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石に願いを~契約の十字架~

2011.06.08.06:00


題名はこの通りですが、ファンタジーやパラレルではないです。
設定はB・J編後。





 石に願いを~契約の十字架~


「なぁ~蓮、お前本当にこのオファー受けるのか?」

「どうしたんですか?社さんがそんな事言うなんて珍しいですね。」

「だってこのドラマのロケ地って『本物』使うって話なんだぞ!?」

 怖くないのか!?と問う社に蓮は不思議そうに答えた。

「実質的な害がなければ別にいいじゃないですか。・・・あ、もしかして社さんて見えたり影響を受ける人なんですか?」

「いや、全く。」

 でも怖いものは怖いんだ、とそれ以上に言いつのるのは兄貴分のなけなしのプライドでやめておく。

「じゃあ別にいいじゃないですか。」

 そう言って、当代No.1若手俳優は朗らかに笑った。
 その一方では、本物のホラースポットでの撮影に今から不安を感じているマネージャーの――――――

「キョーコちゃんにお守り作ってもらおうかな。琴南さんが効くって言ってたんだよな」

――――――と言う言葉にピクリと反応しながら。



 § § §



 後輩タレント京子の、否・・・片恋の相手、最上キョーコの17歳の誕生日プレゼントを探していた時、蓮がクイーンローザに目を留まめたのは何も偶然の話ではなかった。

 遡れば、撮影中に何となく目にとまった服を見ていたのが切っ掛けだ。

 女性の服、それもかわいらしい部類のそれを眺めているうちに、彼の脳内で既にそれを身にまとうキョーコの姿が浮かんでしまったのは仕方のない話だろう。

 しかしそのせいだろうか。気がつくと蓮は随分と熱心に服を見つめてしまっていたらしい。
 案の定、敏腕マネージャーからの鋭い突っ込みが入った。

「付き合ってもいない女性に服だのアクセサリーだのを贈るなよ。あ!高すぎる物もダメだぞ!つき返されるのが落ちだからな!!」

 ―――――などと誰を思って服を見ていたのかなんてお見通しの言葉を頂戴することになる。

 が・・・その時には、実は既に彼女への誕生日プレゼントに宝石を買った後だったりした訳で・・・。
 
 恐らく社さんや最上さんからすれば、あの宝石は『高すぎる』に分類されてしまうのだろうなぁ。金銭感覚に隔たりがあるなりに、蓮は何とか正解を導き出したのだった。

 社からの助言は改めて考えてみれば全くの至言である。
 けれど用意した貴石は、自分が彼女に想いを込めて選んだもの。

 彼の中に渡さないという選択肢はなかった。

 そこで考え付いたのが花の中に石を仕込む、ということだった。
 これを思いついた時、花にクイーンローザを選んだのは、赤い薔薇がプレゼントとしてオーソドックスだったから、ではない。

 赤い薔薇は、彼女の誕生花。『愛情』の花ことばを持つそれもまた、貴石と共に彼女のためだけに贈りたいと彼は考えたのだった。

 そして、彼女の誕生花を調べていた時、蓮は一緒にある物を見つけた。一見地味なソレが彼女に関わった途端、何だか特別なものに思えた。
 ロケ先で見かけた折についつい買ってしまった時には、蓮は自分自身を笑ってしまった。

 以来『ソレ』は彼のポケットや鞄の中にそっと忍ばせてある。

 彼が石をお守りのように持ち歩くのは、泣いて別れを惜しむ彼女にアイオライトを贈って以来のことだった。



 § § §



「い、嫌です!!」

 LMEタレント部門主任を前に、思わず否定の叫びを上げたキョーコは慌てて口を覆った。
 彼女が師と仰ぐクー・ヒズリに言われたことを思い出したためであったが、やはり嫌なものは嫌だというのが彼女の本心である。

「嫌だと言われてもなぁ。先方からの指名だし、君の予定は空いていたし、何と言っても君の『未緒』役が来たのは彼のPV出演のお陰だろう?」

 その言葉にキョーコは椹に恐ろしい形相を見せた。
 決して脅す意図があった訳ではないのだが、タレント部門主任にはそうは映らなかったらしい。彼は慌てて言葉を付け足した。

「いやいやいや!!勿論そのPV出演依頼はキュララのCMを自力で取ってきた君あってこそだが・・・・。」

「そ、そうですよ!!元を辿れば『未緒』はPVじゃなくてCMのお陰です!!」
 
 感謝すべきは黒崎監督です!!キョーコはそう主張した。

「でもまぁPVでの演技を見てのオファーだった訳だし、恩返しだと思って」

「恩なんてありません!!」

「あ~すまんがこれは決定事項だ」

 椹に目で『諦めろ』と言われ、キョーコは渋々引き下がるしかないのだった。

 キョーコの下に来たのは不破のPV出演の依頼で、その役柄が不破の恋人・・・・ではなく不破に捨てられた『元恋人』の役だった。

 それも役柄も含めた直接の指名なのだから、キョーコからすれば明らかにコチラの怒りを煽るための嫌がらせだとしか思えないし、実際にそうなのであろう。

 役作りをしようとするだけでも、相手の厭味が透けて見えるわ、忌まわしい記憶がよみがえるわ・・・そう言った訳でキョーコはイライラした。

 が、百面相を一人で繰り広げていたキョーコは突然ハッとし、固まったかと思うと『違うわ!!』と声を張り上げ首を振った。

 どんな状況であろうと仕事に真剣に向き合う先輩俳優の姿を思い出したのだ。彼だって辛い役をやり遂げた。私は彼に認められたいのではなかったか?

 キョーコは自身に言い聞かせた。今、この時こそ、プロ根性を見せる時だ!!と。


「ふふふふふふ・・・・。あくまでこれは男Aと、その恋人B、そして元恋人Cなのよ!!キョーコ!!」


 役者魂よ今ここに降りて来い!プロ根性を見せるのよ!とキョーコは必死になって繰り返し言い聞かせた。

 ・・・キョーコが今回このように死に物狂いで自身に暗示をかけているのには理由があった。

 キョーコが憎き元幼馴染と対峙するのはあのベインデー以来のこと。・・・・現在季節は小暑であるから、実に数カ月ぶりの対面となる。


 キョーコには危惧があった。
 キョーコは蓮と演じた『ヒール兄妹』を通して、あの悪夢の箱をとうとう開いてしまい、そして気づけばあんなにも感じていた幼馴染への憎しみはすっかり薄らいでいたのだ。

 勿論、今回のPV出演に対する拒否反応が示す通り憎いには憎いのであるが、あれは寧ろ反射に近いもので、以前の幼馴染に対する憎悪を考えれば「すっかり薄らいだ」と言える。


 これが一体何を指し示すのかキョーコには判断しかねた。

 悪夢の箱を蓮に開けられて、昔の自分が持っていた『人を愛する心』を取り戻してしまった今、嘗ての幼馴染と会うことで、不倶戴天とまで思った相手にまた心をときめかせてしまうのではないか・・・・というおぞましい予感までした。

 それは蓮への恋を自覚したキョーコにとって許しがたいことだ。

 蓮とキョーコはただの先輩後輩。恋人などではない。
 けれどそんな事とは関係なく、ただキョーコは裏切りたくないのだ。自分自身の蓮への想いを。


 そんな事態にならずとも、あるいは逆に相手の顔を見た途端に薄れたと思っていた憎しみが再燃し、新たな自分自身を作り上げてきた『演技』が出来なくなるのではないか、と言う不安もある。

 そうした諸々の予測がキョーコを渋らせていた。いくら渋ったとしても現状は覆らないけれど。

 だから、だろうか・・・・キョーコは思わず縋ってしまった。自分に勇気と自信を与えてくれる存在に。



 § § §



 事務所に立ち寄る=ラブミー部に立ち寄る=キョーコに会いに行く。

 この三段活用はもはや蓮と社の中では当然のように成り立っている図式である。

 とは言っても最近忙しさを増しているラブミートリオ・・・・とりわけその1号たる最上キョーコに会える確率はそう高いものではない。
 だがこの日は一体誰の運が良かったのか、蓮とキョーコはラブミー部にて対面することが出来たのであった。

 そして・・・・

「敦賀さーーーーーん!!!」

 セツカの後遺症、いや、蓮にとっては置き土産だろう。

 LMEの看板俳優が絶賛片思い中である少女は、部室に訪れた彼の顔を見るや否や安堵と喜びもあらわに抱きついてきたのであった。

「も、最上さん?どうしたの?」

 時間になったら迎えに来るとのマネージャーの言葉を背で受け止め、扉を後ろ手に閉めながらキョーコに尋ねた。すると彼女はハタと覚醒し、慌てて彼から離れていってしまう。

「すすす、すみませーーーーん!!」

 突然抱きついたりしてごめんなさいぃぃ!!大変失礼いたしましたーーー!!ふ、服!皺になったりしていませんか!?あぁあああ、ご挨拶もせずに誠に申し訳ございません~~~お早うございます敦賀さん!!

 もう少し抱きついてくれていていいのに・・・・と考える先輩俳優に気づかぬまま、キョーコは弾丸のごとき謝罪の言葉と共にぺこぺこと頭を下げ、そのまま挨拶へと移行した。



 それはともかく、現在。

 落ち着きを取り戻したキョーコがお茶を入れ、部室のソファーに落ち着いた二人は、そこでやっとまともな会話のキャッチボールを始める。

「それで、どうしたの?何があった?」

 病的ブラコンシスコン兄妹を演じていたとはいえ、さすがに「最上キョーコ」が突然彼に抱きつくなどと言うのは今までなかったことだ。

「実は――――…」

 そこで蓮が聞かされたのは拒否権もなく再び不破尚のPVへ出ることになったという話だった。

 怒りに我を忘れて演技が出来なかったらどうしよう・・・・そう言って今にも泣きそうになっている彼女をどうして放っておけただろうか。

 蓮は目の前の少女がもう一つ、とても重要な不安の理由を綺麗に隠し果せている事には気づかぬまま、どうにか少女を元気づけようと考えた。いつかの様にプロ根性で話を纏めるのは何故だか躊躇われる。

 あの悪夢のようなバレンタインデー以来、不破尚との久々の接触となるらしい彼女に心配はあれど、不思議と蓮の中に苛立ちは湧かなかった。

 今までの蓮ならば、例えキョーコ自身に拒否権がなかろうと不機嫌になって少女を怯えさせていた筈だ。

 そうならずに済んでいるのは、今この場で幼馴染に関係する話をしながらも、キョーコが必要以上に不破に捕らわれて怒り狂ったりしていないためだ。

 少女の目には間違いなく“彼自身”が映っていた。



「最上さん、手を出してくれる?」

「はい?」

 蓮は手のひらを差し出したキョーコの手を取り、最近持ち歩いていたソレを懐から取り出し、乗せた。

「悲しみを吸い取る力はないけど・・・・君が君自身でいることを支えてくれる石だよ」

「私自身で、いる・・・?」

 キョーコは不思議そうに首をかしげ、手のひらの上に載せられた石を見た。おはじきよりも2回りほど大きな平たい丸い石。濃い琥珀色に黒の十字架模様が入っている。

「キャストライト・・・君の誕生石でもあるから、お守り代わりに君にあげる。」

「えぇ!?い、いいんですか?」

 蓮の内ポケットから出てきた石に、大切なものなのでは?とキョーコは無言の内に蓮へと尋ねた。

「君は俺のお守りになってくれたからね。いつか君に渡そうと思って持っていたんだ。」

 実際はヒール兄妹を演じる以前から持ち歩いていたのだが、ここは口実のために黙っておく。

 その時――――

「あぁ、そうだ!」

 蓮が名案を思いついた!とばかりに邪気なく笑った。
 ヒール兄妹を演じて以来、蓮はキョーコに時々こんな顔を見せてくれるようになった。

「もしその石を持つだけじゃ不安なら、約束をしようか」

 そう言って覗き込んでくる蓮の瞳がきらきらと輝いていて、キョーコは何も考えぬままに頷いてしまう。
 
 本当は、蓮がキョーコのためにくれたお守り、それだけで彼女には有り余るほどの勇気と自信が湧いて来たのだけれど。

「約束、ですか?」

 蓮が機嫌よさそうに微笑んで頷く。

「そう。キャストライトに与えられた言葉は『聖なる契約』なんだって。だからPVを君らしくやり通す、って俺と石に約束して?・・・君ならきっと約束を守れるよ」

 なんと言っても俺たちがする約束は、聖なる契約だからね。
 
 そう言って蓮は石を持つキョーコの手の上に自身の手を重ねる。それは何だかまだこの世に『ヒール兄妹』が存在していた頃のことを思い起こさせた。

 でも、あの頃とは違う。あの頃よりももっともっと蓮はキョーコの中で大きな存在になっていて、キョーコは彼が自分にとってどんな存在なのかを認めているのだ。

 キョーコは頷くと、きゅっと先輩俳優の手を握り、目の前の男と、しかと目を合わせた。

「私、最上キョーコは役者の誇りとプロとしての矜持を持って、立派にこの仕事をやり遂げることを・・・敦賀さんと敦賀さんの下さった石に誓います」

 そう言って祈るように静かに瞼を閉じる。二人分の手のひらで温もりを持った石の感触を感じながら、キョーコは心の中でこっそりと付け足した。

(『最上キョーコ』が心をときめかせるのは、これから先、ずっとずっと・・・あなた一人だけだと約束します)

 秘密の約束を終えるとキョーコは瞼を開けて目の前の俳優に微笑みかけた。

「ありがとうございました!!やっぱり敦賀さんは私に勇気と自信を与えて下さるみたいです」




 キューティーハニー・スマイルの炸裂に、無表情のまま葛藤する美貌の俳優。

 そんな彼とは裏腹に、その日のラブミー部には穏やかな時間が流れたのだった。




(後編へ)



2011/12/3 リメイク版差し替え
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●また、管理人は考察上、あるいは二次創作文中の設定上、登場人物に対し批判的、否定的な扱いをする場合があります。
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