尚?」

「何でもねーよ」


何もかもが気に食わなかった。

俺を知らないと言うキョーコも、立ちはだかった敦賀蓮も。

色んな意味で、敦賀蓮のことなど知りもしない態度を取ったのは、以前局の廊下で喧嘩を吹っ掛けたときにスカした態度で躱されたコトへの意趣返しだった。キョーコは必ず俺を優先するに決まっているから。

だが、そうはならなかった。キョーコは俺を知らないと言い、口一つきこうとはしなかった。そして、キョーコを背にしたヤツは、表情こそ冷静だったがその眼には焔が燃え盛り、今しも殴り合いになることを予感させた。

その様はまるで、キョーコは自分のものだと主張しているようだった。


「祥子さん。あいつの予定、わかった?」

「え、ええ。違う事務所だから、細かいところまでは分からないけど」

「ソ。いつも通ーり頼むわ」


俺は今、可能な限りキョーコと予定を被らせていた。

キョーコと会ったのは6・7年ぶりだし、俺も髪を染めたり背が伸びたり、格好いいのは変わらなくても、多少外見の変化があった。

それで俺が分からなくなるなんて業腹ものだが、アイツは抜けている所があるから、俺が『ショーちゃん』であることに気がつかなかったのだう。

話しさえできればすぐに俺だと気付いて、昔のあいつに戻るに決まっている。

そうすれば、やたらキョーコを可愛がっているらしい敦賀蓮の顔に泥を塗れるわけだから、それで数年前キョーコが勝手に居なくなった分はチャラにしてやろう。すぐに俺だと気がつかなかった分のツケはこれから払わせればいい。

そう思っていたのに、キョーコの周りはやたらとガードが堅く、なかなかアイツとゆっくり話すことが出来ない。


その苛立ちも、いい加減限界に来ていた。

敦賀蓮にやたらと懐くキョーコ。

キョーコ=京子だと知った俺は、業界のうわさで、子役時代からキョーコと敦賀蓮が親しかったことを知った。ずっと俺一筋だったくせに、俺と離れた途端に別のヤツに、それも選りにも選って敦賀蓮に走るなんざ。

(お仕置きが必要ダロ?)

もう、勝手に居なくなったこともチャラになんてしてやらねー。

自分は誰のものなのか、あいつに分からせねーと。


そんなことを考えていた俺は目の前で繰り広げられた光景に、自分の中の何かが、ぷつりと切れる音を聞いた。









Next:でぃべろぷめんと<後>
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Author:常葉(トキワ)

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