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完璧な人生の歩み方~ACT.88『守ってください敦賀さん』~

2011.05.02.06:00

(改)
注意:“今生の蓮とキョーコ”が前世の世界に迷い込みます。ただしそれは一夜限りの夢。そんな感じのお話です。




(Side:キョーコ)

「あれ?」

 気がつけばそこは雑木林の中だった。木々の間から夏を感じさせる日差しが差し込んでいる。
 なぜ自分はここにいるのか? 不思議に思いながらも一歩踏み出し、キョーコは違和を感じた。足元を確認すれば、伝線してビリビリになったストッキングが見える。
自分は靴もはかずに何故ここにいるのだろうか?――と、キョーコは思わなかった。
周囲の風景を見回したところで、また前世の世界を舞台にした夢を見ているのだと気が付いたからだ。

そして場面は今まさにストーカーに追いかけられている所だろう。
キョーコは左手に力を集中した。

(うん。夢の中だけど使えるわね)

そのとき…

ズドーーーーーーーンッ

橋の上からキョーコの目の前に魔界人が降ってきた。

「どうした…? もう逃走は終わりか? もっとボロボロになるm――――」

ドッッッッッッッッッグォーーーーーーーーーーーーーーーーンッッ

 魔界人のセリフも、そして余裕も続くことはなかった。それも当然だろう。

「な!!!」

魔界人を中心に、突然まばゆい光と放電がの嵐が巻き起こったのだから。

「ふん。普段から簡易の結界を張っているってわけ? 命拾いしたわね」

レイノは呆然とキョーコを見ている。
彼の周りの木々は焦げ、ところどころ炭化していた。超・局地的な雷により。(そう、自然現象であり仕方のないことなのだ。決して自然破壊ではない)

「キョーコ、どう言うことだ。お前の霊位が数分前とはケタ違いに上がっている」

流石の魔界人も、何が何やら分からないらしく常にない狼狽した姿を晒していた。

「ふふふ。私はね、アンタみたいなびっくり人間を退けるために和においては恐山!! 洋においては本場イギリス!! 攻守ともにぬかりなく修行済みなのよ!!!!」

キョーコは指差し付きで声高らかに宣言した。
だが相手も然るもの。

「クッ、クククク。益々気に入った。不破なんか関係ない。絶対にお前を手に入れるぞ、キョーコ」

手を出すことのリスキーさが跳ね上がったというのに、それを喜ぶとはもはや処置なしだ。全く本当に不健康な脳みその魔界人である。

「あんたにキョーコ呼ばわりされる謂れなんて無いわ。才能だけで碌に修練も積んでない半人前が私をどうこうできるなんて思わないことね」

キョーコはレイノの宣戦布告を鼻で笑った。そうしてもう用は無いというようにさっさとその場を後にした。

「俺は諦めないぞ」

そんなビーグルの戯言を背に聞き、しばらく動けないように呪いをかけてから。



(Side:蓮)

蓮がふと気がついたとき、そこは飛行機の中だった。
 そして状況を認識した時には既に夢を見ていることに気が付いていた。
自然の景観や気温は把握できないが、自身の服装から“夢の中が夏”ということを認識する。
そしてどことなく感じる既視感に、より正確な情報を求めて蓮は辺りを窺った。案の定、と言うべきか。マネージャーの社が見当たらない。

蓮は肩を落とした。これは前世の夢だ。それもあまり嬉しくない期間の。
今頃キョーコはストーカーに追われ、怯えている頃だろうか。そして、彼女を不破尚が助けているのだろうか。

イラッ

(落ち着け、俺。せめて、怖い思いをした彼女を怯えさせないようにしないと)

だが、平気でいられるだろうか。前世で辿った道筋を思い出し、また。

イラッ

 蓮は自分の周囲の座席から人がいなくなっていることに気がつくことはなかった。


ホテルに到着したが尖兵に出したマネージャーからは予想通り報告はなかった。前世通りの流れならば不破のことを隠している可能性が高い。

撮影班が帰ってくる時間近く、蓮は社にキョーコを迎えに行くよう頼んだ。ちゃんと百瀬に知らせてから来るようにとも釘をさして。
社が部屋を出て再び扉が開かれるまでの間、蓮はひたすら唱え続けていた。

(男は包容力、男は包容力、男は包容力、男は包容力、男は包容力、男は包容力)

当然、機内での苛立ちを表に出してキョーコを怯えさせないためである。が、唱えている最中も、自分を頼らなかった前世のキョーコを思い出してささくれ立つ。
ここは前世が舞台の夢なのだ。キョーコの行動はたいして変わらないに違いない。

(でも、だからって俺まで同じ行動を取る必要はない!!)

 自分が変われば世界は変わる。新たな人生を歩む蓮はそれをよく分かっていた。


――こんこん

「蓮、キョーコちゃん連れて来たぞ」

 その言葉に蓮は素早く扉の前へと移動し、ノブに手をかけた。

「敦賀さんっ」

瞬間、開いた扉の向こうから涙を瞳一杯にためた少女が抱きついてきた。
 それは間違えるはずもない――キョーコだ。



(Side:キョーコ)

キョーコはストーカーを自力で退けると、現場には何とか逃げてきたと伝えた。今はストッキングだけはき替え、何食わぬ顔で撮影に参加している。

何食わぬ顔で参加しつつも、自分の出番でない時はアンニュイな顔で沈んだ様子を演じておくのは忘れない。これで『仕事に打ち込み芝居の最中は切り替えながらも、心の傷は癒えない健気な少女』の出来上がりである。

途中、不破尚がやってきて何やらごちゃごちゃ言っていたがキョーコは『粗野な男の人が……今は怖いの、ごめんなさい』という演技で、周りの同情を買いつつガン無視した。

キョーコはストーカーに怯える少女を通す気満々であった。実際の所、呪文一つ、手の一振りで退けられるわけだが、折角おおっぴらに蓮に甘えられるチャンスをキョーコが夢の中とは言え逃すはずもない。


 結果――と言うべきか、キョーコは予定通り蓮の腕の中に収まっていた。
 より甘え倒すために怯える演技を全力で行いながら…。



(Side:蓮)

よほど恐ろしい目に会ったのだろう。蓮は前世での記憶とは比較にならない怯え様のキョーコに胸を痛めた。
 何故傍にいて守ってやれなかったのか。前世で感じた想いと合わさって、蓮は歯噛みした。

身を震わせ、蓮の傍から離れられない様子のキョーコを室内に促す。
一気に緊張が決壊してしまったかのような彼女の様子に、社さんも心配したのだろう。室内に一緒に入ってくる。
蓮は正直邪魔だな、と思ってしまったので飲み物でも出して社にはさっさと出て言って貰うことにした。飲み終わったタイミングでいえば厭味もないだろう。

キョーコが自分に抱きついたままであるのをいい訳に、蓮はそのまま彼女を膝に抱きあげて何があったのか尋ねた。
ぽろぽろと泣きながら、何があったのかをキョーコは事情も含めて包み隠さず蓮に話してくれた。
不破がキョーコを助けられなかったことを知り、蓮は内心で役立たずめ、と罵った。

自力でストーカーから逃げ惑わなくてはいけなかったキョーコを思えばこそ、蓮は付きっきりで傍にいて守ってあげたいと思わずにはいられない。キョーコが望んでくれさえすれば、蓮には何をおいても彼女を守る覚悟がある。
そう思いながらも、震える声で出来事を語る彼女を抱きしめてやるしかできない自分が蓮は歯がゆかった。

そうして、全て話し終えたキョーコはうるうるの目で蓮を見上げながら言った。

「敦賀さん、ご迷惑を承知でお願いします。…どうか、私を敦賀さんの傍に居させてください……。わ、わた、し、怖くて」
「迷惑なんかじゃない!! 俺が守るよ。俺が守るから、安心して?」

そう言いながら、蓮はキョーコをさらに強く抱きしめた。
誠実な騎士のような顔の裏側で蓮は思った。――ハァ、社さん、早くそれ飲んで帰って下さいよ――と。






その日の朝、キョーコはなんだかとっても幸せな目覚めだった。
まるで神の寵児から抱擁を受けた後のように、真に清らかな目覚めだった。

そんな聖キョーコと、現実世界の焦げて呪われている魔界人とは全く関係ないはずである。



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管理人のみ閲覧できます

2015.01.07.20:56

このコメントは管理人のみ閲覧できます

木椅子様へ

2015.04.17.05:40

感想ありがとうございます。そして遙かなる時を越えての返信になりまして、申し訳ございません。

このシリーズのキョーコちゃんの好感度ゲージは

敦賀さん>>>>>モー子さん>>>>善良な人々>|越えられない壁|>>魔界人>>>ゴキブリ>>>松太郎君≧世界滅亡を企む犯罪者

となっております(テキトー)。越えられない壁の向こう側の存在は全て完璧な人生のための踏み台だと割り切っています。最近はやりの何かを得るためには何かを捨てなければならないってヤツですね(違)。

妖精スレの方も楽しんで頂けたようで何よりです。
詐欺妖精さんは色々狂っていますね。狂っているものの中には恐らく恋愛機能も含まれていたのでしょう。



常葉
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どうぞごゆるりとお楽しみ下さいませ。
度々細かな変更はありますが、温かく見守って頂けると幸いです。

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