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石に願いを~運命を変える赤い瞳~

2011.06.09.06:00


このお話は、『石に願いを~契約の十字架~』の続編となっています。





 石に願いを~運命を変える赤い瞳~


 蓮はその光景を遠くから、ただ茫然と見つめているしかできなかった。

 あんなにもヤツに憎しみを抱いていた彼女。ヤツを見るたびに怒り狂っていた彼女。

 何故彼女は今、あんなにも平然と不破と接しているのだろうか。



 仕事はきっと平静にやり遂げるだろうと、確信すらしていた。

けれど同時に、役者の立場から降りた『最上キョーコ』としては?
 彼女はまた、なりふり構わぬ憎しみを滾らせるのだと・・・そう思っていた。今までの彼女を思い返せば、それは確信に近い予測だった。

 だから俺は同じ局にいることを口実に、彼女を送って行こうとPV撮影のスタジオ近くまで来たのだ。

 そこで、見てしまった。遠目に見ても分かる、不破と何事か話しながらも落ち着いている彼女の様子。


 それを見て思った。彼女は不破を許したのか?・・・と。

 最近、不破は頻繁にメディアに取り上げられていた。『不敗神話』だと。
 怒りで我を忘れることを不安がっていた裏で、彼女はヤツにまた心奪われていたのではないか?

 彼女はまた・・・・ヤツのものになるのか?



 不破に憎しみを注ぐ彼女を不愉快に思っていたくせに、どうだ?

 いざ『そう』でなくなったら、そのことにこんなにもショックを受けている。

 そうして、茫然とただ見つめるしかない俺を差し置いて、それは起きた。

 装飾過多の男が彼女の腕を引き、その腕の中に彼女を収め・・・・・その顔をゆっくりと彼女に――――――


 動かない足を無理やり床から引き剥がす。

 『その瞬間』など2度と見たくなかった。



 一人きりの車内で後悔の底に落ちて行く。

 もしもここに先にタクシーで帰ったマネージャーがいたならば『敦賀蓮』にあるまじき状態の彼を叱り飛ばすなり、元気づけるなりしてくれたに違いないが、残念ながら居はしない。

 そしてそのことが今は寧ろ有難かった。
 きっと今、心許している誰かと居たなら八つ当たりする自分を抑えられそうにない。



 俺はもっと危惧するべきだったのだろうか。不破を語りながらも怒りを露わにしなかったあの日の彼女を。

 もしやあの日彼女が不安がっていたのは、その本当の理由は・・・・ヤツを許し、再び愛し始めたからだったのではないか?

 彼女がヤツの話で怒り狂わなかったことに、ヤツの話をしながらも『俺』を見ていた彼女に、危惧を抱くどころか喜びさえ感じていた鈍麻な自分を殴ってやりたい。
 そう、心底思った。

 彼女の運命の先にいるのは・・・・やはり、不破なのか。運命に抗うことは、出来ないのか。ならば俺は・・・・

――――――――――…諦めるしか、ないではないか。




 数日前、重ね合った手のひらの温もりを、まだこんなにもはっきりと思い出せるのに。

 彼女の頬笑みがこんなにも瞼の裏に焼きついているのに。


 彼女が酷く・・・・遠かった。






§ § §






 PV撮影の当日。

 少し早めに入ったお陰で、キョーコは不安の原因であった幼馴染に会うこともなく、楽屋で準備を済ませて石を取りだした。

 しかしそれはいつもの青い石ではない。
 悲しみを吸い取ってもらうのではなく、立ち上がり、進む勇気と自信をくれる石。黒い十字模様の、契約の石。

 手のひらに包み考えるのは、この石の贈り主とのことだ。

 『私』は演じきれる。『私』が心ふるわせるのは敦賀さんだけ。

 そう約束の言葉を思い出し、彼の手の温度を思い返した。


 聖なる契約―――――――

 それは結婚の宣誓のような響きだ。
 慕わしく思う人に、誓いを立てるようにして交わした約束は、それこそ本当に・・・。


 実際は全く違うのだとしても、蓮と契り合ったことは永遠にも値する思い出になるだろう。

 決して本当に夫婦の誓いを立てる日は来ないのだとしても、蓮がキョーコのためだけにかけてくれた魔法。それだけで、この先も歩いていける気がする。



 キョーコがそんな風に黙想していると、楽屋のノックと共にスタンバイの声をかけられた。

 もう、胸に巣食っていた不安はなかった。




 § § §




 最近ずっとキョーコに会っていない。バレンタインデーにあいつのファーストキスを奪ってやって以来だから、俺に会ったとたん怒り狂うだろうキョーコを早く見たいのに、全くと言っていいほど会えない。

 今までは祥子さんに頼めばあいつのスケジュールの一つや二つ調べがついたのに、最近のキョーコの奴の予定はほとんどが『不明』。数少ない把握できた予定の現場に行ってもキョーコらしき影は見当たらない。

 かと言ってこの!『俺』が!不敗神話で話題沸騰中のアーティスト、『不破尚』が!!スタッフにキョーコごときの行方を尋ねるなんてもってのほか!!

 だからって闇雲に探すのは不破尚のカラーじゃない。ならどうするか・・・。

 こちらからアイツを呼び出せばいい。

 あいつの予定がようやく掴めるようになったのは先月の終わりごろで、断れない状況を作り出すために時間がかかったが、その分バレンタインデーにプラスして怒りを煽る演出もした。

 そうして今日、PV撮影の当日。前の歌番での収録が押して入りはギリギリになった。

 撮影はすぐに始まり、スタジオに入った時には既に別人のようになっていて、キョーコのやつの怒り顔を拝むことはできなかった。

 撮影中、我を忘れて怒りをぶつけてくるかとも思ったがキョーコはそんなこともなく演技した。
 
 それは腹立たしかったが、素人の俺でも分かるほど前回の天使よりも演技力を増しているアイツに俺はむしろ感心した。
 キョーコが成長しているのは当然だ。それくらいできねーでこの俺に追いつける筈がないんだからな。


 俺のことで頭をいっぱいにしながら演技力を身につけただろうこいつに、PV撮影後、俺はニヤつきを抑えきれないままスタジオを出る。

 楽屋へと向かっているキョーコを見つけ、俺から声をかけてやる。
 キョーコは呼ばれた名前に反応し、振り返った。


 ・・・・・だが、違うだろう?何なんだよお前。もう撮影は終わっているんだぞ?まさか俺がファーストキス奪ってやったことを忘れたってのか?

 声をかけた俺に帰ってきたのは

「お疲れさま、ショータロー・・・・ああ、ごめんなさい。不破さんでしたね。何か御用?」

 そんな、落ち着き払ったキョーコの言葉だった。

 俺を、キョーコが、この俺を!!過ぎていく風景のように何の感慨もなく扱いやがった・・・!!もっと、違うだろう?お前は俺への憎しみで頭がいっぱいのはずだろう?!

 忘れたなら思い出させてやる!!そう思って。俺はキョーコを引き寄せた。その瞬間―――――――



 痛っっっっーーーーーーーーーーーー!!!



 こいつ!!向う脛を思いっきり蹴りつけやがった!!気合で声を呑みこみ、目の前の暴力女を睨みつける。
 
 痛みに悶えて手を離した俺を、キョーコのやつが侮蔑もあらわに眺めていた。

「同じ手が通じるとでも思っていたの?」

 そしてアイツはそれだけ言うと、さっさとその場を立ち去った。






 § § §






 PV撮影後、私はお礼が言いたくて、半分はただ単純にあの人に会いたくて、先輩俳優の行方を求め、そのマネージャーに連絡を取った。

 下心込みなのが申し訳ないけれど、許して!社さん!!

「キョーコちゃん、本当?いや~~良かった!!最近蓮のやつ元気なくてさ、キョーコちゃんの顔見れば一発で復活するよ!!」

「え、元気がないって・・・大丈夫なんですか?体調を崩されているとか?」

 私の顔ってそんなに面白いの!?というショックは置いておき、心配になる。

「う~ん、そういう風でもないんだけど、何か塞ぎこんでてさ。仕事は相変わらずキッチリこなすんだけど・・・・やっぱりあいつも、例の仕事が不安なのかなぁ。」

「『例の仕事』って何ですか!?」

 思わず強い反応を示してしまったのは仕方のないことだろう。

 かつてヒール兄妹の仕事で、蓮が精神的に大分参っていたことや、嘉月の役に躓いた時ブラックホールを呼び出すのを目撃してきた身としては、心配はいや増すと言うものだ。

「あ、いや、蓮は全然気にしてないみたいだったんだけど、深層心理ではやっぱり不安なのかなって。」

 ・・・・・ホラースポットでの撮影。




 § § §




 最近沈みがちな蓮を気にして心配気だった社が、今日は随分と機嫌がいい。
 そんな社を蓮は胡散臭そうに見ていた。

 時々あの『ウ~フ~~フ~~』という不気味な笑い声さえ立てている。心配をかけるのは申し訳ないと思っていたが、この笑い方をしながら意味深に横目で見られるのは腹立たしい。

 とは言え、今の蓮にはやめて下さいよ、とか何なんですか一体、とか聞くような精神的余力はなかった。
 ただ只管に目の前の仕事を片付けていくことが精一杯。

 だから何気ないマネージャーの誘導や行動にも気がつかなかった。



「それじゃ俺、事務所に電話してくるから」

 そう言ってマネージャーが楽屋を出て行った10分ほど後、扉がノックされた。電話を終えたマネージャーが戻ってきたのだと思い入室を促すと、はたして、扉を開けて入ってきたのは『彼女』だった。

「敦賀さん、お邪魔いたします」

 いつも通りの丁寧なあいさつ、いつからか自分にも向けてくれるようになった可愛らしい笑顔。 

 つい最近までならば嬉しい訪問だったが、キョーコを諦めるしかないのだと沈んでいた蓮にはあまりにも突然のことで、どう反応すればよいか分からない。

 返事もせずにぼうっとキョーコを見ていた。

「あの?敦賀さん?」

「え、・・・・何?」

 二度目の呼びかけでハッと覚醒し、動揺を取り繕いながらも席を勧める。

 こんな思いを抱えている今ですら、あるいは今だからこそ、彼女を追い返すことはできなかった。

「何と言われますと、えーと、その、お礼を申し上げたくて、社さんにお願いして予定を教えて頂いたんです」

 そう言われて蓮はやっと、今この瞬間なぜ自分はキョーコと二人きりでいるのか分かった。社は確信犯的に楽屋を出たらしい。

「お礼?」

 お礼・・・鈍った脳みそが一瞬何のことか分からずに戸惑い、間もなく答えを出した。

 PVの時のお守りだ。

 律義な彼女がお礼を言いに来るのは自然なことだろう。



 そう、たとえ、お守りなど本当は必要なかったのだとしても・・・・・!!

「はい!敦賀さんのお陰で、落ち着いて演技に臨めました。撮影もばっちりですよ!!」

「そう・・・」

 笑って報告する彼女に言ってやりたい。『上手く言ったのは撮影だけじゃないだろう?』と。
 それでも、その言葉に頬を染める彼女など見たくないから・・・言える筈もない。

 キョーコは笑ってPV撮影の話をしている。

 不破に『2度目』のキスを・・・・ファーストキスを奪われたくせに。彼女にとってそれはもう、悲しむべきことではないのだ。

「それで、ですね・・・・社さんから今度、敦賀さんが本物のホラースポットで撮影に臨まれると聞きまして・・・・あの、手を出して頂けますか?」

 頭の中では恨み言がぐるぐる回っているというのに、やっぱり彼女を目の前にすれば愛おしく、諦めがたく、蓮は素直に手を差し出した。

「これ、いっぱい心(念)を込めて作ったので、よろしかったらお守りに持って行って下さいませんか?」

 先日とは逆に、蓮の手のひらにキョーコの手が重なり、小さな重みが落とされた。キョーコが蓮の上に重ねた手をどかし、今度は下から包み込むように支える。

 手のひらの上にはシンプルなストラップ。
 チャームには緋色の中に金色の一閃が走った球状の石が揺れている。

「レッドタイガーアイは敦賀さんの誕生石で、邪なものを払う力があるそうです。敦賀さん、服飾品なんかは専属モデルの契約がありますし、携帯ストラップならどうかなって・・・・」

 ちょっと照れたように言うキョーコの顔が、手の甲に感じる温もりが、この石に込められた彼女の想いが、卑屈なまでに後ろ向きになっていた蓮の心を溶かした。

 手だけではなくて、胸の奥・・・深い部分が温かくなる感覚。

「はぁ~~~~~~~~~~」

 蓮はため込んでいた陰鬱な思考を流すように、思わず、それはそれは長々とため息をついた。
 その吐息をどう取ったか、

 あ、でもでも!こんな手作り品付けられないですよね!!すみません、すみません!!やっぱりこんなもの必要ないですよね!神の寵児であらせられる敦賀さんならお守りなんて無くても鬼も蛇も払って怨霊も浄化してしまいますよね(怨キョのように)!!

 そう一息に言ってキョーコは、一度は渡した蓮の手のひらの上のストラップを回収しようとする。

 その手の上に、蓮は素早くもう一方の手をさらに重ねた。さながらサンドイッチのように蓮の手の間にキョーコの手が挟まる。

「違う、違うよ。」

 違うんだ。そう呟いて、ストラップとキョーコの手をぎゅっと握った。

「すごく、嬉しい」

 この子は分かっているのだろうか。この石に込められた言葉を。

「ねえ、俺も約束を・・・・いや、誓いを立てていいかな」

「へ?」

「俺は君と、君のくれたこの石に誓うよ。」

「なにを、ですか?」

 早鐘のような心臓の鼓動とは裏腹に、時間がゆっくりと流れている気がする。

 蓮はあの日のキョーコのように、相手の目をひたと見つめた。


 ああ、そうだ。諦められる筈がない。既に一度誓ったではないか。たとえ、神に逆らっても・・・・と。


 キョーコが不破に心を寄せているのだとしても、こんな石を贈って寄こした彼女が悪いのだ。

 蓮は繋げた手へと、更に力を込めた。



「必ず―――――君の心を手に入れる」




 レッドタイガーアイ、司るのは・・・・・・・運命の破壊と創造―――――――――






≪了≫




2011/12/3 リメイク版差し替え


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●また、管理人は考察上、あるいは二次創作文中の設定上、登場人物に対し批判的、否定的な扱いをする場合があります。
●作中のあらゆる事項はフィクションであり、現実に即さないものが多く含まれます。
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