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幸せの探し方③

2011.04.19.18:42

3話(K)無自覚少女覚醒



 つい10日ほど前のことだ。その日、共演者にしつこく絡まれていたキョーコは幸か不幸かその場に遭遇した蓮の機転により助け出された。

 その流れで、送っていくと言う蓮に誘われるまま彼の車に乗り込んだ。

 正直、この時のキョーコは先輩俳優から漂ってくる苛ついたような気配に逃げ出したかった。

 しかしである。

 最近気がついたことであったが、温厚紳士と謳われる俳優、敦賀蓮はこういう親切な申し出を断られると余計に苛っとするらしい。

 ただでさえお怒りの様子のこの人をこれ以上刺激しないようにと、キョーコは謹んで申し出を受け入れた。

 それが功をなしたのか、蓮から不摂生の自己申告があり、不穏な気配はなりを潜めた。

 そして蓮の家で料理を作り始める頃には彼から怒りの波動は感じなくなっていた。


 料理を作り始めた時、キョーコは久々であるのに何の違和感もなく使える敦賀邸のキッチンで何故かふにゃ、とした気分になった。

 それはどこか“嬉しい”という気持に似ていた。

(敦賀さんたらまた何とかinゼリーで済ませてたわね!!)

 だとか

(社さんや私がいないと餓死しちゃうんじゃないの!?)

 といったように、料理をしながら彼女が考えることは喜びとは程遠く、車中で本人に行ったお説教だけでは足りなかった不満であるはずなのに。

 この時のキョーコにはまだ、そのふわふわほわほわとした感覚の正体が分からなかった。



 そして食後の片づけをしている時。

(敦賀さんは今回も残さずに私の料理を食べてくれた。)

 食事をしながら、最近の仕事や、一人暮らしの生活で感じたこと、そんな話をキョーコはした。

 他愛なさ過ぎる話を先輩俳優相手にして、自分はどうしたいのだろう。

 そう思うもキョーコは、蓮に『報告』するのが楽しくて仕方がなく、やめることが出来ないのだった。

 後輩のこんなどうでもいいような報告を、この先輩俳優ときたらニコニコしながら聞いてくれるのだから質が悪い。
 キョーコはそう思うと同時に、流石は温厚紳士と名高い敦賀さんだ、と尊敬の念を募らせるのだった。

 しかし食後のコーヒータイムとなり、キョーコの報告も区切りがついた時、その日の報告会は終了となった。

「最上さん、話しがあるからソファーに座って」

 蓮がソファーに腰掛けたキョーコに淹れたてのコーヒーを渡し、彼自身も隣へと座った。

 そんな短い動作の中、キョーコは蓮の『話し』が何かを先読みし、ローテーブルの上にカップを置いて、彼の前へとひれ伏した。

「も、申し訳ありませんでしたあああああああああ!!!!!」

「なんで謝るの?」

 声に怒りは感じられない。これは嫌味でなく、普通に疑問からの問いのようだ。

「何故って・・・・私、大先輩であらせられる敦賀さんのお手を煩わせて」

 常に多忙なスケジュールをこなす先輩俳優に、わざわざ絡まれている後輩を助けるなどと言う雑事を行わせてしまったのだ。

 改めてそう考えるとキョーコは己の不甲斐なさで恥ずかしくなった。

 であるのに、この先輩俳優ときたら何故こんなにも優しいのだろうか。と理不尽な怒りも覚える。

 自分にそれだけの価値があるのだと錯覚してしまいたくなり、同時に決してそんな筈はないと冷静な声が断じる。その繰り返しが、期待をもった分だけキョーコに苦い思いを与えた。

「そんなことはいいんだよ。それからああ言うしつこく絡んでくる手合いには先約があるって言いなさい」

(正直、私に甘すぎではないですか? それとも皆にそうなのですか? でもこんなに構っているのって私くらいですよね?)

 頼りない後輩へ態々助言を与えてくれる蓮に、キョーコの中では色々と聞きたいことがぐるぐる回った。

 しかし、今はひとまず置いておく。

「先約ですか? でもいつも先約があるとは限らないんじゃ・・・・。嘘にしたって、先約って言うと相手のあることですし」

 誘いを断るもっともらしい理由であるとは思ったが、キョーコとしては寧ろ嘘がばれた時のことが気になった。

「相手を聞かれたら俺の名前を出して? 先輩命令で呼びつけられているとでもね」

「な! 紳士と評判の敦賀さんがそんなことするなんて誰も信じませんよ」

「でも先輩命令の先約って言うのは嘘じゃないよね。」

 蓮はそう言って悪戯っ子のような顔で笑った。

 それにキョーコも釣られて思わずクスっと笑ってしまう。

「まぁ確かに、今の会話はそういうことかもしれませんが」

「じゃぁ次からはそうしてね」

「次って、そりゃ、最近なんだか絡まれやすいですけどそう何度も何度も・・・・」

 ちょっと厄日が続いていると考えていたキョーコには、それがいつまでも続くとは思えなかった。

 キョーコには常識の範囲内であるその言葉も、蓮相手には余計なひと言だったのだろう。
蓮の笑顔がウソ臭く輝いた。

「最上さん」

「はひぃぃぃ!!」

 油断していたために変な声を飛び出させてしまったキョーコは、次に一体どんな嫌味が飛び出してくるかと身構える。

 が、発せられたのはキョーコにとって斜め上の言葉だった。

「最上さんは俺の食事を心配してくれるよね?」

(何を当然のことを・・・・。)

 思ったことをそのまま言いそうになるのを堪え、キョーコは少し悲しくなりながら、相手の意図を汲み取り言葉を返す。

「た、ただの後輩風情があつかm」

 むぐ

(あ、あれ? 間違った?)

 最後まで言わせてもらえずに蓮の手によって封じられた言葉は、そうであっても考えたことを相手に伝えるには十分であったようだ。

「そんなことはないから。君に心配してもらって俺は嬉しいよ? 最上さんは人のこと心配する気持ち、分かるよね。俺のことを心配してくれているんだから。」

 一言一言をかみ砕く様な、先輩俳優の優しい言葉を受けて、キョーコは漸く本当に言いたかった言葉を吐き出せた。

「勿論です!! この不肖最上キョーコ、いつも敦賀様のことを(ちゃんと食事していらっしゃるかと心配に)思っております!!」

 誤解を招くキョーコの言葉に表情を消した蓮は、彼女が疑問符を浮かべる前に言葉を返した。

「うん。じゃぁ、俺の気持ちもわかってくれる?」

 蓮の顔は既に無表情でも、ましてや似非紳士でもなかった。

「敦賀さんの気持ち?」

「そう。俺もね、君が俺の体のこと心配してくれるように、君の身を心配しているんだよ」

 そういった彼の顔は慈愛に満ちた神々スマイル。


 この日、一体何がどういう訳なのか、怨キョが干からびる代わりにキョーコの周りをピュアキョが舞った。



 § § §



「というわけなのよ」

 ラブミー部の部室で、奏江に対しキョーコは意識改革のきっかけとなった日の出来事を端々省きながらも話して聞かせた。

「それで敦賀さんの言いつけ通り、自衛に努めてるってわけ?」

 粗方の話を聞き終えた奏江が問う。

 しかしキョーコの答えは

「そうなの、かなぁ?」

 という至ってあやふやなものだった。

「何で疑問形なのよ? どう聞いたってそうとしか取れないわよ」

「えーと、なんていうかね」

 キョーコには奏江の出した答えとは似て非なる答えがあった。

 ただそれを口にするのは親友相手でも恥ずかしく、伝えるには勇気がいる。

「なによ」

 それでも奏江の相槌に促されるように言葉を発したのは、誰かに聞いて欲しい思いがあったからなのかもしれない。

「あの敦賀さんなのよ? 若手N0.1俳優で、抱かれたい男No.1で神の祝福を一身に受けたような人なのよ!!!」

「え、えぇ」

 ものは勢いと主張した彼女に、奏江の顔は心なしか引きつる。

「何しでかすかわからない後輩だから、という理由であろうと気にかけてくださっているのよ!!? そんなすごい人に心配されていながら万が一にも問題を起こして気をもませたりできないじゃない!! そうやって考えているとね? そんな大層な方に多少なりとも気にかけていただいている私自身っていうものをもう少し大切にしなくちゃって思えてきたのよ!」

 そこまで勢いのままに言いきると、間が持たない所へ無理に言葉を発するように続く言葉を捻りだした。

「そうしたら、芋ずる式で周囲の視線とかも意識して・・・・そしたら自分がどんな目で見られているのかも分かるようになっちゃって・・・・・・。」

「で、今に至るわけね」

 納得の表情で奏江が頷く。

「そうなのよ。私もね、最初は気のせいだと思っていたのよ? ただ意識しだすと、私、随分といろいろな勘違いをしていたのかしらって」

「たとえば?」

 自身の勘違い話しをするなど羞恥プレイもいいところであるが、聞かぬは一生の恥だと自身に言い聞かせ、キョーコは今までの自分の意識のずれ具合を自覚しただけに、また何か見当違いをしていないかを親友に確認してもらうことにした。

 そしてそんなことを考える頭の片隅で、こういう思考を持てるようになったことこそ敦賀さん効果だわ!! と感動していた。

「えーとね、まず最初にあれ? って思ったのはよく声を掛けてくる男性方ね。今まではこんな若輩者にわざわざお声をかけてくださるなんて!! って思ってたのだけど、よく考えてみるとこちらに用事があると言ってもお構いなしだったりするの。お仕事に達磨屋のお手伝い、ラブミー部の雑用もあれば学校や養成所で勉強もしなくちゃいけないのよ? とてもではないけれどあまり親しくもない男性とプライベートでお付き合いする時間なんてないのよ」

 一人暮らしを始めてからは達磨屋の手伝いはなくなったとはいえ、その分芸能界での仕事が増えたわけだから、忙しさは全く減らないキョーコである。

「そういう事情もあるから、連絡先とかのやり取りもお断りするのよ? 勿論事務所の支給品だからって言うのが一番だけれど。それなのにあんまりしつこく食い下がってくるから、ある時気がついてしまったの。あ、この人は新人の私を気遣ってるわけではないんだって」

「気づくのが遅すぎるのよアンタ」

 奏江に突っ込まれるが、キョーコとて一応言い分があった。

 言い訳にもならないこともまた既に自覚済みであったが、言うだけ言ってみる。

「だって、悪意とか全然感じないんだもん(怨キョも反応しないし)」

「そりゃね。下心は悪意じゃなくて好意に隠れているんだから」

「そーなのよねぇ。でもね、モー子さん、だってまさか色気もお金も遺産もない小娘に下心で近づく人間がいるとは思わないじゃない!? でも、違うのよね。何にも持ってなくても、天上人の敦賀さんが気にかけてくださったりするんだもの。この貧相な身一つにだって釣られる殿方もいるわよねぇ・・・・」

 はぁぁぁ~~~~、と全く有難がっていないことがありありと分かる、どんよりとした空気を吐き出す。

「なんて、今は思うに至ったのよ。でもね? 世の中の男性方々はそんなに飢えているものなの? それともやっぱり私の自意識過剰なの? あるいはこれが世に言うモテ期? それともプリンセス・ローザ様とモー子さんのコスメマジック? はたまた神の寵児であらせられる敦賀さんのご加護? なんだか不特定多数の方に女性として見られている気がするのだけど。・・・・・身の危険を感じる方向で」

 机の上で上半身が生ける屍となり果てたキョーコは、行儀悪くも口だけは動かした。普段のキョーコの素行を慮るに、彼女の疲労が窺えるというものだ。

「そんなわけで、敦賀大先輩のありがたいご助言に従って、自衛に努めている所存です。はぁ。気づきたくなかったわぁ、こんなこと。」

 そうであったならこんな気苦労を知らずに済んだものを、というのがキョーコの考えであった。

 そこには知らずともどうにかなったのだから、知らずにい続けても問題なかったのではないか? という希望的観測がある。

 しかし、第三者の目はいたって冷静なものだった。

「あら、よかったじゃない」

「えぇ! なんでぇ、モー子さ~ん!?」

「あんたが言ったんでしょ? 身の危険を感じるって。今までの曲解思考のまま相手の意図に気がつかなかったら本当にどうなっていたか分からないわよ? 天然でなんていつまでも躱しきれないんだから。敦賀さんに感謝することね。」

「それもそうね。本人も気がつかないそんなところまで気をまわして諭してくださるなんて・・・・やっぱり敦賀さんは偉大だわ!! 尊敬するわ!!!」


 愛の欠落者の集うこの部室。

 成長はしつつも病は治らず。

 崇拝する大先輩へ祈りをささげるラブミー部員1号なのだった。






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2012/1/8  リメイク
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Author:常葉(トキワ)

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